個人事業主は固定資産税を経費にできる?計算や仕訳のルールも解説

土地や建物などの固定資産を所有していると、毎年4~5月頃に固定資産税の納付書が送られてきます。

あなたが個人事業主で、その資産を仕事に使っているなら、「この固定資産税も確定申告で経費にできるのでは?」と気になるのではないでしょうか。

本記事では、個人事業主が固定資産税を経費にできる範囲や、仕訳例などを解説します。

思い当たる資産があれば、記事を参考にして固定資産税を漏れなく経費計上しておきましょう。


1.個人事業主は事業で使う建物などの固定資産税を経費にできる

個人事業主は、事業で使っている不動産や備品・設備などの固定資産税を経費にすることができます。

固定資産税の対象になる資産は、次の3種類です。

  • 土地
  • 建物(家屋)
  • 備品・設備類(償却資産)

以下で、それぞれの資産について具体例を見ていきましょう。

1-1.土地

次の例のように、事業で使われている土地の固定資産税は経費に計上できます。

  • 店舗や事務所の敷地
  • 店舗の来客用や賃貸用の駐車場
  • 商品・材料保管用の倉庫の敷地
  • 建設・土木用などの資材置き場
  • 農業用の田畑
  • キャンプ場などの営業用の山林

なお、店舗や事務所などを建てるために土地を購入したものの、実際にはまだ建物がないケースでは、固定資産税が経費として認められない可能性があります。
更地の固定資産税を経費計上する場合、建物の設計図や建設スケジュールなどで、事業用建物の建設準備中であることが客観的に証明できる必要があります。

1-2.建物(家屋)

土地と同様に、事業で使用する建物の固定資産税についても、経費の対象になります。

具体的には、次のような例があります。

  • 事務所・オフィス
  • 店舗
  • 商品保管用の倉庫
  • 営業車を停めている車庫・ガレージ
  • 賃貸用アパート・マンション
  • 民泊に使っている空き家

個人事業主でよくあるのは、自宅建物の一部を事務所や店舗などに使用するケースです。
そのような場合でも、固定資産税の一部であれば経費にすることは可能です。
詳しくは、次章の2.経費の対象となる固定資産税の範囲をお読みください。

1-3.備品・設備類(償却資産)

事業に使っている備品などにかかる固定資産税も、経費にすることができます。
原則として、減価償却の対象になる10万円以上の事業用備品・設備などは、「償却資産」として固定資産税の対象になるためです。

個人事業主が固定資産税を経費にできる償却資産の例として、主に次のようなものがあります

  • 業務用の資料作成や経理作業用のパソコン
  • 事務室や店舗のテーブル・椅子
  • 店舗や事務室のエアコン
  • 飲食店の厨房設備
  • 有料レンタルしている高級家電
  • 店舗用駐車場のアスファルト舗装
  • パワーショベル、フォークリフトなどの大型特殊自動車

なお、事業用として購入した備品類でも、実際には個人用にしか使われていない場合は、固定資産税の経費算入が認められません。
特に、家電のように私生活でもよく使われるようなものについては、業務上の使用日時を記録したり、専用のラベルなどを貼って管理したりしておくと、事業用であることを税務署に説明しやすくなります。


2.経費の対象となる固定資産税の範囲

不動産などにかかる固定資産税のうち、個人事業主が経費にすることができる範囲は、次のように異なります。

  • 資産を事業だけに使用する場合:固定資産税の全額を経費にできる
  • 資産をプライベートと事業の両方に使用する場合:固定資産税のうち、その資産を事業で使っている割合の分だけを経費にできる

個人事業主が経費に計上できるのは、あくまで事業で必要と認められるものに限られます。
そのため、土地や建物などの資産をプライベートと事業の両方で使っている場合は、固定資産税のうち事業で使っている割合だけを経費計上できます。

次から、それぞれの場合について、経費の計算方法などを具体的に解説していきます。

2-1.事業だけで使う資産では全額が対象

事業専用に使っている資産については、固定資産税の全額を経費計上できます。

個人事業主が固定資産税の全てを経費にできるのは、主に次のようなものです。

  • 月極駐車場やコインパーキングとして活用している土地
  • 全室を賃貸用にしているアパート、マンション
  • 店舗内のエアコン、冷蔵庫
  • 厨房設備や医療機器など、業務用の設備・備品類

なお、もっぱら事業用のつもりで購入した資産でも、実際には一部をプライベートで使用していれば、その分の割合を除いて固定資産税を経費計上する必要があります。
詳しくは、次から解説する内容をお読みください。

