個人事業主の交際費はいくらまで経費にできる?仕訳例や注意点も解説

個人事業主の交際費はいくらまで経費にできるのか疑問に思ったことはありませんか。プライベートと仕事の境界線があいまいになりがちな個人事業主だからこそ、正確な知識で会計処理を行わなくてはなりません。
交際費の上限や目安額、法人における交際費との違い、仕訳例や注意点まで。個人事業主が押さえておきたい知識を解説します。


1.個人事業主の交際費とは

交際費とは、事業に関連する接待・贈答のための支出です。

代表的なのは接待に伴う飲食費やゴルフ代であるため、接待交際費と呼ばれることもあります。しかし接待に限定されるわけではなく、関係性を維持するためのお中元・お歳暮なども交際費に該当します。

また、対象が既存の取引先である必要はありません。事業に関連することが必須条件なので、未取引の顧客でも事業のための支出であれば原則交際費に計上できます。


2.個人事業主の交際費に上限はない

個人事業主の交際費に上限はありませんが、あまりに多いと税務署から指摘が入る可能性があります。では、目安額はどの程度なのでしょう。また、上限に関して法人との違いも把握しておきましょう。

2-1.個人事業主の交際費の目安は売上の3%

業種によって差がありますが、一般的には売上の3%が目安とされています。仮に売上が300万円であれば9万円、500万円であれば15万円……といった具合です。

ただし、これはあくまで目安です。3%を超えたからと言って必ず税務署から指摘が入るわけではありません。また指摘が入ったときも「取引先が多く、つきあいも多い」「商工会やビジネス交流会に複数入っており、会合等が多い」といった明確な理由があれば、正当性を主張できます。

2-2.法人の交際費との違い

個人事業主と違い、法人の場合は計上できる交際費(損金)に上限があります。資本金によって差がありますが、資本金が1億円以下の法人の場合、次のいずれかの金額を選択できます。

  • 交際費のうち、飲食その他これに類する行為に要する費用の50%相当額
  • 交際費のうち年間最大800万円までの金額

法人成りを検討している方は、この点も押さえておくといいでしょう。

法人における交際費の詳細は「交際費は税務調査で要注意!指摘されやすいポイントや対策などを解説」をご覧ください。


3.個人事業主の交際費が否認されるリスク

個人事業主の交際費について税務署から疑問を抱かれると、税務署から指摘が入る可能性が高まります。注意を引きやすいケースについて触れたうえで、交際費が否認されたときのリスクをご紹介します。

3-1.個人事業主の交際費が税務署の注意を引くケース

個人事業主の交際費の目安は売上の3%ですが、次のようなケースではそれ以下の金額でも税務署の注意を引く可能性があります。目安額に加えて、交際費の実態も見られることを知っておきましょう。

  • 利益調整を疑われるケース
    プライベートな領収書や架空の交際費を計上して利益調整をしていると疑われるケースです。例えば、交際費が入ることで事業収支がマイナスになり、課税を免れるような場合です。
  • 交際費の頻度が多いケース
    不自然な頻度で交際費が計上されているケースです。例えば、「1日3回以上交際費が計上されている」「1か月のうちほとんど毎日交際費が計上されている」といったケースは、交際費の実態を疑われやすいです。

交際費の金額が目安額を超えたときや、交際費の頻度が高いときは、交際費の記録を残しておくことが重要です。詳細は「5.交際費を計上する際の3つの注意点」をご覧ください。

3-2.交際費が否認されると追徴課税のリスクがある

交際費が否認されたときの具体的リスクは、本来の納税額が増えることによる追徴課税の発生です。追徴課税の内容は状況により変わり、原則として延滞税に加え、過少申告加算税 または 重加算税が課されます。

  • 延滞税
    納税期日を過ぎていれば、遅れた日数に応じた延滞税が課されます。
  • 過少申告加算税
    交際費が否認されても、仕訳ミスのように悪質性が認められない場合は、過少申告加算税が課されます。
  • 重加算税
    仮装や隠ぺいなど、悪質な不正行為と判断された場合には、過少申告加算税に代えて、重加算税が課されます。
    ※交際費が否認された場合の追徴課税について詳しくは「税務調査で過少申告加算税が発覚!軽減するためのポイントを紹介」をご覧ください。

また、交際費が否認されると、税務署から支出管理がずさんな事業者と認識される懸念があります。その場合、税務調査の頻度が増えるリスクも生じます。


4.個人事業主の交際費の範囲

個人事業主の交際費の範囲として、押さえておくべきは次の2つです。

  • 支出が事業に関連していて、関連性を明確に説明できる
  • 支出額が社会通念上妥当な額であること

明確な基準がないからこそ、客観的な視点を持つことが重要です。

【交際費否認の例】

例えば、青色専従者である配偶者に対し貴金属を贈った」「クリスマス等の記念日にディナーに出かけた」といったケースは、交際費と認められるのは難しいでしょう。配偶者が青色専従者だったとしても、プライベートな支出と判断される可能性が大きいです。

