法定相続人とは?範囲や順位、迷いやすい事例を解説

「私が亡くなった時、誰が法定相続人になるのだろう?」
「祖父が亡くなった。私は法定相続人なのだろうか?」
本記事をご覧になられている方は、このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。

本記事では

  • 法定相続人の順位
  • 法定相続人の範囲
  • 法定相続人の確認方法

を、図解を用いながら分かりやすく解説しています。

また、「代襲相続が起きているケース」「養子がいるケース」など、誰が法定相続人か迷いやすい10の事例もご紹介しています。

    本記事をご覧いただければ、法定相続人についての知識が深まり、
    「ご自身が亡くなった場合の法定相続人は誰になるのか。」
    「今起こっている相続において、自分は法定相続人なのか。」わかるようになるでしょう。

    相続対策中の方、相続手続き中の方の一助となれば幸いです。


    1.法定相続人は財産を相続する権利のある人

    法定相続人とは、被相続人の財産を相続できる権利のある人です。

    法定相続人は民法第886条~第895条で定められています。
    これらの民法の条文を組み合わせて、「誰が法定相続人になるのか」が分かり、それぞれの法定相続分を知ることができます。

    ※注意
    相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされ、法定相続人には含まれません。
    また、内縁関係の人(いわゆる愛人など)も、法定相続人に含まれません。

    ■民法の条文を確認したい場合はe-GOV 法令検索をご覧ください。

    1-1.法定相続人の順位

    法定相続人には、被相続人との関係性によって優先順位が設けられています。

    配偶者は常に法定相続人となり、配偶者以外の人は、①子供②直系尊属③兄弟姉妹の順で配偶者と一緒に法定相続人になります。

    第一順位である子供がいれば、「配偶者+子供」、第一順位である子供がいなく、第二順位である直系尊属がいれば「配偶者+直系尊属」といったようになります。

    ■詳細は相続人の順位を解説!チャートとシミュレーションで相続人が分かるをご覧ください。

    1-2.法定相続人の範囲

    法定相続人となれる人には範囲があります。
    国税庁HP No.4132 相続人の範囲と法定相続分)

    法定相続人の順位と範囲

    1-3.法定相続人の確認方法

    法定相続人の確認方法を解説します。

    法定相続人は被相続人の出生から死亡するまでの連続した戸籍謄本を確認することで分かります。

    実際に税務署が作成した書類である「相続税の申告のしかた」においても、相続税の申告書に添付して提出いただく書類に「 被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本」が記載されています。

    元配偶者との間の子供、愛人との間に生まれ認知された子供など、複雑なケースも戸籍謄本を見れば、誰が法定相続人となるのか確認することができます。

    ■戸籍謄本についての詳細はこちら
    相続における戸籍謄本の収集方法

    1-4.(例外)法定相続人であっても、財産を相続できない場合

    法定相続人であっても、財産を相続できない場合がありますのでご紹介させていただきます。

    法定相続人とは民法で定められた被相続人の財産を相続できる権利のある人です。
    しかし、法定相続人であっても、以下の2つの場合は財産を相続できません。

    • ケース1:遺言書に「法定相続人以外の人にすべての財産を遺す」と記されていた場合
    • ケース2:相続欠格の場合
    • ケース3:相続廃除の場合

    【ケース1】遺言書に「法定相続人以外の人にすべての財産を遺す」と記されていた場合

    遺言書に「法定相続人以外の人にすべての財産を遺す」と記されていた場合、法定相続人であっても財産を相続することはできません。

    なぜなら、遺言書に記載された財産の分割方法は法定相続よりも優先されるからです。
    民法第902条 遺言による相続分の指定

    しかし、遺言書であっても、法定相続人の遺留分を侵害することはできません。

    たとえば、配偶者も子供もいる被相続人の遺言書に、「すべての財産を愛人に渡す」と記されていたとします。
    この場合、配偶者や子供がこの分け方に納得しないのであれば、必ずしも全額を愛人にわたす必要はありません。

