
「相続税の申告が終わった後に、新たな財産が見つかってしまったけど、修正申告が必要だろうか」
「すでに行った相続税申告の修正は、どのように行うのだろうか」
本記事をご覧の皆さまはこのような疑問をお持ちではないでしょうか。
相続税の申告後に、正しい税額が申告した税額よりも多い場合は、「修正申告」を行いましょう。
本記事では、相続税申告の修正申告が必要なケース、やり方や手続きに必要な書類、ペナルティの種類などをわかりやすく解説します。
本記事が相続税の修正申告についてのお悩み解決の一助となれば幸いです。
目次
1.相続税の修正申告とは、申告した税額が正しい金額よりも少ない場合に行う手続き
相続税の修正申告とは、すでに行った相続税申告の税額が正しい金額よりも少ない場合に行う手続きです。
申告書に計算ミスがあったり、後から新しい財産が見つかったりして、本来納めるべき税金よりも少なく申告していた場合は、正しい内容に直して差額を納めなければなりません。
これを相続税の「修正申告」と言います。
※税金を多く払いすぎていたときは「更正の請求」を行う
「修正申告」と反対の言葉に相続税の「更正の請求」があります。
「更正の請求」とは、税金を多く払いすぎていたときの手続きです。
「計算を間違えて相続税を高く計算してしまった」「使えるはずの特例を使い忘れてしまった」という場合に、「払いすぎた税金を返してください」と請求する手続きを言います。
| 修正申告 | 更正の請求 | |
| どのようなとき? | 本来よりも少なく申告していたとき | 本来よりも多く申告していたとき |
| 税金はどうなる? | 少なかった分を追加で支払う | 払いすぎた分を還付(返金)してもらう |
詳細は下記をご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 払い過ぎた税金は戻ってくる?~更正の請求~
■国税庁 相続税及び贈与税の更正の請求手続
申告期限前であれば「訂正申告」を行う
税額の間違いに気づいたのが申告期限前であれば、「訂正申告」を行いましょう。
「修正申告」と「更正の請求」は、どちらも相続税の申告期限が過ぎた後(期限後)に行う手続きです。
一方で、もし申告書を税務署に提出したあとでも、申告期限内(亡くなったことを知った翌日から10ヶ月以内)であれば、正しい申告書を出し直すことができます。 これを「訂正申告」と呼びます。
期限内の手続きとなるため、税金を追加で払うことになったとしても、延滞税などのペナルティはかかりません。もし間違いに気づいたタイミングが申告期限前なのであれば、速やかに「訂正申告」を行いましょう。
2.相続税の修正申告が必要になる主な4つのケース
相続税の修正申告が必要になる主な4つのケースについて解説します。
2-1.【ケース1】新たな相続財産が見つかったとき
1つ目のケースは、新たな相続財産が見つかったときです。
相続税の申告期限が過ぎたあとに、それまで家族が知らなかった・見つけられなかった財産が出てくるケースは珍しくありません。
具体的には、以下のようなケースが多いです。
- 自宅の金庫や引き出しから見つかった現金(タンス預金)
- 家族が把握していなかった過去の預貯金口座
- 家族名義になっているが、実質は亡くなった方の財産である「名義預金」
これらが相続財産に加わると、相続税の総額が増えるため、修正申告をして、少なかった分を納める必要があります。
■辻・本郷相続ガイド 相続税申告後に見つかった財産
2-2.【ケース2】遺産分割協議がまとまらず、一旦法定相続分で申告したとき
2つ目のケースは、遺産分割協議がまとまらず、一旦法定相続分で申告したときです。
相続税の申告期限(亡くなったことを知った翌日から10ヶ月以内)までに遺産分割協議がまとまらない場合、いったん「法定相続分」で財産を分けたと仮定して申告と納税を済ませることがあります。
申告期限後に、遺産分割協議がまとまり、実際に財産を分けた結果、当初の法定相続分で計算した税額よりも、実際の取得財産に応じた税額の方が高くなった相続人は、修正申告を行う必要があります。逆に当初の金額よりも安くなった相続人は更正の請求を行えば税金が戻ってきます。
■辻・本郷相続ガイド 財産が未分割でも相続税申告はすべき?未分割で申告する方法も解説
■国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
2-3.【ケース3】財産の評価額を間違えて低く計算していたとき
3つ目のケースは、財産の評価額を間違えて低く計算していたときです。