4-1.経費になる交際費

代表的な交際費は次の通りです。なお、ここでいう「取引先」とは主に顧客(見込顧客含む)、仕入先ですが、事業に関わる場合は同業者等も該当します。

  • 取引先との飲食費
    取引先と商談するさいの食事代、同業者との意見交換会における食事代等
  • 取引先への贈答品
    お中元、お歳暮、周年祝い金、新規店舗祝い、訪問時の手土産代等
  • 取引先への慶弔費
    取引先に不幸があったときのお香典等
  • 取引先への接待費
    接待ゴルフ、旅行等
    この場合は、取引先の分だけでなく個人事業主のゴルフ費・旅費も交際費に計上可能

4-2.経費にならない交際費

交際費(経費)として認められないのは、次のような支出です。

  • 個人事業主本人の飲食費
  • 家族や従業員(青色専従者等)との飲食・旅行費
  • 取引先との飲食・旅行だが、商談ではなくプライベートの場合

個人事業主が悩みがちなのが、交際費と会議費の分類です。例えば取引先と飲食を伴う会議をした場合、どちらで計上すべきか迷うことがあるでしょう。
結論から言うと、取引先との会議において飲食費が発生した場合に、交際費して計上することも会議費として計上することも可能です。

【法人の場合は10,000円以下の飲食費は交際費に含めない】

法人税法上は、1人当たり10,000円以下の飲食費は交際費には含めません。ただしこの場合も、会議や打ち合わせの実態があれば、会議費等で費用計上することは可能です。


5.交際費を計上する際の3つの注意点

個人事業主が交際費を計上する際は、次の3つに注意します。

5-1.領収書を保管しておく

領収書は交際費を証明する重要書類なので、必ず保管します。青色申告事業者の場合、保管義務は原則7年間です。
なお、自動販売機やお香典のように領収書がないものは出金伝票を作成します。

5-2.支出内容も明確にする

領収書に加えて、支出内容の記録も重要です。例えば取引先との飲食費であれば、次のような情報を記録します。

  • 事業との関連性や目的
    例えば「新規プロジェクト説明会」「契約更新のための打ち合わせ」など
  • 日付
    交際費の支払日
  • 参加者の詳細
    参加人数、参加者の社名・参加者の所属先・氏名など
  • 飲食店(店舗)の情報
    店名、所在地など

5-3.贈答品や慶弔費は社会通念上妥当な範囲内とする

一般的に交際費の対象となる「贈答品」や「慶弔費」でも、すべて経費になるわけではありません。社会通念上妥当な額であることが前提です。贈答品や慶弔費を支出する場合は、一般的な相場を確認したうえで支出しましょう。

【税務署の反面調査にも注意】

交際費の金額が目安額よりも多い、頻度が多いといったケースでは相手先等に確認が入る反面調査にも注意しなければなりません。交際費の実態があったとしても、反面調査が入ることで取引先等から「不正をしているのでは」と不信感を持たれるリスクがあります。
反面調査を防止するためにも、領収書を分かりやすく保管する、メモはできる限り詳細に残す、といった対策を徹底しましょう。


6.個人事業主の交際費の仕訳例

交際費を計上する場合の仕訳方法を2つご紹介します。

  • 取引先の新店舗オープンに伴い、お花(10,000円分)を贈った
借方 貸方
接待交際費   10,000円現金 10,000円
  • 経営者が事業に携わっていない親族1名を伴い、取引先(1名)と会食した。3名の合計額は45,000円(一人当たり15,000円)
貸方借方
接待交際費30,000円現金45,000円
事業主貸15,000円

親族は事業に関わっていないので、親族にかかる飲食費については接待交際費とすることができません。親族の部分は「事業主貸」を使って会計処理します。

※事業主貸について詳しくは事業主勘定とは?事業と個人のお金の考え方から仕訳まで解説」をご覧ください。


7.個人事業主の交際費でありがちな疑問

個人事業主の交際費でよくある質問をまとめました。

Q:カード利用明細があれば領収書は不要ですか?

交際費をクレジットカードの利用明細だけで経費計上することは、税務上のリスクがあるのでおすすめできません。

事業との関連性や目的」「参加者」などの情報が不足するため、税務調査の際に交際費が否認される恐れがあります。利用明細は、店舗が発行するレシートや領収書と併用するかたちで保管してください。 

Q:交際費をモバイル決済しました。経費にできますか?

モバイル決済でも、経費にすることができます。

ただし、通常の領収書と同じように、「事業との関連性や目的」「参加者」などの情報は記録しておきます。また、決済画面をスクリーンショット等で記録しておくことも大切です。

Q:個人のクレジットカードから支払っていますが問題ないですか?

支出を経費とプライベートで区別し、経費だけを計上するのであれば問題はありません。

ただし、経費とプライベートを混同してしまう懸念があります。また、税務調査が入ったときに経費であることを証明できなければならない点に注意が必要です。


8.まとめ

交際費とは、事業に関連する接待・贈答のための支出です。

個人事業主の場合、プライベートと仕事の境界線があいまいになりがちです。また、法人と違って交際費の上限がないので交際費が多くなったときに不安を感じる方も多いかもしれません。

正確な知識で交際費を適切に処理し、税務上のリスクや不安を軽減していきましょう。

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