
「遺産を相続したら相続税だけでなく所得税も払う必要がある?」
「相続時に所得税がかかるのはどんなケース?」
「確定申告は必要?」
本記事をご覧の皆さまはこんな疑問をお持ちではないでしょうか。
相続財産にかかるのは「相続税」です。
しかし、例外的に相続が発生した時に所得税がかかることもあります。
本記事では、例外的に相続時に所得税かかかるケース、所得税の確定申告について、わかりやすく解説します。
本記事が、「遺産相続の際にかかる相続税や所得税」について疑問をお持ちの方の一助となれば幸いです。
1.相続財産にかかるのは原則「相続税」
相続財産に係るのは原則「相続税」です。
相続財産にかかるのは「相続税」であり、原則として「所得税」はかかりません。
亡くなった方から引き継いだ財産は「遺産」です。働いて得た収入、つまり所得ではないため、所得税の課税対象にはならないのです。
所得税法 第九条(非課税所得)
次に掲げる所得については、所得税を課さない。
十七 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含み、同法第二十一条の三第一項第一号(贈与税の非課税財産)に規定する公益信託から給付を受けた財産に該当するものを除く。)
出典:e-Gov法令検索「所得税法」第九条
2.【例外】相続が発生した時に所得税がかかる3つのケース
相続が発生した時に例外的に「所得税」がかかる3つのケースについて解説します。
亡くなった方から財産を引き継いだ財産は「相続税」の対象となります。
しかし以下の通り、例外的に、相続が発生した時に「所得税」がかかるケースがあります。
2-1.亡くなった方の所得税を代わりに申告する時(準確定申告)
1つ目のケースは、亡くなった方の所得税を代わりに申告するケースです。
亡くなった方(被相続人)が1月1日から亡くなった日までに所得を得ていて、確定申告が必要な場合には、相続人が代わりに確定申告を行ない、必要に応じて所得税を支払わなければなりません。これを「準確定申告」と呼びます。
確定申告が必要な方の条件は国税庁ウェブサイト 確定申告が必要な方に掲載されています。
亡くなった方が確定申告が必要な方の条件に当てはまる場合は、準確定申告を行う必要があります。
準確定申告の期限は、「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」です。通常の確定申告(翌年3月15日まで)よりも期限が短いため、早めの手続きが必要です。
■辻・本郷相続ガイド 準確定申告とは?方法や期限、よくある質問もわかりやすく解説
■国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
2-2.相続した後の財産を売却・運用した時
2つ目のケースは、相続した後の財産を売却・運用した時です。
具体的に以下、2つのケースを解説します。
2-2-1.相続した不動産や株式などを「売却」したケース
相続した土地や建物、株式などを売却し、購入した金額よりも高く売れて利益(売却益)が出た場合、その利益に対して所得税(譲渡所得)がかかります。
もし相続税を支払った後に売却する場合、「相続税額の取得費加算の特例」という制度を使えることがあります。これは、支払った相続税の一部を「経費」として認め、所得税(譲渡所得)を軽減できる制度です。売却を検討している場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。
■国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
■辻・本郷相続ガイド 譲渡所得税を減らす取得費加算の特例
また、古い実家の売却を検討しているなら「相続した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除」も確認しておきましょう。
■国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
■辻・本郷相続ガイド 相続した空き家を売却する前に…3,000万円まで控除される特例のご紹介[令和5年度税制改正版]
ただし、上記の「相続税額の取得費加算の特例」と「相続した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除」は選択制です。併用はできませんので、ご注意ください。
2-2-2.相続した財産から家賃収入などの固定の収入を得るケース
相続した財産から家賃収入などの固定の収入を得るケースでは、下の図のように家賃の発生時期によって税金の扱いが変わります。
| 亡くなるまでに発生した家賃 | 亡くなった方の収入なので「準確定申告」の対象 |
|---|---|
| 死亡日以降に発生した家賃 | 相続人自身の収入なので「所得税(不動産所得)」の対象 |
相続によってアパートやマンション、駐車場などを引き継いだ場合、相続発生日以降に発生する家賃収入は相続人自身の収入ですから、「不動産所得」として所得税の課税対象となります。
なくなるまでに発生した家賃収入は、亡くなった方の収入ですから、「準確定申告」の対象となります。
■国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
2-3.相続人固有の財産を受け取った時
3つ目のケースは、相続人固有の財産を受け取った時です。
具体的に以下、3つのケースを解説します。
2-3-1.「自分で保険料を負担していた」死亡保険金を受け取るケース
相続発生時に生命保険金を受け取った際にかかる税金は、誰が保険料を払っていたかによって、以下のように決まります。