相続税は、財産の「相続税評価額」をベースに計算します。相続税評価額の計算には専門的なルールがあり、非常に複雑なものも少なくありません。
特に土地の評価においては、土地の形・周囲の環境に応じた複雑な補正計算が必要となるため、手順を間違えて本来よりも低い価値で見積もってしまうケースがあります。このように財産評価のミスによって税額が少なく計算されていた場合は、正しい評価額で計算し直して、修正申告を行う必要があります。
■辻・本郷相続ガイド 相続税評価額とは?他の価額との違い、主な相続財産の計算方法を解説
2-4.【ケース4】生前贈与の加算漏れが判明したとき
4つ目のケースは、生前贈与の加算漏れが判明したときです。
相続税の計算では、亡くなる前の一定期間(※亡くなった時期に応じて3年〜7年)に被相続人から贈与された財産を、相続財産に足し戻して計算しなければならないルール(生前贈与の加算)があります。
しかし、後からそのルールに気付いたり、過去の贈与が発覚したりした場合には、足し戻すことで、正しい税額に直して修正申告を行う必要があります。
■辻・本郷相続ガイド 生前贈与加算にご注意! ~生前贈与による相続税対策の落とし穴~
■国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
3.相続税の修正申告をした際に課されるペナルティ
相続税の修正申告をする場合には、以下のペナルティが課される可能性があります。
| 延滞税 | 納付が相続税の申告期限に遅れた場合 |
|---|---|
| 過少申告加算税 | 税務署の指摘(税務調査の事前通知を受けたあと)により追加納付の必要が発覚し、修正申告をして相続税を追加で納める場合 |
| 無申告加算税 | 相続税の申告期限を過ぎてから自主的に申告した場合 期限後申告後、修正申告をした場合 税務調査やその事前通知を受けてから申告した場合 |
| 重加算税 | 仮装・隠ぺいをおこなった場合 |
3-1.延滞税
延滞税は本来の納付期限の翌日から納付完了日までの日数に応じて課される税金です。
修正申告をして相続税を追加で納める場合は、相続税の法定納付期限から納付するまでの日数に対して延滞税が課税されます。ただし、法定期限内に提出した申告書の修正申告で、法定申告期限から1年以上経過している場合、重加算税が課される場合を除き、1年分を限度とします。
計算方法は以下の通りです。
①の金額+②の金額=延滞税の額〔100円未満の端数切捨て〕
①納付すべき本税の額※1×延滞税の割合※2×期間(日数)※3÷365日=金額※4
②納付すべき本税の額※1×延滞税の割合※2×期間(日数)※5÷365日=金額※4
※1 10,000円未満の端数切捨て
※2 延滞税の割合は年毎に代わります。国税庁HP『延滞税の割合』をご覧ください。
※3 法定納期限の翌日から完納の日又は2ヵ月を経過する日
※4 1円未満の端数切捨て
※5 2ヵ月を経過する日の翌日から完納の日
延滞税の割合(税率)は、修正申告の本来の納付期限の翌日から起算して2ヵ月を経過しているか、していないかで異なります。令和3年1月1日以後の税率は以下のとおりです。
| 納付期限から2ヵ月以内 | 年7.3%または「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合 |
|---|---|
| 納付期限から2ヵ月経過 | 年14.6%または「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合 |
延滞税に関する詳細は国税庁HP『延滞税の計算方法』をご覧ください。
3-2.過少申告加算税
過少申告加算税は期限内申告をした後に税務署の指摘(税務調査の事前通知を受けたあと)により追加納付の必要が発覚し、修正申告をして相続税を追加で納める場合に課税されます。
また、過少申告に正当な理由があった場合には賦課されません。
計算方法は以下の通りです。
追加で納める税額×過少申告加算税の税率=過少申告加算税の額
過少申告加算税の税額は、修正申告のタイミングや追加で納める税額によって異なります。
| 修正申告の時期 | 50万円以下 (期限内申告税額が50万円よりも高ければ、 期限内申告税額以下) | 50万円超 (期限内申告税額が50万円よりも高ければ、 期限内申告税額超) |
|---|---|---|
| 税務調査の事前通知前 | なし | |
| 税務調査の事前通知後から税務調査まで (更正等予知前) | 5% | 10% |
| 税務調査後 | 10% | 15% |
※以下の場合は「国外財産調書/財産債務調書に係る加重」として「+5%」となる。
