開業届を出さないとどうなる?個人事業主への影響と対応を解説

「個人事業主になったけれど、開業届を出していなかった」

「開業届を出さないまま事業を続けると、何か問題があるのだろうか」

このような不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

開業届は、個人で事業を始めたときに提出する届出書です。

出していない場合に罰則があるのか、後から提出できるのか、確定申告に影響するのかなど、気になる点は多いでしょう。

この記事では、個人事業主が開業届を出さないとどうなるのか、出していない場合はどう対応すればよいのかを解説します。

開業届を出していなかったことに気づいて不安な方は、まずは必要な対応を確認していきましょう。


1.個人事業の開業届は原則必要、ただし罰則はありません

個人事業主として事業を始める際、開業届は原則として提出が必要となります。

開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、個人で新しく事業を開始したことを税務署へ知らせるための書類です。

開業届の提出期限は、事業を開始した日の属する年分の所得税の確定申告期限までとされています。

ただし、提出しなかったこと自体に対する直接的な罰則は定められていません。

また、期限を過ぎてしまった場合でも、後から提出することが可能です。

開業届に関しては、次のような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

「開業届を出していないなら、確定申告はしなくていい?」

「開業届を出していないと、経費を計上できない?」

結論から言えば、開業届の有無と、確定申告の必要性や経費計上の可否は別の問題です。

確定申告が必要かどうかは、開業届を出しているかどうかで決まるわけではありません。
開業届の有無にかかわらず、事業による所得が一定以上あれば、確定申告が必要になります。

また、開業届を出していないからといって、経費計上ができなくなるわけでもありません。
事業に必要な支出であれば、開業届を出していなくても経費として計上することは可能です。

「罰則がなく、確定申告や経費計上も開業届の有無だけで決まらないなら、開業届を出さなくても問題ないのではないか」と思う方もいるかもしれません。

しかし実際には、開業届を出さないことで生じるデメリットも存在します

次の章で詳しく確認していきましょう。


2.開業届を出していないとどうなるか

開業届を出していないと、税務上の手続きや事業に関する各種手続きで不便が生じることがあります。

開業届を出していない場合に確認したいポイントを4つ見ていきましょう。

2-1.事業の証明がしづらい

開業届を出していない場合、個人事業主として事業を行っていることを証明しづらくなる場合があります。

開業届の写しやe-Taxの受信通知は、事業開始を示す資料として使われることがあります。

例えば以下のような場面では、事業の確認ができる書類の提出が求められることが多いです。

・保育園の入園申請

・補助金・助成金の申請

・融資の申込み

開業届を出していないと、こうした手続きで別の資料を追加で求められたり、事業実態の確認に時間がかかったりする可能性があります。

そのため、個人事業主として継続的に事業を行う場合は、開業届を提出し、提出した事実を確認できる資料も保管しておきましょう。

2-2.屋号を使った手続きがしづらい

開業届を提出していない場合、屋号付きの銀行口座を開設しづらくなる可能性があります。

屋号とは、個人事業主が事業で使用する名称のことです。

開業届を出していなくても、屋号を名乗ること自体は可能です。

ですが、銀行で屋号付き口座を開設する際には、開業届の写しやe-Taxの受信通知など、事業を行っていることを確認できる書類の提出を求められる場合があります。

屋号付き口座を開設できれば、事業用の入出金を分けて管理しやすくなります。

また、請求書や振込先に屋号を含められるため、取引先にも事業用口座であることが伝わりやすくなります。

屋号付き口座を利用したい場合は、開業届を提出しておくと手続きが進めやすくなるでしょう。

2-3.小規模企業共済に加入できない

小規模企業共済は個人事業主の場合、原則として開業届を出していなければ加入できません。

小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者などが、廃業や退職に備えるための制度です。

いわば、個人事業主にとっての退職金制度として利用できます。

掛金は全額を所得控除できるため、将来に備えながら所得税や住民税の負担を抑えられます。

小規模企業共済への加入を検討している場合は、開業届の提出が必要となります。

2-4.青色申告承認申請書の提出漏れに注意が必要になる

開業届を出していない場合、青色申告承認申請書の提出漏れに注意が必要です。

個人事業主の確定申告には、青色申告と白色申告があります。

青色申告を利用することで、最大65万円の青色申告特別控除や、赤字を翌年以後に繰り越せる制度などさまざまな優遇措置を受けることができます。

この青色申告を利用するには、「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

白色申告は、青色申告の承認を受けていない場合に行う申告方法です。
青色申告特別控除や純損失の繰越しなど、青色申告に認められる優遇は受けられません。

青色申告承認申請書は、通常開業届と同時に提出することが多い書類です。

そのため、開業届を出していない場合、青色申告承認申請書の提出も漏れている可能性があります。

期限までに青色申告承認申請書を提出していない場合、その年分は青色申告を利用できず、青色申告特別控除などを受けられなくなります。

【青色申告承認申請書の提出期限】

原則:青色申告をしようとする年の3月15日まで

その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合:事業開始等の日から2か月以内

開業届を出していない場合は、青色申告承認申請書の提出状況もあわせて確認しておきましょう。


3.開業届が未提出だった場合の対応

開業届を出していなかったことに気づいた場合、まずは提出手続きを進めることが基本です。

ただし、扶養に入っている場合や失業保険を受給している場合など、提出前に確認しておきたいケースもあります。

ここでは、開業届が未提出だった場合の基本的な対応と、事前確認が必要なケースについて解説します。

3-1.開業届を速やかに提出する

開業届を出していなかった場合は、気づいた時点で速やかに提出しましょう。

開業届は、期限を過ぎてしまった場合でも後から提出できます。

税務署の窓口や郵送、e-Taxなどで提出できるため、自分に合った方法で手続きを進めましょう。

開業届の具体的な書き方や提出方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

個人事業主の開業届はいつ出す?判断基準から手続きまで解説

また、青色申告を利用したい場合は、開業届とは別に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。

上記の記事では、開業届とあわせて提出を検討したい書類についても解説しています。

3-2.扶養や失業保険に関係する場合は事前に確認する

開業届は、原則として事業を始めたタイミングで速やかに提出する書類です。

ただし、次のようなケースでは、提出前に関係機関へ確認しておくと安心です。

・扶養に入っている場合

・失業保険を受給中、または受給予定の場合

扶養の判定は、健康保険組合や加入している制度によって扱いが異なります。

中には「開業届を提出=事業を開始した」と判断して収入の有無にかかわらず社会保険の扶養から外れるケースもあります

そのため扶養に入っている場合は、事業を開始して開業届を出す前に、加入している保険組合の基準を確認しておくことが重要です。

また、失業保険を受給中または受給予定の場合、開業届の提出日や開業日が、失業保険の支給判断に影響する場合があります。

開業届を出すことにより「事業を開始したため、失業状態ではない」とみなされる可能性があるからです。

ただし、要件を満たした場合には、残りの受給日数分の一定割合をまとめて受け取れる「再就職手当」の対象になる可能性があります。

まずはハローワークの窓口で「これから開業を考えている」と相談してみるのが良いでしょう。


4.まとめ 開業届は原則提出、未提出なら早めに確認しよう

開業届は、個人で新たに事業を始めた場合に提出する書類です。

未提出でも罰則はありませんが、青色申告や屋号付き口座、小規模企業共済などの手続きで不都合が生じる可能性があります。

出し忘れに気づくと不安になるかもしれませんが、開業届は後から提出することも可能です。

まずは青色申告承認申請書の提出状況や、扶養・失業保険への影響を確認した上で、早めに対応を進めましょう。

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