法人成り時の債務引受方法2つと知っておきたい注意点を解説

【税理士監修】法人成り時の債務引受方法2つと注意点を解説

「法人成りをするときに行う債務引受とは?どのような方法なのか知りたい」

「債務引受にはどのような方法があるの?具体的にどのように行えばいいのか気になる」

法人成りをするときには、個人事業主のときの資産や負債の処理を行い適切な方法で引継ぎしなければなりません。借入金の引継ぎを検討するときに「債務引受」が出てきますが、どのような方法なのか分からない方も多いのではないでしょうか?

債務引受とは、個人事業主のときの借入金を法人成りした後の会社に引継ぐ方法です。

現在借入をしている金融機関や公庫に「債務引受をしたい」と相談をすると、比較的簡単に進められます。とは言え、下記のような注意点があるため、事前に注意点を理解しておくことが大切です。

そこでこの記事では、法人成りをするときに行う債務引受の概要や注意点をまとめてご紹介します。とくに、方法では重畳的債務引受と免責的債務引受について分かりやすく解説しています。

【この記事で分かること】
・法人成りをするときの債務引受とは
・法人成りをするときに債務引受を行う方法
・法人成り時に債務引受をするときの注意点

この記事を最後まで読めば、債務引受の方法が具体的に理解できるようになります。法人成りをするときに資産や負債の引継ぎは重要なポイントとなるので、ぜひ参考にしてみてください。


1.法人成りをするときの債務引受とは

債務引受とは、個人事業主のときに借りたお金(借入金)を法人成りした後の会社に引き継ぐ方法です。

法人成りをするときに借入金を処理する代表的な方法には、下記の3つがあります。債務引受は、借入金を処理する方法の一つとして選択できます。

法人成りをするときに借入金を処理する方法
借入金の引継ぎをしない借入金を引継ぎしないで個人事業主の間に完済する
法人成りする会社で借入をして返済する法人成りをする会社で融資を受けて個人に貸付を行い返済する
債務引受をする個人事業主の借入金を法人成りした会社に引継ぐ

債務引受は負債だけでなく資産も引継ぎをする場合に、利益を圧縮できるメリットがあります。また、運転資金などの事業用借入金は、法人成りをしたときに支払利息は法人の経費にするのかなど会計が複雑になるので、債務引受をしたほうが処理しやすくなります。

債務引受には、一般的に下記の2つの方法があります。

 方法1:重畳的債務引受方法2:免責的債務引受
借入金の返済会社会社
個人会社とともに債務者となる連帯保証人

重畳的債務引受が基本となっており、債務引受の利用者側が取捨選択することはできません。つまり、借入をしている金融機関や公庫が決めることになります。2つの方法にはどのような違いがあるのか、確認しておきましょう。

1-1.重畳的債務引受

重畳的債務引受は、個人と法人成りをする会社がともに債務者になる方法です。

借入金を返済していくのは法人成りをした会社ですが、個人は債務者としての責任を負います。会社と個人の双方に借入金を返済していく義務があるのが重畳的債務引受です。

1-2.免責的債務引受

免責的債務引受は、法人成りした会社が単独で債務を引き受ける方法です。こちらも借入金を返済していくのは会社ですが、個人は連帯保証人の立場です。

債務者は返済が完了するまで常に返済義務を負いますが、連帯保証人は債務者が返済できない場合のみ返済義務を負います。重畳的債務引受と比較すると個人の責任が軽い点が大きな違いです。


2.法人成りをするときに債務引受を行う方法

法人成り時に債務引受をするには、借入をしている金融機関や公庫に相談 します。事業体が変わらなければ審査がほとんどなく、スムーズに債務引受ができます。

債務引受は難しい手続きや時間がかかるものではなく、基本的には5分程度で終了します。必要な書類は借入をしている金融機関や公庫によって異なるため、事前に相談しておくといいでしょう。


3.法人成り時に債務引受をするときの注意点

法人成り時に債務引受をするときには、どのようなことに注意するべきでしょうか?ここでは、注意点を2つご紹介します。

3-1.資産と負債のバランスに注意する

1つ目は、資産と負債のバランスに注意することです。法人成りをして債務引受をする際に、同時に資産の引継ぎも検討することが多いです。資産とは、パソコンや自動車などの減価償却資産や棚卸資産などが該当します。

例えば、資産を400万円、負債を600万円引継ぎすると、下記のような貸借対照表になります。

これを法人に引継ぎするための会計処理をすると、下記のようになります。

記帳方法の例:個人事業主側

記帳方法の例:法人成りをする会社側

この処理をすることで、個人は法人成りをする会社からお金を借りている状態になります。見方によっては個人の債務超過を、法人に肩代わりさせたと捉えられる可能性があります。