①国外財産調書/財産債務調書の提出がない場合
②提出された国外財産調書/財産債務調書に申告漏れに係る国外財産/財産債務の記載がない場合
詳細は財務省作成資料『加算税制度の概要①(基本情報)』をご覧ください。
3-3.無申告加算税
無申告加算税は、相続税の申告期限を過ぎてから自主的に申告した場合、期限後申告決定後に税務調査やその事前通知を受けてから修正申告や更正があったした場合に課税されます。
ただし、正当な理由がある場合や、法定申告期限から1ヶ月以内にされた一定の期限後申告の場合は免除されます。
計算方法は以下の通りです。
新たに納める税額×無申告加算税の税率=無申告加算税の額
過少申告加算税の税額は、期限後申告のタイミングや追加で納める税額によって異なります。
| 期限後申告の時期 | 50万円以下 | 50万円超300万円以下 | 300万円超 (高額無申告を発生させたことについて納税者の責めに帰すべき事由がない場合を除く) |
|---|---|---|---|
| 税務調査の事前通知前 | 5% | ||
| 税務調査の事前通知後 から税務調査まで (更正等予知前) | 10% | 15% | 25% |
| 税務調査後 | 15% | 20% | 30% |
※以下の場合は「短期累犯加重」として「+10%」となる。
・過去5年以内に無申告加算税⼜は重加算税を課されたことがある場合
・「更正等予知前」であれば、調査通知後も適⽤なし
・連年無申告加重との重複適⽤なし
※以下の場合は「連年無申告加重」として「+10%」となる。
・前年分及び前々年分の国税について、無申告加算税⼜は重加算税(無申告)を、
① 課されたことがある場合
② 賦課決定をすべきと認める場合
詳細は財務省作成資料『加算税制度の概要①(基本情報)』をご覧ください。
3-4.重加算税
重加算税は仮装・隠ぺいをおこなった場合に課される税金です。
過少申告加算税や無申告加算税の代わりに課税されます。
計算方法は以下の通りです。
追加で納める税額または新たに納める税額×重加算税の税率=重加算税の額
税率は以下の通りです。
| 過少申告(期限内申告書を提出していた場合) | 35% |
|---|---|
| 無申告(期限内申告書を提出していなかった、期限後申告・決定後に修正申告・更正があった場合) | 40% |
※以下の場合は「短期累犯加重」として「+10%」となる。
・過去5年以内に無申告加算税⼜は重加算税を課されたことがある場合
・「更正等予知前」であれば、調査通知後も適⽤なし
・連年無申告加重との重複適⽤なし
※以下の場合は「連年無申告加重」として「+10%」となる。
・前年分及び前々年分の国税について、無申告加算税⼜は重加算税(無申告)を、
① 課されたことがある場合
② 賦課決定をすべきと認める場合
詳細は財務省作成資料『加算税制度の概要①(基本情報)』をご覧ください。
4.相続税の修正申告|4つのステップ
相続税の修正申告をする方法について、4つのステップで解説します。
全体の流れをあらかじめ把握して、スムーズに進めましょう。
| ステップ1 | 必要書類をそろえる |
|---|---|
| ステップ2 | 修正申告書を作成する |
| ステップ3 | |
| ステップ4 |
4-1.必要書類をそろえる
必要書類をそろえることが、相続税の修正申告を進めるための最初のステップです。
修正申告を行うためには、新しく見つかった財産の正確な金額がわかる証明書や、最初に提出した申告書のデータが必要になります。主に以下のような書類を事前に準備しましょう。
| 相続税の修正申告書 | 国税庁 相続税の申告書等の様式一覧や税務署の窓口で入手 ・第1表 ・修正に関連する様式(財産明細を直すための第11表など) |
|---|---|
| 修正の理由を証明する書類 | 新たに見つかった預金通帳のコピー、残高証明書、土地の再評価計算書、新たに見つかった贈与契約書など |
| 当初の申告書の控え | 最初に税務署へ提出した相続税申告書のコピー ※修正前の数字を把握するため、提出は不要 |
| 納付書 | 追加の税金を銀行等で支払うための用紙。税務署や金融機関の窓口であらかじめ入手しておく ※キャッシュレス納付の場合は不要 |
| 本人確認書類 | 修正申告をする相続人のマイナンバーカードのコピーなど |
4-2.修正申告書を作成する
2つ目のステップは修正申告書を作成することです。
第一表と、修正に関連する様式を作成しましょう。下記で第一表について解説します。
※令和令和6年1月分以降用です。

①にG01欄に「1」と記入する

