遺言書が有効か無効か判定できる14のチェック項目

父が遺した遺言書に「全財産を息子に相続させる」と書いてあった。
娘の私には何も遺してくれないの?納得がいかない!

夫が遺した遺言書に「全財産を愛人に相続させる」と書いてあった。
私たち家族はどうなるの?絶対に納得がいかない!

この記事をご覧の方は、このようなお悩みを抱えているのではないでしょうか。
親や配偶者の死後、想定していた内容と異なる遺言書がみつかり、戸惑っていらっしゃることと思います。

そして、
「遺言書の通りに相続しなければならないのか?」
「遺言書に自分の名前がなければ、一切の財産を受け取れないのか?」
と疑問に思っていらっしゃることと思います。

そんな時は、まず、その遺言書が有効か無効か調べましょう

この記事には遺言書が有効か無効かを判断できる14のチェック項目が記載されています。
みなさんのお手元にある遺言書に当てはまる項目があるかどうかチェックしてみてください。
1つでも当てはまれば、その遺言書は無効となります。

また、チェックの結果、有効であった場合は3章「有効であった遺言書の内容に納得できない場合に取れる対応策」に記載した対応策をとることで、遺言書と異なる内容で相続をすることができる可能性もあります。


1.遺言書には無効な遺言書もある

遺言書には無効な遺言書もあります。

皆さんの手元にある遺言書が、必ず有効であるというわけではありません。

署名がない場合や認知能力が無い方が書いた遺言書であった場合などは、その遺言書は無効となります。


2.遺言書が有効か無効かを判断できる14のチェック項目

皆さんの手元にある遺言書は有効でしょうか。それとも無効でしょうか。

ご自身で判定できるように、遺言書が有効か無効かを判断できる14のチェックリストを作成しました。

以下チェックリストを参考に、皆さんのお手元の遺言書が有効か無効かを判断してみてください。
1つでもチェックがつけばその遺言書は無効になる可能性が高いです。

遺言書の形式には、大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言の2種があり、それぞれ無効になるパターンが異なります。お手元にある遺言書の形式がどちらか確認の上でチェックを進めてください。

自筆証書遺言公正証書遺言チェック項目
1遺言書全文が自書ではない
2日付がない・具体的な日付が特定できない
3遺言者の署名がない
4署名の後ろに印が押されていない
5財産目録に署名と印が無い
6遺言書の修正が正しくされていない
7共同で作成されている
815歳未満の人が作成した
9証人になれない人が立会人をしていた
10内容が不明瞭である
11認知症など遺言能力がない人が作成した
12内容が公序良俗に違反している
13詐欺・脅迫により遺言が作成された
14新しい遺言があり、内容が矛盾している

2-1 遺言書全文が自書ではない場合

全文が自筆で書かない場合、その遺言書は無効となります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

自筆証書遺言では、相続財産の目録を除き日付から名前に至るまですべてを自筆で書く必要があります。

 

2-2 日付がない・具体的な日付が特定できない場合

日付がない・具体的な日付が特定できない場合、その遺言書は無効となります。
また、西暦・和暦は問いませんが、年まで書く必要があるのでご注意ください。

自筆証書遺言
公正証書遺言

遺言書の制作日は令和5年3月1日のように、書かれた日付がはっきりとわかるようになっていなければなりません。

  • 3月吉日
  • 3月中旬
  • 令和5年3月

というものは無効になります。

2-3 遺言書の署名がない場合

署名が書かれていない場合、その遺言書は無効となります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

遺言書には、必ず署名が必要な箇所があります。
その箇所に署名がなければ無効となります。

2-4 署名の後ろに印が押されていない場合

署名の後ろに印が押されていない場合、その遺言書は無効になります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

遺言書には署名の後ろには必ず押印をしなければなりません。
遺言書に印がなかった場合、その遺言書は無効になります。

2-5 財産目録に署名と印が無い場合

財産目録に署名と印が無い場合は、その遺言書は無効になります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

財産目録は遺言書の中で唯一自筆でなくても有効になる部分です。
ただし、財産目録のページにはすべてに署名と押印が必要になります。
裏面にも目録の記載がある場合、表面だけでなく、裏面にも署名と押印が必要です。

2-6 遺言書の修正が正しくされていない場合

遺言書の修正が正しくされていない場合、その遺言書は無効になります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

遺言書の正しい修正方法は以下のおとりです。

  1. 訂正する文字を二重線で消し、訂正後の文字を記入する。
  2. 訂正した箇所に、遺言書で使用したものと同じ印鑑で押印する。
  3. 加筆箇所の欄外や遺言書の末尾に、〇字削除、〇字加入と記入する。
  4. 3.の下に遺言者が署名をする。

