薬局のキャッシュフローとは?現金が残りにくい理由と改善方法を解説

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監修者 宇都宮健太

「薬局のキャッシュフローとは?」

薬局を経営している方や、経営管理を担当している方の中には、「利益は出ているのに、なぜ現金が残らないのだろう?」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。

薬局は調剤報酬の入金までタイムラグがあるほか、医薬品在庫や借入金返済などの影響を受けるため、利益が出ていても現金が不足することがあります。

安定した薬局経営を続けるためには、利益だけでなく、現金がいつ入り、いつ出ていくのかという「キャッシュフロー」を把握することが重要です。

本記事では、キャッシュフローの基本的な考え方や薬局経営におけるキャッシュフローの特徴、改善方法について解説します。


1.薬局のキャッシュフローとは?

キャッシュフローとは、事業における「現金の流れ」のことです。

経営状況を把握する際は売上や利益に注目しがちですが、実際に事業を継続するためには現金の管理も欠かせません。

薬局におけるキャッシュフローのイメージは次のとおりです。

■薬局におけるキャッシュフロー

キャッシュフローを把握することで、次のような点を確認できます。

・現金が不足するタイミングを事前に把握できる
・資金繰りの改善や経営判断に役立つ

1-1.利益が出ていても現金が残るとは限らない

薬局経営では、利益が出ていても手元に十分な現金が残るとは限りません。

薬局では、調剤報酬の入金や患者負担金などによって現金が入り、医薬品の仕入代金や人件費、家賃、借入金の返済などによって現金が出ていきます。

利益は会計上の数字であり、キャッシュフローは実際の現金の動きを表します。そのため、利益が出ていても、現金の流入と流出のタイミングによっては、手元の現金が不足し、資金繰りが厳しくなることがあります。

次章では、薬局で現金が残りにくい理由について、薬局特有のキャッシュフローの特徴を踏まえて解説します。


薬局の税務顧問

2.薬局のキャッシュフローの特徴

薬局には、キャッシュフローに影響を与える特有の特徴があります。

これらの特徴を理解することで、現金が残りにくい理由資金繰りで注意すべきポイントを把握できます。

2-1.収益を増やしにくい事業構造がある

薬局は、売上や利益を自由に増やしにくい事業構造となっています。そのため、手元資金も増えにくい点が特徴です。

保険調剤の収入となる調剤報酬は国が定めており、薬局が自由に価格を設定することはできません。また、原則として2年に1回実施される診療報酬改定や薬価改定の内容によっては、収益に影響を受けることがあります。

さらに、保険調剤による売上は消費税が非課税である一方、医薬品や設備、備品などの仕入れや購入時には消費税を負担します。そのため、仕入れなどで支払った消費税を十分に回収できず、消費税の逆ざやが生じる場合があります。

関連記事:「調剤薬局のOTC医薬品の消費税は10%|納税額が決まる仕組みを図解で解説」

2-2.調剤報酬の入金までタイムラグがある

薬局では、患者へ調剤や服薬指導を行った時点で売上を計上します。しかし、その売上がすぐに現金として入金されるわけではありません。

保険調剤では、患者へ薬を交付した後にレセプトを作成して審査支払機関へ請求し、その後、調剤報酬が支払われます。

そのため、売上が発生してから実際に入金されるまでには、一般的に約1〜2か月のタイムラグがあります。

患者数や処方箋枚数が増えて売上が伸びても、その時点で手元の現金が増えるわけではありません。薬局は他業種と比べて売掛金の割合が高く、入金時期が資金繰りに大きく影響する業種といえます。

2-3.調剤報酬の入金前に支払いが発生する

薬局では、調剤報酬が入金される前に、さまざまな支払いが発生します。

たとえば、医薬品の仕入代金や人件費、家賃、水道光熱費などは、毎月決まった時期に支払う必要があります。また、開業時に設備投資のため融資を受けている場合は、借入金の返済も継続して行わなければなりません。

特に、借入金の元本返済は利益の計算には含まれませんが、実際には現金が減少します。そのため、会計上は黒字であっても、手元の現金が不足することがあります。

2-4.医薬品在庫が現金を圧迫しやすい

医薬品在庫を多く保有すると、手元の現金が不足しやすくなります。

薬局では、仕入れた医薬品は在庫として保有されるため、現金が在庫という資産へ変わります。在庫は安定した医薬品の供給に欠かせませんが、多く保有するほど、現金として自由に使える資金は少なくなります。

