Irrevocable Trust(撤回不能信託)の選択肢

アメリカ・ハワイ州における国際税務や遺産相続について、現地在住の弁護士が具体的な事例をご紹介します。

1.はじめに

一般的に、ほとんどどの家庭においては、Revocable Living Trust(撤回可能な生前信託)を準備するだけで十分です。

例えば生前信託を準備した後に新しい資産を購入した場合、撤回可能なリビングトラストは、信託のSettlor(委託者)が生きている限り、信託の修正・変更を可能にするため、新しい資産を現在の信託に追加すること等ができます。

ですが、ご家族によって、遺産額が遺産税の免除額を上回る場合、それを軽減・回避させるためにおいての保護等を提供することができるIrrevocable Living Trust(撤回不能信託)を作成することを選択する場合もあります。

 今回は、アメリカで良く作成することが検討されるSLAT(“Spousal Lifetime Access Trust”)と、QTIP(“Qualified Terminable Interest Property Trust”)を含む、2種類の撤回不能信託をご紹介します。

2.SLAT(“Spousal Lifetime Access Trust”)とは

SLATとは、一方の配偶者がもう一方の配偶者の利益のために設定する撤回不能信託です。

夫婦の遺産税の課税対象となる総遺産額を減少させる効果があり、それによって連邦および州の遺産税の支払義務を軽減することに役立ちます。

撤回不能信託への贈与は、贈与を行う配偶者の贈与税および遺産税の非課税枠が適用されるため、資産の移転に対して課税されることはありません。

例えば、ある夫婦が合計3,000万ドルの資産を持っているとします。
配偶者の両方が、それぞれ1,361万ドル(2024 年の連邦遺産税免除額)を、お互いに利益をもたらす2つのSLATに譲渡した場合、遺産税の課税対象となる遺産から全額2,722万ドルを引き出すことができるとともに、SLATへの贈与から、夫婦双方が信託から収入と元本の分配を受け取れることも可能にします。

結果的に、ご夫婦には、SLAT 収入と元本分配に加え、老後の生活資金として、278万ドルの残金が手元に残ることになります。

3.QTIP(“Qualified Terminable Interest Property Trust”)とは

QTIP信託では、信託のSettlor(委託者)が、生存配偶者を信託からの収益(場合によっては元本も)の受取人として指定し、配偶者が生涯にわたって確実にケアされる様に配慮をし、生存配偶者の死後、残りの資産を受け取る最終受益者も指定することができます。

QTIP信託は、配偶者が生涯にわたって確実に収入を確保するための、優れたエステート・プランニング・ツールとなります。また、それと同時に、生存配偶者が再婚したり、前婚での子供がいたりする場合であっても、指定された最終受益者が、信託内の残りの資産を確実に継承できるようにします。

QTIP信託は、離婚または再婚等を経験し、最初の結婚時にできた子供や、その後の結婚において継子等ができたご家族の場合等に適した信託となります。

4.まとめ

撤回可能な生前信託は、一般的な家族にとって適切な選択肢となるかもしれませんが、ご家族の具体的な状況に何が最適かを見極めるために、弁護士と話し合って他の選択肢も検討してみる事をお勧めします。

TH弁護士法人パートナー 米国弁護士 本郷 友香(ほんごう ゆか)

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