M&Aにおける入札方式|注意点と買手が選ばれるためのポイント

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監修者 山田翔吾

「入札方式のM&Aに買手として参加する予定だが、通常のM&Aと比較して違いはあるのか」
「入札方式で買手として選ばれるためにはどうすればいいのか」

入札方式のM&Aにおいて、こんな悩みをもつ買手側の経営者は少なくないでしょう。

入札方式の大きな特徴は売手側が主導権を持つ点で、買手側には入札方式特有の注意点があります。また、買手として選ばれるためには、入札方式を熟知した専門家にデューデリジェンスを依頼しなければなりません。入札方式の注意点と、専門家を見極めるポイントをご紹介します。


1.M&Aを入札(オークション)方式で行う場合の注意点

M&Aを入札方式で行う場合の特徴は、売手主導になりがちである点です。入札方式は複数の買手がおり、スケジュールやデューデリジェンスにおいて売手が優位になるためです。

【入札方式のイメージ図】

また、入札方式は下図のように、2回の入札によって買手が絞られていきます。特徴と流れを踏まえて、入札方式の注意点をご紹介します。

【入札方式における買手決定までの流れ】

※一般的な流れです。

注意点1.入札方式は交渉の余地が少ない

入札方式では、スケジュール調整や追加情報依頼といった交渉を個別に行うことが難しくなりがちです(※)。それによる注意点は次の通りです。

  • スケジュールは売手主導となる
    1対1で行う通常のM&Aであれば、売手と買手の話し合いで調整することが可能です。しかし入札方式では、個別の調整は売手にとって手間が大きいですし、場合によっては公平性を損なうことにもつながります。そのため、基本的に売手の提示したスケジュールに沿ってM&Aが進められます。
  • 追加情報の取得が制限されることがある
    基本合意、一時入札、意向表明書とった節目ごとに、買手は売手の情報を欲しますが、売手の都合で追加情報の取得が制限されることがあります。

※競合が少ない案件では個別の交渉ができるケースもあります。

注意点2.入札方式では意向表明書も重要

意向表明書は買手が売手に対してM&Aにおける意思を表明するものです。入札方式において、意向表明書は入札価格と並んで重要な要素です。

  • 入札価格の設定だけに注力しないように注意
    入札価格が最重要と思われがちですが、最高価格の会社だからといって必ず選ばれるわけではありません。売手は、「売却後のブランドをどう承継するのか」「売却後の従業員を大切にしてくれるか」といった部分も考慮して総合的に買手を判断します。その判断材料になるのが意向表明書なので
  • 意向表明書の内容
    提出時点での「M&Aの目的」「スキーム」「各種費用の負担」等について、方針を表明します。その他にも「売手企業の従業員の処遇」について書いておくと、高評価につながります。
    なお、意向表明書に法的な拘束力はないので、後から調整することは可能です。

注意点3.入札方式ではデューデリジェンスが制限されがち

意向表明書作成や入札価格の決定のために調査(デューデリジェンス)を行いますが、次のような制限が設けられるケースがあるので注意します。

  • 質問に関する制限
    質問数や(書面)質問における文字数の制限など
  • 提示される基礎情報に関する制限
    提示される基礎情報が、そもそも少ない
  • 調査のやり方に関する制限
    現地調査ができない

入札方式は複数の買手候補がいるため、細やかな情報提示、対応は期待しにくいです。一方で、買手候補が絞られる最終入札においては、通常のデューデリジェンスと同等の情報が入手できる可能性が高いです。

【開示情報は段階が進むほど多くなる】

通常の入札方式では、最初に基本情報「ノンネームシート」が提示され、それをもとに基本合意を締結します。
次いで一次入札の価格と意向表明書を作成するための「インフォメーション・メモランダム(Information Memorandum)「プロセスレター」が提示されます。

  • ノンネームシート
    会社の概要や基礎的な財務情報です。この段階では社名を明かさず、匿名(ノンネーム)でのやり取りとなります。
  • インフォメーション・メモランダム
    インフォメーション・メモランダムとは組織体制、詳細な財務資料、繰越欠損金の有無などが提示されます。財務資料は財務三表のことで、3年から5年分の財務情報と実績値が該当します。
  • プロセスレター
    プロセスレターではM&AのスケジュールやM&Aにおけるルールが提示されます。売手主導のスケジュールとなるので、買手にとって都合が良くないこともあり得ます。