仕入れた医薬品はすぐに現金へ戻るわけではなく、患者へ調剤されて調剤報酬が入金されるまで在庫として保有されます。

特に、高額医薬品や使用頻度の低い医薬品を多く保有すると、在庫に多くの資金が固定され、キャッシュフローへ与える影響も大きくなります。

関連記事:「調剤薬局の在庫管理はなぜ重要?押さえたいポイントや管理のコツを解説」


3.薬局のキャッシュフローを改善する方法 

薬局のキャッシュフローを改善するためには、現金が不足する原因を把握したうえで、継続的に資金の流れを管理することが重要です。

ここでは、薬局が実践したいキャッシュフロー改善のポイントを解説します。

3-1.現金の流れを把握する

キャッシュフローを改善するためには、まず現金の流れを把握することが重要です。

具体的には、キャッシュフロー計算書資金繰り表などを活用することで、現金の流れを可視化できます。現金残高だけでなく、今後の入出金予定もあわせて確認することで、資金不足への早期対応や設備投資などの経営判断を行いやすくなります。

3-2.売掛金と入金状況を定期的に確認する

売上だけでなく、売掛金や入金状況を定期的に確認することが重要です。

レセプトの請求額と実際の入金額に相違がないか、入金予定どおりに調剤報酬が支払われているかを確認することで、資金繰りの変化を早期に把握できます。

また、売掛金の残高が想定以上に増えている場合は、入金遅延や請求内容に原因がないかを確認することも大切です。

3-3.医薬品在庫を適正化する

医薬品在庫を適正な水準に保つことは、キャッシュフローの改善につながります。

在庫は安定した医薬品の供給に欠かせませんが、必要以上に保有すると、現金が在庫という資産に固定され、手元資金に余裕が生まれにくくなります。

特に、高額医薬品や使用頻度の低い医薬品は、定期的に在庫状況を確認し、過剰在庫や不動在庫が発生していないかを把握することが大切です。また、処方傾向や季節要因などを踏まえながら発注量を見直すことで、適正在庫を維持しやすくなります。

具体的な在庫管理のポイントについては、次の関連記事を参考にしてください。
関連記事:「調剤薬局の在庫管理はなぜ重要?押さえたいポイントや管理のコツを解説」

3-4.支払いを見据えた資金計画を立てる

調剤報酬の入金時期だけでなく、毎月の支払いを見据えて資金計画を立てることが重要です。

薬局では、人件費や家賃、水道光熱費、医薬品の仕入代金、借入金の返済など、毎月継続して発生する支払いがあります。これらの支払い時期と調剤報酬の入金時期にズレがあるため、手元資金が不足しないよう計画的に管理する必要があります。

また、分包機や電子薬歴システムなどの設備更新にはまとまった資金が必要になることがあります。設備投資を予定している場合は、借入金の返済額や今後の資金繰りも踏まえながら計画を立てることが大切です。

関連記事:「調剤薬局の設備は何年償却?耐用年数一覧と減価償却で押さえたい7つのポイント」

3-5.資金繰りに不安がある場合は専門家へ相談する

資金繰りに不安がある場合は、早めに税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

「利益は出ているのに現金が残らない」「将来の設備投資や借入金の返済に不安がある」といった場合は、キャッシュフローに課題が生じている可能性があります。

税理士へ相談することで、キャッシュフローや資金繰りの状況を分析し、現金不足の原因や改善策についてアドバイスを受けられます。また、資金繰り表の作成や設備投資の計画、融資に関する相談など、薬局の状況に応じた支援を受けることも可能です。


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4.まとめ

安定した薬局経営を続けるためには、利益だけでなく現金の流れを把握し、計画的に資金を管理することが重要です。売掛金や入金状況の確認、適正在庫の維持、将来の支払いを見据えた資金計画などを継続して行うことで、資金繰りの改善につながります。

キャッシュフローに不安がある場合や、資金繰りの改善方法に悩んでいる場合は、税理士へ相談することも有効です。自局の状況に応じたアドバイスを受けることで、より安定した薬局経営を実現しやすくなります。

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