    法定相続人である息子は遺留分を請求することができます。

    ■遺留分についての詳細は遺産相続の遺留分とは|法定相続人に保証されている最低限の相続分をご覧ください。

    【ケース2】相続欠格の場合

    相続欠格の場合、法定相続人であっても財産を相続することはできません。

    相続欠格とは民法891条の相続欠格事由に当てはまる場合に、相続権を失わせる制度のことです。
    言わば、相続の秩序を侵害するような「重大な非行」を行った相続人に対して、民法という法律で相続権を奪う制裁措置です。

    詳細は相続欠格とは|相続欠格となる5つの事由や相続廃除との違いを解説をご覧ください。

    【ケース3】相続廃除の場合

    相続廃除の場合、法定相続人であっても財産を相続することはできません。

    相続廃除とは、相続する予定の人を相続から外すように申し立てできる制度のことです。
    これから財産を残そうとする人(被相続人)が、自分の財産を相続する予定の人(推定相続人)に何かしらの理由で相続させたくない場合に、家庭裁判所へその旨を申し立てすることができます。

    家庭裁判所の審判により認められると、申し立てを受けた推定相続人は財産を相続できなくなります。

    詳細は相続廃除とは?制度の内容から廃除できる要件、手続きの方法まで解説をご覧ください。


    2.法定相続人が誰か迷いやすい10のケース

    法定相続人が誰か迷うことが多い10のケースをご紹介いたします。

    法定相続人の順位・範囲の基本的な考え方は1章でご説明させていただきましたが、代襲相続がおきているケースや養子がいるケースなど、迷いやすいケースがありますので、図解を交えながらご説明させていただきます。

    ケース1子供が既に亡くなっていて、孫がいるケース(代襲相続)
    ケース2兄弟姉妹が亡くなっていて、甥姪がいるケース
    ケース3離婚した配偶者との間に子供がいるケース
    ケース4内縁の妻との間に子供がいるケース
    ケース5養子がいるケース
    ケース6相続発生時に子供が胎児のケース
    ケース7非嫡出子を遺言書で認知したケース
    ケース8相続放棄した人がいるケース
    ケース9相続人が行方不明のケース
    ケース10法定相続人がいないケース

    2-1.【ケース1】子供が既に亡くなっていて、孫がいるケース(代襲相続)

    子供が既に亡くなっていて、孫がいるケースです。

    この場合、孫が代襲相続人として、法定相続人になります。

    このケースの法定相続人は、以下の3名になります。

    • 配偶者
    • 子供①
    • 孫(代襲相続人)

    ■代襲相続人についての詳しい説明は【図解】代襲相続人とは?なる人・割合・遺産分割前に知っておきたいことをご覧ください。

    2-2.【ケース2】兄弟姉妹が亡くなっていて、甥姪がいるケース

    兄弟姉妹が亡くなっていて、甥姪がいるケースです。

    この場合、甥姪は代襲相続人として、法定相続人になります。

    このケースの法定相続人は、以下の2名になります。

    • 甥(代襲相続人)

    2-3.【ケース3】離婚した配偶者との間に子供がいるケース

    離婚した配偶者との間に子供がいるケースです。
    再婚はしておらず、亡くなった日時点では配偶者はいないものとします。

    この場合、離婚した配偶者は法定相続人ではありませんが、子供は法定相続人です。

    このケースの法定相続人は、以下の1名になります。

    • 子供

    2-4.【ケース4】内縁の妻との間に子供がいるケース

    内縁の妻との間に子供がいるケースです。
    法律上の夫婦である配偶者はいないものとします。

    この場合、内縁の妻は法定相続人ではありませんが、子供は認知されていれば法定相続人となります。

    このケースの法定相続人は、以下の1名になります。

    子供(認知されていれば)

