調剤薬局の在庫管理はなぜ重要?押さえたいポイントや改善方法を解説

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監修者 宇都宮健太

調剤薬局の在庫管理は、欠品を防ぎながら適切な在庫水準を維持するために欠かせない業務です。

在庫が多すぎると資金繰りや利益に影響し、少なすぎると欠品や急配対応が発生するため、適切なバランスで管理することが重要です。

この記事では、次の内容をわかりやすく整理します。

  • 調剤薬局で在庫管理が重要になる理由
  • 在庫管理で押さえたいポイント
  • 在庫管理のための4つのステップ
  • 在庫管理システム活用のポイント

適正在庫の考え方在庫管理の方法に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。


1.薬局で在庫管理が重要になる理由

調剤薬局で在庫管理が重要とされる理由を見ていきます。薬局には特有の特徴があるため、他の業種とは異なる視点で在庫管理を行う必要があります。

1-1.医薬品の安定供給が求められるから

薬局の在庫管理では、在庫金額を抑えることだけでなく、必要な医薬品を安定して供給できる状態を維持することが重要です。

医薬品は、患者の治療を継続し、適切な医療を提供するために欠かせないものです。そのため、薬局は一般的な小売業と異なり、必要な医薬品を必要なタイミングで交付できる体制を整えることが求められます。

欠品が発生すると、患者への説明や急配対応、分割調剤などが必要になり、薬局業務に影響を及ぼします。また、処方内容によっては代替薬で対応できないケースもあります。

このように、薬局では必要な医薬品を安定して供給するために、適切な在庫管理が求められます。

1-2.高額な在庫を抱えやすく資金繰りに影響があるから

薬局では高額な在庫を抱えやすいため、必要以上に在庫を保有すると、資金繰りに影響することがあります。

調剤薬局では、多くの医薬品を常時保有する必要があるため、在庫金額が数百万円から数千万円規模になることもあります。

これは、幅広い診療科の処方箋に対応するため、多品目の医薬品を採用する必要があるからです。また、同じ成分でも規格や包装単位が異なる医薬品を保有することも少なくありません。

たとえば、高血圧や糖尿病などの慢性疾患の薬だけでなく、抗生物質や外用薬など幅広い医薬品を取り扱います。近年は在宅医療への対応により、使用頻度が低い医薬品や高額薬剤を在庫として保有する場面も増えています。

このように、薬局では高額な在庫を抱えやすいため、欠品を防ぎながら過剰在庫を抑え、適正在庫を維持することが重要です。

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1-3.在庫管理は利益や税負担にも影響するから

薬局の在庫管理は、利益や税負担にも影響する重要な業務です。

医薬品は会計上「棚卸資産」として扱われるため、決算日時点の在庫金額によって売上原価が変動し、その結果として利益額も変わります。

たとえば、決算日時点の在庫が多いほど売上原価は少なくなり、利益は大きくなります。反対に、在庫が少ないほど売上原価は多くなり、利益は小さくなります。

利益が変わることで、法人税などの税負担にも影響します。そのため、決算前だけ在庫を調整するのではなく、日頃から適正在庫を維持することが重要です。


薬局の税務顧問

2.薬局の在庫管理で押さえたいポイント

薬局で在庫管理を行うときにで押さえておきたいポイントを解説します。

2-1.在庫削減だけを目的にしない

在庫管理では「在庫を減らすこと」を目的にするのではなく、適切な在庫水準を維持することを目的とする必要があります。

在庫が少なすぎると欠品や急配対応などにつながり、多すぎると過剰在庫や資金効率の低下を招く可能性があります。「在庫が多い状態」でも「在庫が少ない状態」でもなく、欠品を防ぎながら必要以上の在庫を持たない状態が理想です。

2-2.自局に合った在庫水準を設定する

在庫水準は、自局の状況に合わせて設定する必要があります。

適切な在庫水準は、薬局ごとに異なります。たとえば、門前の診療科目や処方箋枚数、在宅医療への対応状況、採用品目などによって、必要となる在庫量は異なります。そのため、「在庫金額は○万円が適正」と一律に決めることはできません。