2-2.プライベートと兼用の資産では事業に使う分のみが対象

資産を事業とプライベートで兼用している場合、経費にできる固定資産税の金額は、その資産を事業に使っている割合だけです。

事業使用の割合を計算(家事按分)するには、主に次のいずれかの方法を使います。

計算方法向いているケース
業務に使う面積の割合で計算する方法・土地や建物など、業務で使う部分を面積で計算できるケース
・業務で使う部分とプライベートで使う部分がはっきり分かれているケース
・2階建ての戸建てのうち、1階全体を店舗や事務所として使っている
・3LDKの自宅の一室を執務スペースとして使っている
・駐車スペースに自家用と店舗来客用の区画がある
業務に使う時間の割合で計算する方法・土地・建物全体や備品を業務とプライベートで共用するケース
・備品や設備など、面積を使った計算ができないケース
・普段生活しているワンルームのマンションを仕事でも使っている
・業務とプライベートで兼用するパソコンがある
業務に使う面積と時間を組み合わせて計算する方法・土地や建物の一部を、限られた時間のみ業務で使うケース・自宅のリビングの一角で、夜間だけ在宅ワークをしている
・キッチンを使い、週末だけ料理教室を開催している

白色申告の方の場合は、事業に使用する割合が50%を超える資産のみ、固定資産税を経費計上できます。

なお、家事按分の計算は根拠があいまいになりやすいため、確定申告で税務署から指摘を受けるリスクが高いです。
次から説明する計算方法を確認して、適正な経理処理を行いましょう。

2-2-1.業務に使っている面積で経費を計算する方法

不動産などの面積のうち、業務に使用する部分の面積の割合で固定資産税を按分して経費を計算する方法です。
ある程度大きさのある土地や建物などで、業務に使っているスペースとそれ以外のスペースがはっきり分かれているケースでは、この方法をおすすめします。

業務に使う面積割合で固定資産税の経費分を計算する方法は、次の通りです。

土地や建物の業務使用面積で固定資産税の経費分を計算する方法

1.土地または建物全体の面積(建物の場合は全フロアの合計面積)を売買契約書や登記簿などで確認する

2.全体の面積のうち、業務に使用している面積を売買契約時の図面などで確認する(図面がない場合は、メジャーなどで測って面積を計算する)

3.「業務に使用している面積÷全体の面積」を計算して、業務使用面積の割合を出す

4.「固定資産税額✕業務使用分の割合」を計算して、経費できる金額を算出する

 

(計算例)
120㎡の自宅建物のうち、15㎡の部屋を仕事専用に使用しているケースで、年間100,000円の固定資産税がかかっている場合

業務使用面積の割合:15㎡÷120㎡=8%
固定資産税のうち、経費にできる金額:100,000円✕8%=8,000円

面積を使った計算方法の場合、土地・建物の売買契約署や図面のように客観的な根拠があるため、税務署にも比較的説明がしやすいです。

2-2-2.業務に使う時間で経費を計算する方法

その時々によって使い道が異なる資産の場合は、業務に使用した時間に基づいて経費の計算を行いましょう。

具体的な計算方法は、次の通りです。

年間の業務使用時間で固定資産税の経費分を計算する方法

1.業務使用時間を業務日誌やスケジュール帳などで確認する

2.「年間の業務使用時間÷8,760時間(24時間✕365日)」を計算して、業務使用時間の割合を出す

3.「固定資産税額✕業務使用時間の割合」を計算して、経費を出す

 

(計算例)
年間120,000円の固定資産税がかかっている分譲マンションの自宅で、1日8時間、週4日
(年1,664時間)だけエステサロンを営業してい場合

業務使用分の割合:1,664時間÷8,760時間=18.9%
固定資産税のうち、経費にできる金額:120,000円✕18.9%=22,680円

なお、自宅兼事務所で不定期に業務を行う場合などは、業務使用割合を客観的に証明しにくく、確定申告の際に税務署から指摘を受けるリスクが上がります。
日頃から業務日誌などを活用して業務使用時間などを記録しておくと、固定資産税の経費計算に役立つだけでなく、税務署からも信用を得られやすくなります。

2-2-3.業務に使用する面積と時間を組み合わせて経費を計算する方法

土地・建物の一部を業務に使っているものの、同じ場所をプライベートでも使う場合は、業務に使用する面積と時間の両方を組み合わせて固定資産税を按分しましょう。

業務使用面積と時間を利用した固定資産税の経費分を計算するには、次のような手順で行いましょう。

業務に使用する面積と時間を組み合わせて固定資産税の経費分を計算する方法

1.土地または建物全体の面積(建物の場合は全フロアの合計面積)を売買契約書や登記簿などで確認する

2.全体の面積のうち、業務に使用している面積を売買契約時の図面などで確認する(図面で確認できない場合は、メジャーなどで測って面積を計算する)