    2-5.【ケース5】養子がいるケース

    養子がいるケースです。
    養子は実子と同じように、第一順位の法定相続人になります。

    このケースの法定相続人は、以下の3名になります。

    • 配偶者
    • 実子
    • 養子

    ※法定相続人の数に含める被相続人の養子の数

    以下の4つの計算をするときの法定相続人の数に含める養子の数は、一定数に制限されています。
    国税庁HP No.4170 相続人の中に養子がいるとき

    • 相続税の基礎控除額
    • 生命保険金の非課税限度額
    • 死亡退職金の非課税限度額
    • 相続税の総額の計算
    • 被相続人に実の子供がいる場合:1人まで
    • 被相続人に実の子供がいない場合:2人まで

    2-6.【ケース6】相続発生時に子供が胎児のケース

    相続発生時に子供が胎児のケースです。

    相続において胎児は既に生まれたものと考えます。
    そのため、胎児は出生後に法定相続人となり、遺産を相続することができます。(民法第886条

    このケースの法定相続人は、以下の4名になります。

    • 配偶者
    • 子供①
    • 子供②
    • 胎児

    2-7.【ケース7】非嫡出子を遺言書で認知したケース

    非嫡出子を遺言書で認知したケースです。

    非嫡出子とは「法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子供」です。
    被相続人が生前に非嫡出子を認知していれば、「2-4.内縁の妻との間に子供がいるケース」で説明した通り法定相続人になります。

    しかし、ここで考えるのは、もう少し複雑なケースです。
    被相続人が生前内縁の妻との間にできた子供(非嫡出子)を認知しないまま亡くなったが、遺言書を開封してみると、その子供を認知すると記載されていたケースです。

    この場合、遺言書の効力で非嫡出子は認知され、嫡出子となり、実子と同じように法定相続人になります。

    このケースの法定相続人は、以下の2人になります。

    • 嫡出子
    • 遺言書で認知された非嫡出子

    ■非嫡出子についての詳細は父親が亡くなった場合、非嫡出子に相続権はある?をご覧ください。

    2-8.【ケース8】相続放棄した人がいるケース

    相続放棄した人がいるケースです。

    相続放棄した人はもちろん法定相続人ではありません。はじめから相続人ではなかったものとみなされます。

    また、相続放棄した人に子や孫がいた場合、その子供や孫は代襲相続人として法定相続人になることはできないのでご注意ください。

     

    このケースの法定相続人は、以下の3名になります。

    • 配偶者
    • 子供①

    2-9.【ケース9】相続人が行方不明のケース

    相続人が行方不明のケースです。

    行方不明であっても基本的に法定相続人となります。(民法 第30条

    遺産分割協議は、行方不明の法定相続人を含めて相続人全員で行う必要があります。
    「かなり前に家を出てしまい音信不通状態だから、気にしなくても良いだろう。」と失踪した相続人を無視することはできないので注意が必要です。

    ただし、家庭裁判所が失踪宣告をした場合、法律上では死亡しているものとみなされ、法定相続人ではなくなり、遺産分割協議にも参加する必要がなくなります。

    この場合の法定相続人は、以下の3人です。

    配偶者
    子供①
    子供②

    2-10.【ケース10】法定相続人がいないケース(相続人不存在)

    法定相続人がいないケース(相続人不存在)です。
    民法第951条~第959条

    被相続人に法定相続人がいない場合の財産の行方は、以下の3パターンがあります。

    • 特別縁故者に財産分与される
    • 遺言書がある場合は、遺言で指定された人に渡る
    • 国庫に帰属する

    ■詳細は相続人不存在とは?手続きから財産の行方まで丁寧に解説をご覧ください。


    3.おわりに

    法定相続人についての知識が深まり、「ご自身が亡くなった場合の法定相続人は誰になるのか。」「今起こっている相続において、自分は法定相続人なのか。」お分かりになりましたでしょうか。

    本記事が相続対策中の方、相続手続き中の方の一助となれば幸いです。

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