毎日処方される医薬品は欠品を防ぐために一定量を確保し、処方頻度が低い医薬品や高額薬剤は、使用実績を踏まえて必要最小限の在庫とするなどの調整が重要です。

また、在庫数量だけでなく、不動在庫率・粗利率・利益率などの経営指標もあわせて確認し、過剰在庫や在庫不足の傾向を把握することが大切です。

2-3.決算日だけでなく日常的に管理する

在庫管理は、日常的に行うことが重要です。

決算前になると在庫金額を確認し、発注量を調整する薬局もあります。しかし、決算日に合わせて一時的に在庫を減らしても、その後に過剰な発注を行えば、適正在庫の維持や資金効率の改善にはつながりません。

重要なのは、決算日だけ在庫を調整するのではなく、日頃から在庫状況を把握し、適切な在庫水準を維持することです。

採用品目や発注量、使用期限、不動在庫などを定期的に確認することで、過剰在庫や欠品の発生を防ぎやすくなります。

2-4.決算時は日常の在庫管理を振り返る

日常管理の成果を確認する機会となるのが、決算時の棚卸です。

棚卸では、決算日時点の在庫金額を確定するだけでなく、在庫管理が適切に行われていたかを振り返ることも重要です。

たとえば、在庫金額が想定より増えていないか不動在庫が発生していないかなどを確認することで、自局の在庫管理における課題を把握できます。

棚卸は決算業務として実施するだけでなく、翌期以降の在庫管理を改善するための重要な機会です。具体的な確認方法や改善の進め方については、STEP④で解説します。


3.薬局の在庫管理を改善する4つのステップ

ここでは、薬局の在庫管理において、適正在庫を維持するための4つの改善ステップを解説します。

適正在庫は、一度設定すれば維持できるものではありません。処方傾向や患者数、採用品目などは日々変化するため、在庫状況を定期的に確認し、継続的に改善していくことが重要です。

STEP① 在庫状況を把握する

適正在庫を維持するには、まず現在の在庫状況を把握しましょう。

在庫状況が把握できていないと、過剰在庫や欠品、不動在庫などの問題に気付くことができません。まずは、在庫管理表在庫管理システムを活用し、医薬品ごとの在庫状況を一覧で確認できるようにしましょう。

次のような項目を管理すると、在庫状況を把握しやすくなります。

■在庫管理表の記録項目(例)

項目確認する目的
医薬品名在庫品目を管理する
規格・包装単位同一成分の取り違えを防ぐ
在庫数量過不足や欠品を把握する
最低在庫数発注のタイミングを判断する
使用期限期限切れによる廃棄を防ぐ
最終使用日不動在庫を把握する
購入単価在庫金額を把握する
在庫金額在庫総額や増減を把握する
保管場所棚卸や出庫を効率化する
備考発注停止・返品予定などを記録する

在庫管理表や在庫管理システムを定期的に更新し、常に最新の在庫状況を確認できる状態を維持しましょう。

STEP② 不動在庫や使用期限を確認する

在庫状況を把握したら、次に不動在庫や使用期限を確認しましょう。

一定期間使用されていない医薬品や、使用期限が近づいている医薬品を抽出します。これらは、在庫管理表の最終使用日や在庫管理システムの利用実績から確認します。使用期限は期限が近いものから優先的に確認すると効率的です。

特に、処方頻度が低い医薬品や高額薬剤は不動在庫になりやすいため、定期的に使用状況を確認することが大切です。

確認した結果をもとに、発注量の見直しや返品の可否を検討することで、廃棄ロスや過剰在庫の削減につながります。

STEP③ 発注量や発注タイミングを見直す

不動在庫や使用期限を確認したら、発注量や発注タイミングを見直しましょう。

発注量を見直す際は、在庫金額への影響が大きい高額薬剤から確認すると効率的です。高額薬剤は少し在庫が増えるだけでも資金繰りに影響しやすいため、使用実績や処方予定を踏まえて必要最小限の在庫とすることが重要です。