修正申告書であることがわかるよう、G01欄に「1」と記入してください。
②「この申告が修正申告である場合」に記入する

すでに行った申告書の数字と、今回修正した後の正しい数字を記入します。
それぞれの財産の金額を正しく書き直した上で、最終的に「追加でいくらの税金を支払う必要があるか」という差額の税額を計算します。
③E09欄「この申告が修正申告である場合の異動の内容等」に記入する

E09欄に、修正についてその金額や異動の内容等を記入します。
記入欄が小さいため、異動の内容等が書ききれない場合は、「別紙参照」と記載し、別の紙に書いて添付しても問題ありません。
4-3.足りない分の税金と延滞税などの附帯税を納付する
3つ目のステップは、足りない分の税金と延滞税などの附帯税を納付することです。
修正申告では「修正申告書を税務署に出す日」が「追加となる税金」の「納期限」となります。ですから修正申告書の提出する日までに、足りなかった分の相続税と延滞税などの附帯税を支払う必要があります。
支払いの方法は、大きく分けて「金融機関などの窓口で現金で支払う方法」と「オンライン決済(キャッシュレス納付)で支払う方法」の2種類です。オンライン決済を利用する場合は紙の納付書を準備する必要はありませんが、窓口で支払う場合は専用の納付書が必要です。
4-4.修正申告書を提出する
最後のステップは、修正申告書を提出することです。
完成した修正申告書と、修正の理由を証明する書類(残高証明書など)を合わせて税務署へ提出します。
提出先は、申告書と同様、ご自身の最寄りの税務署ではなく、「被相続人(亡くなった方)の死亡時の住所地」を管轄する税務署となりますので間違えないよう注意してください。
提出の方法には、税務署の窓口へ直接持参する方法、郵送する方法、または「e-Tax(電子申告)」を使ってパソコンからデータで送信する方法があります。
5.相続税の修正申告に関するよくある質問(Q&A)
相続税の修正申告に関するよくある質問に回答します。
Q1. 相続税申告の時効を過ぎたら修正申告をしなくてもよいですか?
A. はい、時効を過ぎた場合、修正申告をする必要はなくなります。
相続税の時効は、原則として申告期限の翌日から5年ですが、財産をわざと隠していたような悪質なケースでは7年に延長されます。
税務署は独自のネットワークや資産調査によって、過去の資金の動きを正確に把握しています。「時効を待って逃げ切る」ということは極めて困難です。そのため、時効前に申告漏れや間違いに気づいたら、1日でも早く自発的に修正申告を行いましょう。
Q2. 相続税の修正申告は、税額が増える相続人だけが行えばよいですか?
A.修正申告の手続きは「税額が増える人」が行えば問題ありません。しかし、修正申告によって税金総額が変わることで、相続財産に修正がない他の相続人も納税する税金が発生するケースもありますので注意が必要です。
相続税は「遺産全体の総額」が大きくなるほど、全体の税率が上がっていく仕組み(累進税率)になっています。そのため、修正によって、遺産の総額が増えることで、税額が増えてしまった場合、新しい財産をもらっていない、あるいは、相続財産に修正がない他の相続人の税金まで一緒に高くなることがあります。この場合は、全員が修正申告をする必要があります。
このように、誰の税金が増えるかの判断するには、まず修正申告書を作成してみることが大切です。修正申告による親族間でのトラブルになることがないよう、新しい財産が見つかったら、相続人全員とすみやかに修正申告することを共有することをおすすめします。また、試算等に不安がある場合には、相続専門税理士に依頼しましょう。
Q3.税務調査で指摘されてしまった場合、修正申告をする必要はありますか?
A.指摘内容に納得しているなら速やかに修正申告をしましょう。
指摘内容に納得しているのであれば、速やかに修正申告を行うのが基本です。
万が一、指摘内容に納得がいかない場合には、税務署は修正申告の内容で更正処分を行います。更正については「不服申し立て」を行い修正内容を争う事も可能です。その場合には、速やかに税理士に相談することをお勧めします。
6.まとめ
本記事では、相続税の修正申告が必要になるケースや正しい手続きの方法、ペナルティの仕組みについて解説してきました。
相続税申告が終わった後に、間違いや申告していない財産が見つかった場合は、正しい内容に直して修正申告をしましょう。
少しでも計算や手続きに不安がある場合は、早めに相続専門の税理士へ相談することをおすすめします。
本記事が、相続税の修正申告について疑問をお持ちの皆様の一助となれば幸いです。