3.「業務に使用している面積÷全体の面積」を計算して、業務使用面積の割合を出す

4.年間の業務使用時間を業務日誌やスケジュール帳などで確認する

5.「年間の業務使用時間÷8,760時間(24時間✕365日)」を計算して、業務使用時間の割合を出す

6.「固定資産税額✕業務使用面積の割合✕業務使用時間の割合」を計算して、経費分を算出する

 

(計算例)
年間150,000円の固定資産税がかかっている80㎡の自宅マンションのうち、リビングの片隅にある10㎡のスペースで、年1,560時間(週30時間程度)仕事をしている場合

業務使用面積の割合:10㎡÷80㎡=12.5%
業務使用時間の割合:1,560時間÷8,760時間=17.8%
固定資産税のうち、経費にできる金額:150,000円✕12.5%✕17.8%=3,337円

業務に使う面積と時間の両方を組み合わせて固定資産税の経費分を計算すると、面積か時間のどちらかを使った方法よりも計算に手間がかかる上、経費にできる金額が少なくなる傾向があります。
ですが、固定資産税の経費分の計算方法としては最も確実であり、税務署に対しても「真面目な納税者である」という印象につながります。

業務使用面積や時間のみを使った計算結果に不安がある場合は、こちらの方法を取り入れてみましょう。


3.固定資産税を経費に算入するタイミング

個人事業主の場合、固定資産税を経費に算入する主なタイミングは次の2通りです。

タイミング経費処理の考え方向いているケース
固定資産税を納めた日(納付日)現金主義(支払いがあったタイミングで売上や経費などを計上するルール)・小規模事業者のケース
・現金取引が多いケース
固定資産税の金額が確定した日(賦課決定日)発生主義(取引が成立した時点で売上や経費などを計上するルール)・青色申告で65万円の控除の適用を受けるケース
・法人化を目指しているケース

他の経費と同じように、固定資産税も毎年同じルールで経費算入を行う必要があります。
そのため、日頃の経理処理ルールに合ったタイミングで処理をするとスムーズです。

3-1.固定資産税を納めた日(納付日)

1つは、現金や口座振替などで固定資産税を実際に納付した日に経費算入する方法です。

この方法は、「現金主義」(支払いがあったタイミングで売上や経費などを計上するルール)に基づいています。

事業が比較的小規模なケースや、飲食業や小売業などで現金の管理が重要なケースなど、現金主義で経理処理を行っている場合におすすめの方法です。

3-2.固定資産税の金額が確定した日(賦課決定日)

もう1つは、固定資産税の金額が確定した日(賦課決定日)に経費算入する方法です。

固定資産税の賦課決定日は、毎年4~5月頃に届く納税通知書(賦課決定通知書)の日付と同じです。

賦課決定日に固定資産税を経費にする方法は、「発生主義」(取引が成立した時点で売上や経費などを計上するルール)に合わせたものです。

青色申告で65万円の特別控除を利用したいケースや法人成りを目指しているケースなど、日頃から発生主義で記帳をしている場合に向いている方法といえます


4.固定資産税を費用計上する時の仕訳例

ここでは、個人事業主が固定資産税を費用計上する際の仕訳例を解説します。
経費算入のタイミングや資産の用途によって仕訳方法が異なりますので、仕訳例を参考に正しく処理を行いましょう。

4-1.経費算入のタイミング別の仕訳方法

固定資産税の仕訳方法は、経費算入のタイミングによって次のように異なります。

4-1-1.固定資産税を納めた日に経費にする場合

固定資産税の納付方法には、次の2通りあります。

  • 1年分を一括で納付する方法
  • 1年分を年4回に分けて納付する方法

そのため、固定資産税を納付日に経費計上する場合は、納付方法によって次のように仕訳が異なります。

固定資産税を1年分一括で納付する場合

1年分の固定資産税を一括で納付する場合は、納付した日に固定資産税の全額を租税公課として仕訳します。

例:月極駐車場として活用している土地の固定資産税60,000円を、一括で現金納付した。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
租税公課60,000現金60,000

 

固定資産税を年4回に分けて納付する場合

固定資産税を第1期から第4期までの年4回に分けて納付する場合は、毎回の納付日に税額の1/4を租税公課として仕訳します。

例:月極駐車場として活用している土地の固定資産税60,000円のうち、第1期の分として15,000円を現金納付した。(第2~第4期も同様)