| 保険料負担者 | 被保険者 | 保険金受取人 | かかる税金 |
| 被相続人 | 被相続人 | 相続人 | 相続税 |
| 相続人 | 亡くなった人被相続人 | 相続人 | 所得税(一時所得) |
| 第三者 | 被相続人 | 相続人 | 贈与税 |
ご自身で保険料を負担していた場合には、所得税の対象になります。
一時所得には年間最大50万円の特別控除があります。詳細は下記をご覧ください。
■国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき
相続時の生命保険金の扱いの詳細については下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 生命保険金に相続税はかかる?生命保険と税金の関係について徹底解説
2-3-2.死亡退職金や保険金を「年金形式」で受け取るケース
死亡退職金や生命保険金を一括で受け取らず、分割して毎年受け取る「年金形式」にした場合、初年度と、2年目以降で税金の種類が分かれます。
| 受給初年度 | 将来年金を受け取る権利(受給権評価額)に対して「相続税」が課税されます。 |
|---|---|
| 2年目以降 | 毎年受け取る年金のうち、利息にあたる運用益部分に対して「所得税(雑所得)」が課税されます。 |
初年度に相続税の対象となった部分は二重課税にならないよう除外され、運用により増えた部分のみに所得税が課税される仕組みです。
■国税庁 No.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係
2-3-3.亡くなった方の「未支給年金」を遺族が受け取るケース
公的年金は偶数月の15日に前月・前々月の2か月分が支払われます。そのため、亡くなった時期によっては「本来受給するはずだった未支給の年金」が発生します。
未支給年金は、遺族独自の権利として請求するものとされており、亡くなった方の遺産(相続財産)ではなく、受け取った遺族自身の収入(一時所得)として所得税が課税されます。
他の一時所得とあわせて特別控除額(最大50万円)を超える場合は、所得税の確定申告が必要になります。
■国税庁 未支給の国民年金に係る相続税の課税関係、No.1490 一時所得
■辻・本郷相続ガイド 未支給年金とは?受け取れる人・手続き・税金をわかりやすく解説
3.相続税は相続税申告、所得税は確定申告で納付する
相続税は相続税申告、所得税は確定申告で納付します。
遺産相続に関連して発生する税金は、税目の違いによって申告手続きの種類や提出期限が異なります。
適切な手続きを行うために、それぞれの申告方法と納付期限を正しく把握しておきましょう。
| 税金の種類 | 申告の種類 | 申告期限・支払い期限 | 提出先(対象場所) |
|---|---|---|---|
| 相続税 | 相続税申告 | 相続開始を知った日の翌日から 10か月以内 | 亡くなった方の住所地の税務署 |
| 亡くなった方の所得税 | 準確定申告 | 相続開始を知った日の翌日から 4か月以内 | 亡くなった方の住所地の税務署 |
| 相続人の所得税 | 確定申告 | 所得が発生した翌年の 2月16日 ~ 3月15日まで | 相続人自身の住所地の税務署 |
3-1.相続税は相続税申告で納付する
相続税は「相続税申告」を行って納付します。
相続税の課税価格が遺産に係る基礎控除額を上回る場合には、相続税申告が必要です。
相続税申告と納付の期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」です。
亡くなった方の住所地を管轄する税務署へ申告書を提出し、あわせて納付手続きを行います。申告期限までに申告や納税を行わなかった場合、加算税や延滞税といったペナルティが発生する可能性があるため注意しましょう。
■辻・本郷相続ガイド 相続税はいくらからかかる?判断する方法を相続専門税理士が解説、税理士が教える!相続税申告・納付の期限とは?初めての人向けに解説しました
3-2.所得税は確定申告で納付する
所得税は「確定申告」を行って納付します。
相続に関連して発生する所得税は、個人の所得として確定申告が必要です。
所得税の確定申告期限は、「所得が発生した翌年の2月16日〜3月15日まで」です。
ここで特に注意が必要なのが、亡くなった方の代わりに申告する「準確定申告」です。
相続人自身の所得税申告とは異なり、準確定申告の期限は「相続開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」と非常に短く設定されています。「通常の確定申告と同じ時期でいいだろう」と勘違いして期限を過ぎてしまわないよう、早めに準備を進めることが大切です。
■辻・本郷相続ガイド 準確定申告とは?方法や期限、よくある質問もわかりやすく解説
4.まとめ
本記事では、相続財産にかかる税金として、相続税や例外的に所得税がかかる6つのケース、それぞれの申告・支払い手続きについて解説してきました。
相続財産にかかるのは「相続税」であり、原則として「所得税」はかかりません。
ただし、亡くなった方の所得を代わりに申告する準確定申告をはじめ、相続した不動産の売却や家賃収入、ご自身で保険料を負担していた生命保険金などがある場合には、例外的に所得税の対象となります。
相続に関連する税金は種類によって申告期限や提出先の税務署が異なるため、あらかじめ全体のスケジュールを確認して適切に対応しましょう。
本記事が、遺産相続の際にかかる相続税や所得税について疑問をお持ちの皆さまの一助となれば幸いです。
