遺言執行者とは何をする人?選任すべき5つのケースを紹介

「遺言執行者とは、何をする人なのだろうか?」
「私は遺言執行者を選任した方がいいのか?」

この記事をご覧の方は、こんな疑問をお持ちではないでしょうか。

遺言書の作成を検討していたいだている中で、遺言執行者という言葉に出会い、検索され、この記事をご覧いただいていることと思います。

この記事は相続専門税理士の監修のもと、遺言執行者について網羅的に解説しています。
この記事を読んでいただければ、みなさんの遺言執行者に関する疑問は解消され、遺言執行者の選任が必要な方はすぐに行動に移すことができます。

ご自身の想いを実現できる遺言を作成するための一助に、この記事がなれば幸いです。

【この記事を読むと分かること】

  • 遺言執行者とは何をする人か理解することができます
  • 自分が遺言執行者を選任すべきかどうか分かります
  • 遺言執行者の選任方法が分かります
  • 誰を遺言執行者に選任すればよいか分かります
  • 遺言執行者に支払うべき報酬の額が分かります

1.遺言執行者とは

遺言執行者とは、「遺言の内容を実現させるため、権利と義務を負う人」です。

民法では遺言執行者について、以下のように記載されています。

民法第1012条(遺言執行者の権利義務)

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

遺言が開封された時点で、その遺言を作成した方(遺言者)は亡くなっています。
そのため、遺言の内容がきちんと実現するように尽力することが、遺言者にはできません。

「自分が書いた遺言の通りに、遺された家族がしているか」遺言者は心配ですよね。

この不安を解消するのが、遺言執行者という制度です。
遺言者が自分が遺言で示したことが実現するように、生前に遺言執行者を選任しておき、死後に備えるのです。


2.遺言執行者が必ずやらなければいけないこと

遺言執行者には相続人全員への通知義務があります。
これは、遺言執行者が必ずやらなければならないことです。

この通知義務は2019年の民法改正で追加されました。
民法が改正される前は、遺言執行者が相続人への通知を行わないまま、相続手続きを進めることが可能でした。

そのため、遺言執行者が相続人への通知を行わないまま相続手続きを進めてしまい、相続人は遺言の内容や財産状況を知ることができませんでした。
このため遺言執行者と相続人の間でトラブルになる…というケースが散見されていました。

このようなトラブルを防ぐために、2019年に民法が改正され、遺言執行者に通知義務ができました。

通知する相手相続人全員
通知する時期遺言執行者に就任したとき
相続人から請求がかあったとき
遺言執行が終了したとき
通知内容遺言執行者に就任したことの報告
遺言内容の報告
遺言執行者として行った職務内容の報告
遺言執行者として行った職務結果の報告

万が一、遺言執行者が通知義務を果たさず、相続人からの請求があっても無視をして業務を進めた場合は、相続人は遺言執行者を解任することができる可能性があります。


2.遺言執行者ができる15のこと

遺言執行者には「遺言の内容を実現するために、相続財産の管理、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権限」があります。

遺言執行者はこの権限に基づき、独立した立場で、たとえ相続人と利益が相反していたとしても、遺言内容を執行します。

また、よく勘違いされる方がいらっしゃるのですが、遺言執行者は管理・監督をするだけでなく、行為そのものができます。
例えば預貯金の払い戻しであれば、銀行に行って払い戻しの手続きそのものをすることが遺言執行者にはできるのです。

  • 相続財産の管理
  • 遺言書の検認
  • 相続人調査
  • 相続財産調査
  • 財産目録の作成
  • 貸金庫の解錠、解約、取り出し
  • 預貯金の払い戻し・分配
  • 不動産の登記申請手続き
  • 株式の名義変更
  • 自動車の名義変更
  • 保険金受取人の変更
  • 寄付
  • 遺贈
  • 非嫡出子の認知
  • 相続の廃除やその取り消し

3.遺言執行者の選任が必要なケース

遺言執行者は全ての相続に必要というわけではありません。
遺言執行者の選任が必要なケースを紹介します。

【選任必須】と記載した2つは遺言執行者にしかできないことです。
相続人は行う権利が認められていないので、必ず遺言執行者を選任しましょう。

一方で、【選任おすすめ】と記載したものは遺言執行者を選任しなくても、相続手続きを進めることができます。しかし、選任しておいた方が相続手続きを滞りなく進めることができるので、選任することをおすすめします。

選任必須非嫡出子の認知を遺言で行う場合
選任必須相続廃除を遺言で行う場合
選任をおすすめ相続人だけで相続手続きを円滑に行うことが難しい場合
 例)認知症の方がいる
   非協力的な方がいる
   忙しい人がいるなど

■遺言で行う非嫡出子の認についての詳細はこちら
 非嫡出子の認知
■遺言で行う相続廃除についての詳細はこちら
 相続人の廃除


4.遺言執行者の選任方法

遺言執行者を選任する方法は以下の2つです。

  • 遺言者本人が遺言で指定する方法
  • 遺言者の死後、家庭裁判所へ申し立てて選任する方法

4-1.遺言者本人が遺言で指定する方法

遺言者本人が遺言で指定するには、遺言書に以下の3点を記載します。

  • 遺言執行者になってほしい人の住所
  • 遺言執行者になってほしい人の名前
  • その人を「遺言執行者に選任する」という意思

4-2.遺言書の死後、家庭裁判所へ申し立てて選任する方法

遺言によって遺言を執行する人が指定されていないとき、または遺言執行者がなくなったときは、家庭裁判所に申し立てることにより、遺言執行者を選任することができます。

申立てができる人相続人
遺言者の債権者
遺贈を受けた者 など
申立て先遺言者の最後の住所地の家庭裁判所
申立てに必要な費用遺言書1通につき収入印紙800円分
連絡用の郵便切手
申立てに必要な書類申立書
標準的な申立添付書類
   遺言者の死亡の記載がある戸籍
 遺言執行者候補者の住民票または戸籍附票
 遺言書の写し又は遺言書の検認調書謄本の写し
 利害関係を証する資料

■詳細はこちら
 裁判所HP 遺言執行者の選任


5.遺言執行者に選任すべき人

遺言執行者は、第三者的な立場である専門家を選任することをおすすめします。
第三者的な立場である専門家とは、具体的に以下の人々のことを指します。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士
  • 税理士
  • 信託銀行

遺言執行者には、未成年者や破産者でない限り、誰でも選任することができます。
なので、相続人を遺言執行者に選任することもできます。

しかし、相続人の中から指定すると、他の相続人が反発する可能性が高くなるので、弁護士や司法書士などの第三者的な立場の専門家を選任することをおすすめします。


6.遺言執行者の報酬

専門家に遺言執行者を依頼した場合、報酬の相場は「遺産総額の1~3%」ほどです。

遺言執行者の報酬は法的に基準が定められているわけではありませんが、相場は「遺産総額の1~3%」ほどとなります。
各専門家によって、報酬にばらつきがあるので、契約を結ぶ前にしっかりと確認するようにしましょう。

また、報酬を支払うタイミングは、遺言者の死後、遺言者から引き継いだ遺産の中から、相続人が支払うのが一般的です。
しかし、いくら支払うかは、遺言者の生前、専門家に遺言執行者を依頼し、契約を結んだ時に決定するのが一般的です。


7.さいごに

みなさんの遺言執行者に関する疑問は解消されましたでしょうか。

また、遺言執行者の選任が必要と感じた方は、遺言執行者の選任に向けて、動き出すイメージを持てたでしょうか。

辻・本郷 税理士法人においても、遺言をはじめとした相続の生前対策のご相談を受け付けております。
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