そのうえで、処方頻度が低い医薬品は不動在庫になっていないかを確認し、処方頻度が高い医薬品は欠品を防げる数量を維持できているかを見直します。

また、花粉症やインフルエンザなど、季節によって需要が変動する医薬品は、過去の処方実績を参考に発注量を調整すると、欠品や過剰在庫を防ぎやすくなります。

発注量を見直したら、次は「いつ発注するか」も決めましょう。量や発注タイミングを決める方法の一つに、「発注点」を設定する方法があります。発注点とは、在庫が一定数量まで減った時点で発注を行う基準のことです。

発注点 = ①1日平均使用量 × ②納品までの日数 + ③安全在庫

例:①20錠 ②2日 ③30錠の場合

発注点=20錠×2日+30錠=70錠

※安全在庫とは、需要の増加や納品の遅れなどに備え、欠品を防ぐためにあらかじめ確保しておく予備の在庫です。

薬局では、システムで発注点を設定している場合もあれば、過去の処方実績や担当者の経験をもとに発注量を判断している場合もあります。

発注方法に決まりはありませんが、一定の基準を設けておくことで、欠品や過剰在庫を防ぎやすくなります。

STEP④ 棚卸結果を次回の在庫管理へ活かす

発注量や発注方法を見直した後は、棚卸結果を振り返り、次回の在庫管理へ活かしましょう。

棚卸では、決算日時点の在庫数量や在庫金額を確定するだけでなく、在庫管理が適切に行われていたかを確認できます。

たとえば、帳簿上の在庫数量と実際の在庫数量に差がある場合は、入力漏れや入力ミス、調剤時の計上漏れ、棚卸時の数え間違いなどが発生している可能性があります。また、不動在庫や使用期限が近い医薬品が増えていないか、発注量や発注タイミングは適切だったかを振り返ることも重要です。

さらに、改善の効果は棚卸結果だけでなく、在庫管理に関する指標からも確認できます。たとえば、次のような項目を継続的に確認すると、適正在庫を維持できているかを把握しやすくなります。

■在庫管理に関する指標と確認ポイント

指標確認するポイント
在庫金額前年・前月と比べて大きく増減していないか
不動在庫率長期間動いていない医薬品が増えていないか
在庫回転率在庫が効率よく活用されているか
廃棄金額(廃棄率)使用期限切れによる廃棄が増えていないか
利益率在庫管理の改善が利益につながっているか

薬局の税務顧問

4.薬局の在庫管理システムの活用ポイント

ここでは、在庫管理システムの主な機能と、適正在庫を維持するための活用ポイントを解説します。

多くの薬局では在庫管理システムを活用して医薬品の在庫を管理しています。在庫管理システムには、在庫状況の把握や発注、棚卸、在庫分析など、在庫管理を効率化するさまざまな機能があります。

重要なのは、これらの機能を自局の運用に合わせて活用することです。

4-1.在庫状況を見える化する

在庫管理システムを活用する際は、在庫状況を一覧で確認できるようにしましょう。

多くの在庫管理システムでは、医薬品名や規格、包装単位、在庫数量、在庫金額、保管場所などを一元管理できます。また、複数店舗を運営している場合は、店舗ごとの在庫状況を一覧で確認できるシステムもあり、どの店舗にどの医薬品がどれだけあるのかを把握しやすくなります。

在庫状況が見える化されることで、過剰在庫や欠品の兆候、高額薬剤の在庫状況などを早期に把握しやすくなります。ある店舗で不足している医薬品を別の店舗から融通できるかを判断するなど、より効率的な在庫管理にも役立ちます。

“💡活用のポイント”