修正テープで削除したり、二重線で消しているだけの遺言書は無効となります。

2-7 共同で作成されている場合

共同で作成されている場合、その遺言書は無効となります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

遺言書は1通につき1名で作成しなければなりません。
夫婦であっても連盟で遺言書を書くことはできないのでご注意ください。

■民法第975条の条文はこちら

2-8 15歳未満の人が作成した場合

15歳未満の人が作成した場合、その遺言書は無効になります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

15歳未満という年齢は法律で定められています。

■民法第961条の詳細はこちら

2-9 証人になれない人が立会人をしていた場合

証人になれない人が立会人をしていた場合、その遺言書は無効になります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

公正証書遺言を作成する際、証人と呼ばれる立会人が必要となります。
この立会人になれない人は民法974条で以下のように定められています。

  •  18歳未満の未成年者
  •  法定相続人及び、受遺者、これらの配偶者と直系血族
  •  公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人

■民法第974条の詳細はこちら

2-10 内容が不明瞭である場合

内容が不明瞭である場合、その遺言書は無効になります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

遺言書で書かれる内容は誰が見てもはっきりわかるように書かなければなりません。

例えば「今私が住んでる土地を息子に譲る」と遺言書に書かれている場合、書いた方が住んでる土地がどこの土地なのかはっきりわかりません。

また、息子が2人いた場合、どちらの息子なのかもわかりません。

そのため、遺言書に記載する財産は事細かに書く必要があります。

2-11 認知症など遺言能力がない人が作成した場合

認知症など遺言能力がない人が作成した場合、その遺言書は無効になります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

遺言書の作成には意思能力が必要になります。
そのため、遺言書の制作者には「意思能力」がある必要があります。

しかし、認知症を患ってしまうと適切な判断が出来ない状態になるので、認知症の方が作成した遺言書は無効になる可能性が高いと言えます。 

ただし、認知症の度合いや、遺言の内容の複雑さによっては、認知症の方が書いた遺言書であっても有効になる場合もあります。
認知症の方が書いたすべての遺言書が無効というわけではありませんので、ご注意ください。

2-12 内容が公序良俗に違反している場合

内容が公序良俗に違反している場合、その遺言書は無効になります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

例えば、不倫関係にある人へ相続させるといった内容の遺言書は無効となる可能性が高いです。

しかし、「不倫関係を維持する目的の贈与」「遺言の内容が相続人の生活基盤にどの程度影響を与えるか」などいくつかの事情を考慮され、無効にならない場合もあります。
また、配偶者と長年別居状態であり、不倫相手が内縁関係のような場合も無効にならない可能性があります。
ご注意ください。

2-13 詐欺・脅迫により作成された場合

詐欺や脅迫により作成された場合、その遺言書は無効となります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

遺言書の制作者が生前のうちに「詐欺や脅迫により遺言書を作成した」となれば、その遺言書は無効になると共に、その詐欺や脅迫を行った人物は相続権がはく奪されます。

2-14 最新の遺言書があり、内容が矛盾している場合

最新の遺言書があり内容が矛盾している場合、古い遺言書は無効になります。

自筆証書遺言
公正証書遺言

遺言書は基本的に一番最新の遺言書が有効となります。
例えば、1つ前の遺言書では妻に現金を相続させると書いてあっても、最新の遺言書では妻に土地と家を相続させると記載していた場合、最新の遺言書が有効となり、1つ前の遺言書は無効となります。


3.有効であった遺言書の内容に納得できない場合に取れる対応策

有効であった遺言書の内容に納得できない場合に取れる対応策を説明します。

2章の14のチェック項目に一つも当てはまらず、遺言書は有効であった。
しかし、どうしても内容に納得できない場合の対応策です。

3-1 遺産分割協議で話し合い、相続人全員が合意する遺産分割方法を作る

1つ目の対応策は、遺産分割協議で話し合い、相続人全員が納得する遺産分割方法を決めることです。

相続人全員で合意・納得すれば遺言書通りに相続しないということも可能です。

3-2 家庭裁判所に遺留分侵害請求をする

2つ目の対応策は、家庭裁判所に遺留分侵害請求をすることです。

この対応策はすべてのケースに有効であるわけではありません。
遺された遺言書が遺留分を侵害していた場合にのみ有効な対応策です。

例えば、配偶者と子どものいる人が、「愛人にすべての財産を相続させる」という遺言書を遺して亡くなったとします。この場合、配偶者と子供は泣き寝入りするしかないかというとそうではありません。

家庭裁判所に遺留分侵害請求をすることで、一定割合、遺産を相続することが可能になります。
なお、妻の遺留分は遺産総額の1/4、子供の遺留分も同じく遺産総額の1/4となります。

■遺留分の詳細はこちら


まとめ

今回は2章で遺言書が有効か無効かを判断できる14のチェック項目を記載しました。
納得のいかない遺言書が見つかった時は、まず、その遺言書が有効か無効かチェックしてみてください。

そして、有効だった場合は、3章でご紹介した対応策を検討してください。
みなさんの相続手続きが無事に終わることを、陰ながらお祈り申し上げます。

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