父が亡くなり母が相続|税理士が伝える遺産分割のポイント

父が亡くなり、相続が発生した…。
父の遺産は、母のこれからの生活や相続税のことを考えて、母がすべての遺産を相続することにしようと思っているが何か問題はないだろうか…?

あなたはこのような悩みをお持ちでいらっしゃいませんか。

父の遺産を母がすべて相続することは、子供たちが納得していれば法律上は何の問題もありません。
しかし、相続税という税金にフォーカスし、「家族の資産を守る」という観点で考えると、この遺産分割方法は必ずしも得策とは言えないのです。

本記事は相続専門税理士監修のもと、「父の遺産を母がすべて相続すること」の相続税法上の問題点と、遺産分割を考える際のポイントを解説します。


1.父の遺産を母がすべて相続することに、法律上問題はない

父の遺産を母がすべて相続することに、法律上問題はありません。

父が遺した遺言書に「母にすべての遺産を相続させる」と書いてあったとしても、また、母と子供が遺産分割協議を行い母にすべての遺産を相続させることを決めたとしても、子供が納得していれば、法律上何の問題もありません。

実際に「父の遺産は母がすべて相続すべきだ」と考える家庭は多いです。

辻・本郷 税理士法人にご相談にいらっしゃるお客様には、ご家族で既に遺産分割について話し合い、「母がすべて相続することにしてほしい」という想いを持ってご来所いただく方が多くいらっしゃいます。


2.なぜ、多くの家庭は「父の遺産は母がすべて相続するもの」と考えるのか

では、なぜ、多くの家庭は「父の遺産は母がすべて相続するもの」と考えるのでしょうか。
理由は以下の2つです。

  • 母の今後の生活を心配して、手元に資産を置いておきたいと考えている
  • 母がすべての遺産を相続すれば、相続税が安くなると考えている

「自分の老後の資金は、自分で何とかしたい。子供たちに迷惑をかけたくない。」という想いから、手元になるべく多くの資産を置いておきたいと考える配偶者の方は多くいらっしゃいます。
これは母の想いであり、また「手元にいくらの資金があれば大丈夫」といった基準のようなものは、母が今後何年生きるか・病気になるかどうか等の体調面、生活スタイルによっても大きく変わってくるので、私ども税理士法人がとやかく言えることではありません。

しかし、理由の2つ目である「相続税を安くするために母にすべての遺産を相続させる」というのは、税理士法人としての目線から考えた場合、必ずしも正解とは言えません。


3.母がすべての遺産を相続することで、相続税が安くなるとは限らない

母がすべての遺産を相続することで、相続税が安くなるとは限りません。

確かに相続税には「配偶者の税額軽減」という税負担を軽減できる制度があり、父の遺産が1億6,000万円までであれば、母が遺産を相続すると相続税はかかりません。

配偶者の税額軽減は相続税に関する制度の中でも一般の方の認知度が高い制度であり、この制度を理由に、「母がすべての遺産を相続すれば相続税が安くなる」とお考えになる家庭は多いです。

しかし、相続税の配偶者控除を適用して父の遺産を母がすべて相続することが、相続税の一番安くなる遺産分割方法であるとは限りません。

■配偶者の税額軽減に関する詳細はこちら
国税庁HP 配偶者の税額軽減

3-1.配偶者の税額軽減を最大限活用すると、二次相続の相続税が高くなる可能性が高い

配偶者の税額軽減を最大限活用すると、二次相続(母が亡くなった時の相続)の相続税が高くなる可能性が高まります。

確かに、配偶者の税額軽減を活用し、母が多くの遺産を相続すればするほど、今回の父の相続(一次相続)に対する相続税は安くなります。
しかし、以下の理由により、二次相続の相続税が高くなる可能性が高いのです。

  • 母がもともと所有していた財産も合算される
  • 父の相続(一次相続)に比べて法定相続人が1人減り、相続税の基礎控除額が下がる
  • 母の相続(二次相続)には相続税の配偶者控除は使えない

3-2.シミュレーション

実際に、以下の家族を例に父の相続(一次相続)と母の相続(二次相続)の相続税額を計算してみましょう。

【前提条件】

・一次相続は父の相続・二次相続は母の相続
・一次相続の相続人:母・長男・長女の3人
・父の財産:6,000万円
・母の財産:3,000万円

この場合の相続税額は以下の通りです。

父の相続時の相続税母の相続時の相続税相続税の合計額
母がすべて相続0円620万円620万円
母1/2
長男長女1/4ずつ
60万円180万円240万円
母1/3
長男長女1/3ずつ
80万円80万円160万円

父の相続(一次相続)と母の相続(二次相続)の合計額で考えると、配偶者の税額軽減を最大限活用し、父の遺産を母がすべて相続した場合の相続税額が620万円で、一番高い結果となりました。

母・長男・長女で1/3ずつに分けた場合に比べて、460万円も多くの相続税を納める必要があります。


4.父の相続と母の相続をセットで考えることが大切

相続を「親から子供へ財産を引き継ぐこと」と考えた場合、相続税は「父の相続(一次相続)と母の相続(二次相続)」のセットで考えることが大切です。

上記のシミュレーションを見ても明らかな通り、目先の一次相続だけを考えて、父の遺産をすべて母が相続することは、最適な遺産分割方法とは言えません。

だからと言って、「母が〇割、子供が〇割で分けると、一次相続と二次相続の相続税の合計価額が最も安くなる」といった黄金比率も存在しません。
母の財産の状況などにより最適な遺産分割方法は異なってきます。また、遺産分割を考える際は、節税だけに拘るのではなく、家族の想いや、家族それぞれのライフスタイルなどを考慮する必要もあります。

遺産分割方法について悩まれている方は、一度、相続専門税理士へ相談することをおすすめします。
相続専門税理士は家族の想いや資産の状況などを十分にヒアリングした上で、一次相続・二次相続それぞれの相続税額のシミュレーションを出してくれます。

家族の資産を守るために、活用してみてはいかがでしょうか。


5.まとめ

相続専門税理士監修のもと、「父の遺産を母がすべて相続すること」の問題点と、遺産分割を考える際のポイントを解説してきました。

最後に本記事のポイントをもう一度振り返ります。

  • 父の遺産を母が相続することは、子供が納得していれば法律上問題はない
  • 多くの家庭は2つの理由から「父の遺産は母がすべて相続する」と考えている
    【理由1】母が自分の今後の生活を心配して、手元に資産を置いておきたいと考えている
    【理由2】母がすべての遺産を相続すれば相続税が安くなる
  • 「配偶者の税額軽減」を最大限活用することが、節税になるとは限らない
    ・配偶者の税額軽減とは夫婦のうちのどちらかが亡くなり、配偶者(夫または妻)が遺産を相続した場合に、その遺産額が「1億6,000万円」または「法定相続分」までであれば、相続税が非課税とされる制度
    ・配偶者の税額軽減を最大限活用すると、二次相続の相続税が高額になる
  • 相続を「親から子供への財産を引き継ぐこと」と考えた場合、相続税は「父の相続(一次相続)と母の相続(二次相続)」のセットで考えることが大切
  • 遺産分割方法について悩まれている方は、一度、相続専門税理士へ相談することがおすすめ

本記事がみなさんの遺産分割方法を考える一助となれば幸いです。

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