在庫情報は定期的に確認することが大切です。

「毎週決まった曜日に在庫金額と使用期限を確認する」「月末に不動在庫を確認する」など、確認するタイミングをあらかじめ決めておくと、過剰在庫や欠品などの変化に気付きやすくなります。

4-2.問題のある在庫を効率的に抽出する

在庫管理システムには、使用期限が近い医薬品や不動在庫、発注点を下回った医薬品などを条件に応じて抽出できる機能を備えたものがあります

これらの機能を活用することで、すべての医薬品を一つずつ確認することなく、優先的に対応すべき在庫を効率よく把握できます。

“💡活用のポイント”

抽出条件は、処方傾向や医薬品の使用状況に合わせて定期的に調整しましょう。

自局の運用に合った条件を設定することで、優先的に対応すべき在庫を効率よく把握できます。

4-3.発注支援機能を活用する

在庫管理システムには、発注業務を支援するさまざまな機能が搭載されています。

たとえば、発注点を下回った医薬品の一覧表示や、過去の発注履歴・使用実績の確認、発注データの作成などを行えるシステムがあります。また、自動発注機能需要予測機能を搭載したシステムでは、過去の実績をもとに発注数量の目安を確認できるものもあります。

これらの機能を活用することで、適切な発注量や発注タイミングを判断しやすくなります。発注データを医薬品卸へ連携できるシステムであれば、発注業務の効率化にもつながります。

“💡活用のポイント”

発注点や最低在庫数は、処方傾向や患者数の変化に合わせて定期的に見直しましょう。

また、自動発注機能や需要予測機能を利用する場合も、処方予定や高額薬剤の在庫状況などをあわせて確認することで、自局に合った発注につなげやすくなります。

4-4.棚卸機能を活用する

在庫管理システムには、棚卸業務を効率化するための棚卸機能が搭載されているものがあります。

たとえば、バーコードを読み取りながら棚卸を行える機能や、PC・タブレット・スマートフォンから棚卸結果を入力できる機能などがあります。システムによっては専用端末を使用するものもありますが、専用端末を必要とせずに利用できるものもあります。

また、棚卸結果をシステムへ反映したり、帳簿上の在庫数量と実際の在庫数量を比較して棚卸差異を一覧で確認したりできるシステムもあります。

“💡活用のポイント”

棚卸機能は、自局の運用方法に合った入力方法を選ぶことも大切です。

専用端末の有無や入力方法、データ連携のしやすさなども確認すると、日々の運用に適したシステムを活用しやすくなります。

4-5.分析機能を活用して在庫管理を改善する

在庫管理システムには、在庫状況を分析するための機能が搭載されているものがあります。

たとえば、在庫金額の推移や不動在庫一覧、使用期限が近い医薬品の一覧、在庫回転率などを確認できるシステムがあります。システムによっては、ABC分析(※)や店舗ごとの在庫状況を比較できる機能を備えたものもあります。

これらの分析結果を活用することで、「在庫金額が増加している原因は何か」「不動在庫が増えている医薬品はないか」「店舗間で在庫を融通できる医薬品はないか」などを把握しやすくなります。

(※)ABC分析とは、使用頻度や在庫金額などに応じて医薬品を分類する分析手法です。

“💡活用のポイント”

分析結果は毎月など一定のタイミングで確認し、前月や前年同月と比較することが大切です。

継続的に推移を確認することで、在庫管理の改善効果や新たな課題を把握しやすくなります。


5.まとめ

調剤薬局の在庫管理は、医薬品の安定供給だけでなく、利益や税負担、資金繰りにも影響する重要な業務です。

重要なのは、在庫を減らすことではなく、自局に合った適正在庫を維持することです。そのためには、在庫状況の把握から棚卸結果の振り返りまでを継続的に行い、改善を積み重ねることが大切です。

また、在庫管理システムを活用することで、在庫状況の把握や発注、棚卸、分析などを効率的に行いやすくなります。自局の運用に合った方法を取り入れ、適正在庫の維持につなげましょう。