「家賃や電気代、仕事と私用で使っている自家用車にかかる費用はどこまで経費になるのだろう?」
個人事業主の方は、自宅の一部を事務所として使用している場合や事業に使用している車を事業とプライベートで共用している場合も多く、このような疑問をお持ちになるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言いますと、個人事業主がプライベート(家事)と事業で共通して使っている支出は、事業に使った割合だけ負担分を費用化し、経費計上することが可能です。
この記事では、個人事業主が家事按分できるものとその計算方法、家事按分できないもの、家事按分した経費の勘定科目と仕訳例、税務調査で指摘されやすい家事按分のポイントまで詳しく解説していきます。ぜひ、ご一読ください。
目次
1.家事按分とは
家事按分(かじあんぶん)とは、個人事業主がプライベート(家事)と事業で共通して使っている支出を事業に使った割合だけ経費にできる仕組みのことです。個人事業主ならではの制度で、法人には家事按分はありません。家事按分を正しく行うことで、事業に関連する実質的な負担分を費用化し節税につなげることができます。
2.個人事業主が家事按分できるもの
では実際に、個人事業主のどのような支出が家事按分の対象となるのか見ていきましょう。主に以下の5つが挙げられます。
・住居費
・電気代
・ガス代、水道代
・通信費
・車両関連費
2-1.住居費
自宅の一部を事務所として使用している場合、住居費は家事按分の対象になります。住居費の家事按分は、物件の所有形態によってルールが大きく変わります。
| 物件の所有形態 | 家事按分の対象となる費用 | 家事按分の対象とならない費用 |
賃貸物件で家賃を支払っている場合 | 家賃 管理費 共益費 | – |
持ち家の場合 | 住宅ローンの利息分 固定資産税 火災保険料 建物の減価償却費 | 住宅ローンの元本 |
①賃貸物件で家賃を支払っている場合
賃貸物件で家賃を支払っている場合は、家賃、管理費、共益費が家事按分の対象となります。賃貸物件で家賃を支払っている場合の家事按分の計算方法は、仕事で使用しているスペースの面積の割合から計算する方法と、仕事で使用している時間の割合から求める方法の2種類があります。
仕事で使用しているスペースの面積の割合での家事按分の計算例
家賃15万円のマンションで、床面積60m²のうち15m²を事務所として使っている場合、
仕事で使用しているスペースの面積の割合は 15m²÷60m²=0.25
15万円×0.25=37,500円
経費として計上できる家賃は、15万円のうち37,500円になります。
仕事で使用している時間の割合での家事按分の計算例
家賃15万円のマンションで、仕事で使用している時間が1日8時間、週5回、1か月160時間の場合、
1か月の総時間は 24時間 ×30日間 = 720時間
仕事で使用している時間の割合は 160÷720=0.2222…(約20%)
15万円×0.20=30,000円
経費として計上できる家賃は、15万円のうち30,000円になります。
②持ち家の場合
持ち家の場合は、固定資産税、火災保険料、建物の減価償却費が家事按分の対象となります。住宅ローンを支払っている場合には、住宅ローンの利息分も家事按分の対象となります。住宅ローンの元本返済は借金の返済で費用ではないため、家事按分の対象にはなりません。
持ち家で住宅ローンを支払っている場合の家事按分の計算方法は、賃貸物件で家賃を支払っている場合と同様に、仕事で使用しているスペースの面積の割合から計算する方法と、仕事で使用している時間の割合から求める方法の2種類があります。
仕事で使用しているスペースの面積の割合での家事按分の計算例
毎月の住宅ローン利息が25,000円で、床面積60m²のうち15m²を事務所として使っている場合、
仕事で使用しているスペースの面積の割合は 15m²÷60m²=0.25
25,000円×0.25=6,250円
経費として計上できる住宅ローン利息は、25,000円のうち6,250円になります。
仕事で使用している時間の割合での家事按分の計算例
毎月の住宅ローン利息が25,000円で、仕事で使用している時間が1日8時間、週5回、1か月160時間の場合、
1か月の総時間は 24時間 ×30日間 = 720時間
仕事で使用している時間の割合は 160÷720=0.2222…(約22%)
25,000円×0.22=5,500円
経費として計上できる住宅ローン利息は、25,000円のうち5,500円になります。
2-2.電気代
自宅の一部を事務所として使用している場合、電気代は家事按分の対象になります。電気代の家事按分の計算方法は、仕事で使用しているスペースの面積の割合から計算する方法と、仕事で使用している時間の割合から求める方法の2種類があります。
仕事で使用しているスペースの面積の割合での家事按分の計算例
毎月の電気代が30,000円で、床面積60m²のうち15m²を事務所として使っている場合、
仕事で使用しているスペースの面積の割合は 15m²÷60m²=0.25
30,000円×0.25=7,500円
経費として計上できる電気代は、30,000円のうち7,500円になります。
仕事で使用している時間の割合での家事按分の計算例