2.入札方式においては専門家の支援を受けることが重要

当初の情報量やスケジュールに制限もある入札方式において、自社が買手として選ばれるためには、入札方式を熟知した専門家の支援を受けることが重要です。

それによって、次のような効果を得られます。

  • 売手主導の特徴を理解したやり取りが行える
    例えば、入札方式のインタビューでは、質問内容もチェックされることが多いです。売手から「自社を理解している」と思われるようなインタビューややり取りが評価につながります。
  • 限られた情報で売手の事業構造や業態を把握できる
    これらを把握することで、売手を尊重した意向表明書の作成と、適切な入札価格の設定に貢献します。
  • デューデリジェンスにおいて優先順位の取捨選択ができる
    スケジュールの制限があるなかでは、優先順位の高い項目からデューデリジェンスを行うことが必要です。重要論点を外さずに調査することで、売手との有意義な話し合い・提案につながります。

これらの効果を得るためには、早い段階で専門家の支援を受けることも意識しましょう。専門家の支援を受ける時期が早いほど準備期間を確保でき、手厚いサポートが期待できます。


3.入札方式においてデューデリジェンスの専門家を見極めるポイント

買手として選ばれるためには、注意点を熟知した専門家にデューデリジェンスを依頼することが必要です。言い換えると、デューデリジェンスを依頼する専門家選びが重要といえます。
専門家を見極めるためのポイントを3つご紹介します。

入札方式の実績がある専門家を選ぶ

「インタビューの内容を精査する」「少ない情報からリスクを見抜く」といった、入札方式の特徴を知っている専門家を見極めます。それによって、例えば重箱の隅をつつくような質問をして売手側からの評価を下げるような事態を防止できます。

該当の業種においてデューデリジェンスの実績がある専門家を選ぶ

業種の特徴を知っている専門家を選ぶことで、優先順位の取捨選択を的確に行えます。例えば製造業における原価計算資料のように、当然あるべき資料が提示されない場合も、同業種のデューデリジェンスの経験があればカバーしやすくなります。

複数のデューデリジェンスに対応している専門家を選ぶ

デューデリジェンスは複数の種類があり、別の専門家に依頼する場合も互いの連携が必要です。例えば税務デューデリジェンスと財務デューデリジェンスのように、もともと親和性の高いデューデリジェンスは同一の専門家に依頼することでより効率性がアップします。限られた時間で調査の深度と幅を広げることができるでしょう。

通常のデューデリジェンスについては「デューデリジェンス(DD)の目的とは?種類や手順、注意点まで」をご覧ください。


4.入札方式のデューデリジェンスなら辻・本郷 FAS株式会社へご相談ください

辻・本郷 FAS株式会社は年間80件以上のデューデリジェンス(バリュエーション含む)実績を持っています。このうち入札方式の割合は十数件と、全体の2割近くを占めます。

辻・本郷 グループ(辻・本郷 税理士法人)の一員として、財務デューデリジェンス、税務デューデリジェンスを行うのはもちろん、グループ内の専門家と連携することで法務デューデリジェンス、ビジネスデューデリジェンス、労務デューデリジェンス等も対応可能です。

また、デューデリジェンスとバリュエーションだけでなく、PPA、経営統合、組織再編についても対応しており、買手に選ばれた後の支援もお任せいただけます。入札方式で売手に選ばれるだけでなく、その後の統合効果の最大化にも寄与します。

入札方式のデューデリジェンスやバリュエーションは、辻・本郷 FAS株式会社にご相談ください。


5.まとめ

入札方式では、売手が主導権を持つことが多いです。買手は制限のあるなかで意向表明書の作成や入札価格の決定を行わなければなりません。

【入札方式の注意点】

  • 交渉の余地が少ない
  • (入札価格だけでなく)意向表明書も重要
  • 調査が制限されがち

入札方式で頼れる専門家を見極めて、デューデリジェンスを依頼することが重要です。

【デューデリジェンスの専門家を見極めるポイント】

  • 入札方式に対応できる専門家を選ぶ
  • 該当の業種においてデューデリジェンスの実績がある専門家を選ぶ
  • 複数のデューデリジェンスに対応している専門家を選ぶ

入札方式は買手にとって難易度の高いM&Aです。競合に打ち勝つために、入札方式に強い専門家の支援を受けていきましょう。