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
租税公課15,000現金15,000

 

4-1-2.固定資産税の金額が確定した日に経費にする場合

固定資産税の金額確定時に経費算入するケースでは、金額確定日と納付日に仕訳を行います。
なお、固定資産税を年4回で分納する場合は、それぞれの納付日ごとに仕訳が必要です。

固定資産税の金額確定日の仕訳

固定資産税の金額確定時点ではまだ固定資産税を支払っていないため、次のように「未払金」として計上します。

例:資材置き場用の土地の固定資産税について納税通知書(賦課決定通知書)が届き、今年度の税額が20,000円に確定した。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
租税公課20,000未払金20,000

 

固定資産税の納付日の仕訳

納付日には、金額確定日に計上した未払金の消し込みを行います。
固定資産税を一括納付する場合と、4回に分けて分納する場合の2パターンを紹介しています。

例:土地の固定資産税20,000円を、現金で一括納付した。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
未払金20,000現金20,000

例:土地の固定資産税20,000円のうち、第1期の分として5,000円を現金で分納した。(第2~第4期も同様)

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
未払金5,000現金5,000

 

4-2.資産の用途別の仕訳方法

固定資産税の対象となる資産を、プライベートと兼用しているかどうかで、以下のように仕訳方法が異なります。

なお、ここでは固定資産税を一括納付し、かつ納付日に仕訳をする場合の例を紹介しています。

4-2-1.プライベートと兼用する資産の固定資産税を経費にする場合

自宅兼事務所など、事業とプライベートで兼用する資産の固定資産税を経費にする場合、プライベートの使用分は借方で「事業主貸」として仕訳します。
経費の計算方法は、2-2.プライベートと兼用の資産では事業に使う分のみが対象で紹介しています。

例:自宅の延床面積のうち10%を事務所に使用しているケースで、土地と建物の固定資産税を計150,000円、現金で一括納付し、納付日に仕訳を行った。
(経費にできる固定資産税額:150,000円✕10%=15,000円)

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
租税公課15,000現金150,000
事業主貸135,000

 

4-2-2.100%事業用の資産の固定資産税を経費にする場合

事業のみに使用している資産の固定資産税を経費にする場合は、次のように仕訳します。

例:全室が賃貸用となっているアパートの土地と建物について、40万円の固定資産税を口座振替で一括納付し、納付日に仕訳を行った。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
租税公課400,000普通預金400,000

5.個人事業主による固定資産税の経費化に関するFAQ

ここでは、個人事業主が固定資産税を経費にする際の気になる疑問に回答しています。

5-1.土地や建物を購入した際に、前の所有者に支払った固定資産税の精算金は経費にできる?

不動産の購入時に前所有者に支払った固定資産税の精算金は、経費にすることができません。

固定資産税は1月1日時点で資産を所有する人に課税されるため、年の途中で不動産を購入すると、購入日以降の日数分に応じて按分した税額を精算金として前所有者に支払うのが一般的です。
この時支払った精算金は、経費ではなく土地や建物の売買代金の一部と見なされるため、次のように仕訳します。

例:店舗の建設用地を1,000万円で購入し、あわせて固定資産税の精算金を5万円支払った。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
土地10,050,000現金10,050,000

 

5-2.事業で備品・設備類などの償却資産を使っているが、固定資産税の納税通知書が届かないのはなぜ?

市町村(東京23区の場合は東京都)への償却資産の申告が漏れていると、固定資産税の納税通知書が届きません。

事業で使う備品・設備類などの償却資産については、毎年1月末までに所有者自身が市町村に申告する必要があります。
不動産と違って償却資産には登記制度がなく、所有者が申告しなければ資産の保有状況を市町村側で把握できないためです。

 

5-3.固定資産税と同時に都市計画税が課税されている場合、都市計画税も経費にできるか?

都市計画税も固定資産税と同じように、土地や建物を事業に使っている割合に応じて経費計上することができます。

なお、都市計画税が課税されるのは、「市街化区域」(積極的に土地開発や建物の建築ができるエリアとして、自治体が指定する区域)に土地や建物を所有している人のみです。


6.まとめ

個人事業主が事業で使っている不動産などの固定資産税は、経費に計上できます。

ただし、経費の対象となるのは事業で使われている割合だけです。
自宅兼事務所の場合など、プライベートと兼用の資産の場合は、家事按分した上で固定資産税を経費にする必要があります。

また、固定資産税は経費の算入タイミングや資産の用途によって、仕訳の方法が異なります。

固定資産税の経費計算や仕訳を適切に処理して、少しでも多くの節税につなげましょう。

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