毎月の電気代が30,000円で、仕事で使用している時間が1日8時間、週5回、1か月160時間の場合、
1か月の総時間は 24時間 ×30日間 = 720時間
仕事で使用している時間の割合は 160÷720=0.2222…(約22%)
30,000円×0.22=6,600円
経費として計上できる電気代は、30,000円のうち6,600円になります。
2-3.ガス代・水道代
自宅の一部を事務所として使用していて、料理教室や美容院のように業務にガスや水道の利用が不可欠な場合、ガス代や水道代は家事按分の対象になります。ガス代や水道代の家事按分の計算方法は、仕事で使用している時間や日数の割合から求めます。
仕事で使用している時間や日数の割合での家事按分の計算例
料理教室の毎月のガス代が50,000円で、仕事で使用している時間が1日6時間、週4日、1か月96時間の場合、
1か月の総時間は 24時間 ×30日間 = 720時間
仕事で使用している時間の割合は 96÷720=0.1333…(約13%)
50,000円×0.13=6,500円
経費として計上できるガス代は、50,000円のうち6,500円になります。
2-4.通信費
業務とプライベートの両方で利用する場合が多いため、携帯電話料金やインターネット料金などの通信費は、家事按分の対象となります。通信費の家事按分は通話明細や通信量の記録に基づいて計算するのが理想的です。
携帯電話料金の家事按分は、通話明細に基づいて仕事で使用している割合を計算します。
インターネット料金の家事按分は、業務使用の時間帯や使用量を記録することで計算することができます。ただし、これらの記録を常に取ることは現実的ではない場合もあるため、仕事で使用している時間や日数の割合など、業務使用の実態に合わせた合理的な計算をすることも認められています。計算例を見てみましょう。
仕事で使用している時間や日数の割合での家事按分の計算例
1か月のインターネット料金が30,000円で、仕事で使用している時間が1日8時間、週5回、1か月160時間の場合、
1か月の総時間は 24時間 ×30日間 = 720時間
仕事で使用している時間の割合は 160÷720=0.2222…(約22%)
30,000円×0.22=6,600円
経費として計上できるインターネット料金は、30,000円のうち6,600円になります。
2-5.車両関連費
事業に使用している車を事業とプライベートで共用している場合は、車両関連費は家事按分の対象となります。車両関連費で家事按分の対象となる費用には以下のようなものがあります。車両関連費の家事按分は車両の使用日数や走行距離から計算しますが、費用によっては注意点があります。
| 車両関連費で家事按分の対象となる費用 | 注意点 |
| 車両本体の購入費用 | 耐用年数に応じて減価償却し、数年間に分けて経費計上する |
| リース代 | – |
| ガソリン代 | ガソリンと軽油はかかる税金の種類が異なるため、ガソリン代と軽油代は別々に処理する |
| 駐車場代 | 事業で使用したことを証明できるよう、使用した目的や行き先などを記録しておく |
| 高速代 | 事業で使用したことを証明できるよう、使用した目的や行き先などを記録しておく |
| 車両保険料 | – |
| 税金(自動車税種別割、自動車税環境性能割、自動車重量税) | – |
| 車検費用 | – |
ここでは車両本体の購入費用とガソリン代の家事按分の計算例を見てみましょう。
まずは車両本体の購入費用の家事按分の計算例です。
車両の使用日数の割合での家事按分の計算例
軽自動車を140万円で購入し、定額法(法定耐用年数4年、償却率0.25)で原価償却費を計算した場合、
毎年の減価償却費は 1400,000×0.25=350,000円
4年間350,000円を経費計上することになります。
仕事で車両を使用している日数が月に20日、年間で240日の場合、
仕事で使用している日数の割合は 240日÷365日=0.657…(約66%)
350,000円×0.66=231,000
経費として計上できる減価償却費は、350,000円のうち231,000円になります。
車両の走行距離の割合での家事按分の計算例
軽自動車を140万円で購入し、定額法(法定耐用年数4年、償却率0.25)で原価償却費を計算した場合、
毎年の減価償却費は 1400,000×0.25=350,000円
4年間350,000円を経費計上することになります。
車両の年間走行距離が10,000kmで、このうち仕事での走行距離が7,500kmの場合、
仕事での走行距離の割合は 7,500km÷10,000km=0.75
350,000円×0.75=262,500
経費として計上できる減価償却費は、350,000円のうち262,500円になります。
次はガソリン代の家事按分の計算例です。
車両の使用日数の割合での家事按分の計算例
1か月のガソリン代が4,000円、仕事で車両を使用している日数が1か月20日の場合、
仕事での使用日数の割合は 20日÷30日=0.6666…(約67%)
4,000円×0.67=2,680
経費として計上できるガソリン代は、4,000円のうち2,680円になります。
車両の走行距離の割合での家事按分の計算例
1ヶ月のガソリン代が4,000円1か月の走行距離が300km、仕事での走行距離が210kmだった場合、
仕事での走行距離の割合は 210km÷300km=0.7
4,000円×0.7=2,800
経費として計上できるガソリン代は、4,000円のうち2,800円になります。
ガソリン代の経費計上についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
辻󠄀本郷税理士法人の起業ガイド|個人事業主のガソリン代はどこまで経費?計算法や仕訳、注意点を解説
3.家事按分できないもの
家事按分は、プライベート(家事)と事業で共通して使っている支出を事業に使った割合だけ経費にできる仕組みです。費用を家事按分して経費計上するには、その費用と事業との関連性や必要性を客観的に証明できる必要があります。プライベート利用が主目的のもの、 事業との関連性や必要性が説明できないものは家事按分の対象にはなりません。
例えば、以下のような費用の家事按分は認められません。
・洋服代
・生活費(食料品代、日用品代など)
・旅行代
・自宅で使っている家電の購入費用 など
4.家事按分した経費の勘定科目と仕訳例
ここからは、家事按分した費用の仕訳例についても見ていきましょう。
4-1.家事按分できる主な費用の勘定科目
まずは家事按分でよく使われる勘定科目をまとめておきます。
| 家事按分できる主な費用 | 勘定科目の例 | |
| 住居費 | 家賃・管理費・共益費 | 地代家賃 |
| 住宅ローンの利息 | 支払利息 | |
| 固定資産税 | 租税公課 | |
| 火災保険料・地震保険料 | 保険料 | |
| 建物の減価償却費 | 減価償却費 | |
| 電気代 | 水道光熱費 | |
| ガス代・水道代 | 水道光熱費 | |
| 通信費 | 通信費 | |
| 車両関連費 | 車両本体の購入費用 | 車両運搬具 |
| リース代 | リース料 | |
| ガソリン代 | 車両費、旅費交通費 | |
| 駐車場代 | 旅費交通費 | |
| 高速代 | 車両費、旅費交通費 | |
| 車両保険料 | 損害保険料 | |
| 税金 | 租税公課 | |
| 車検費用 | 車両費 | |
4-2.家事按分の仕訳例
では実際の仕訳例です。家賃の支払いを例に見ていきます。家事按分の仕訳は、その支出を事業用の現金や預金から支払ったのか、プライベートの現金や預金から支払ったのかで異なります。
家賃100,000円を家事按分し、30,000円を経費計上する際の仕訳例です。
①事業用の現金や預金から支払った場合
プライベート部分も仕訳する必要があります。プライベート部分の借方勘定科目には事業主貸を使用します。事業主貸とは、個人事業主が経費にできない支出などがあった場合に使う勘定科目です。
| 借方 | 貸方 | ||
| 地代家賃 | 30,000 | 普通預金 | 100,000 |
| 事業主貸 | 70,000 | ||
②プライベートの現金や預金から支払った場合
経費計上する部分のみ仕訳をします。貸方勘定科目には、事業主借を使います。事業主借とは、個人のお金を事業で使用したときに使う勘定科目です。
| 借方 | 貸方 | ||
| 地代家賃 | 30,000 | 事業主借 | 30,000 |
5.税務調査で指摘されやすい家事按分のポイント
個人事業主の家事按分は、青色申告か白色申告に関わらず費用が明確に事業用である根拠を示せることが重要です。実際の税務調査では、白色申告の家事按分のほうが厳しくチェックされる傾向があります。
ここからは、税務調査で指摘されやすい家事按分のポイントについて3つ見ていきます。
5-1.家事按分割合の計算方法が明確になっていない
個人事業主の家事按分では、税務署は「生活費を経費に入れていないか」を重点的にチェックするため、按分の根拠が弱いとすぐに否認されます。使用面積や使用時間、使用頻度など明確な根拠となる数字を用いて家事按分の割合が計算されていない場合には、按分割合を下げられたり、全額を否認される可能性もあります。
5-2.生計を共にする家族や親族への支払いを算入している
個人事業主の家事按分では、所得分散による課税逃れを防ぐため、同一生計の家族・親族への支払いは、原則として必要経費に計上できません。家族への支払いは「お財布が一緒」とみなされます。
5-3.家事按分を証明できる書類がない
個人事業主の家事按分では、家事按分の根拠を証明できる証拠が必要なため、領収書があるか、支払い方法が明確か、家事按分の計算根拠が残っているかがチェックされます。証明する記録や証拠が整っていなければ、税務調査で否認されるリスクが高まります。
家事按分の税務調査についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
辻󠄀・本郷Navi|税務調査で家事按分は否認される?証明に必要な資料と根拠とは
6.まとめ
ここまで、個人事業主が家事按分できるものとその計算方法、家事按分できないもの、家事按分した経費の勘定科目と仕訳例、税務調査で指摘されやすい家事按分のポイントまで見てきました。
個人事業主の家事按分では、費用が事業用である根拠を明確にし、家事按分を正しく行うことで節税につなげられるようにしましょう。