個人が債務超過となっている状態で法人成りをすると余計な課税が発生する可能性があるので注意してください。

法人成り時の資産引継ぎについては、下記の記事で解説していますので参考にしてみてください。

「法人成り 資産引継ぎ」

3-2.株主総会・取締役会の承諾が必要

2つ目は、株主総会や取締役会の承諾が必要なところです。債務引受は取締役個人と会社との利害関係が衝突する「利益相反取引」に該当します。

利益相反取引をすると会社側が損害を受ける可能性があるため、事前に事実を開示して株主総会や取締役会の承諾を受ける必要があります。

【承認機関】
 
締役会非設置会社の場合:株主総会

取締役会設置会社の場合:取締役会

株主総会や取締役会の承認を得た証として議事録の提出が必要となることがあるので、作成しておくことが大切です。


4.法人成りをするときは自分でやるより代行依頼をしたほうがいい3つの理由

ここまで債務引受の方法を解説してきましたが、法人成りをするときには債務引受のように初めて行う処理や手続きが多く個人事業主一人では判断できません。法律や税務の専門的な知識が必要なシーンも多く、調べながら行っていると手間がかかりなかなか前に進みません。

そこで、法人成りをするときには、代行依頼をすることがおすすめです。知識のある専門家に任せることで、法人成り時の負担を大幅に削減できます。ここでは、法人成り時に代行依頼をしたほうがいい理由を詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。

4-1.知識がないと判断できないことが多い

1つ目は、法人成りをするときには専門的な知識がないと判断できないことが多いことです。今回解説した債務引受を始め資産引継ぎや定款の作成など、法人成りをするときに初めて取り組むことは意外と多いです。その都度自分で調べて判断することは非常に難しいですし、法人成りに時間がかかります。

とくに法人成りをする際は個人事業主の現状により必要な処理が異なるため、法律や税務の知識がないと判断できません。例えば、債務引受をするにしても、現状を踏まえてどのように進めることが最適なのか判断しなければなりません。法人成りを代行依頼すれば専門知識をもとに、最適な判断ができます。

・法人成りをしたいけれど法律や税務の知識がなくて難しい

・法人成りを始めたものの内容が難しくて理解できない

といった悩みを解消し、効率よく法人成りを進められるようになります。

4-2.自分で法人成りするよりも費用を抑えられるケースがある

2つ目は、自分で法人成りをするより費用を抑えられるケースがあることです。「法人成り時に代行依頼すると費用がかさむのでは?」「法人成り時は余分なコストをかけたくないから自分でやるしかないな」と思っている方もいるかと思います。

しかし、代行依頼先によっては自分で法人成りをするより費用を抑えられます。一例として、「辻・本郷 税理士法人」なら、下記のように自分で法人成りするよりも低い費用で依頼ができます。自分で法人成りをするより、70,000円以上もコストを抑えられるのです。

主なサービス内容自分で法人成りする場合辻・本郷 税理士法人
定款認証印紙代 定款認証手数料 など240,000163,000

※目安費用です。資本金額等により変動します。

法人成り時は法人成りの手続き以外にも様々な費用がかかるため、少しでも負担を減らしたいところです。代行依頼をすることで、コスト面の負担も軽減できます。

4-3.法人成りにかかる手間を削減できる

3つ目は、法人成りにかかる手間を大幅に削減できるところです。法人成りは通常の業務と平行して進めなければならないので、手が回らずなかなか進まないケースがあります。

しかし、法人成りに時間を要しているとその後のビジョンや計画にも支障をきたし、スピード感を持ち会社を成長させることができません。

代行依頼をすれば法人成りに必要な手続きや書類作成を任せられるので、法人成りとコア業務を切り離すことが可能です。その結果、法人成りにかかる手間を大幅に削減しながらも、計画的に法人成りを実現できます。


5.法人成りをするときの代行依頼先の選び方

法人成りをするときの代行依頼先には、法人成りの手続きのみをサポートするタイプと法人成りの手続きと法人成り後の顧問の双方をサポートするタイプがあります。

それぞれ特徴が異なるので、どちらを選択するべきか検討してみてください。

5-1.法人成りの手続きのみをサポートするタイプ

法人成りの手続きのみをサポートするタイプは、下記のような法人成りに必要な業務のみの代行依頼ができます。

・登記書類の作成

・会社設立の登記申請

・定款の認定手続きなど

法人成り時の手続きは複雑で、初めて取り組む場合は手順や書類の内容を理解するだけでも時間がかかります。この部分を知識がある代行依頼先に委ねられるため、適切な方法で効率よく法人成りを進められます。

法人成りの手続きのみをサポートするタイプのメリットとデメリット
メリット法人成りをいち早く進められる 難しい法人成りの手続きを任せることができ負担を軽減できる
デメリット法人成りをした後のサポートは対象外 法人成りの手続きのみなので法人成りに伴う資金繰りの相談などはできない

一方で、あくまでも法人成りに特化したサポートとなるので、法人成り後の業務の相談や法人成りに伴う資金繰り、ビジョンの相談は基本的にはできません。

そのため

・自分で法人成りをしようとしたけれど上手にできず、とりあえず法人成りのみをサポートして欲しい

・少しでも早く法人成りを終えたい

など、法人成りに特化したサポートを求めている場合に向いています。

5-2.法人成り+顧問契約で法人成りをした後もサポートするタイプ

代行依頼には法人成り時に顧問契約をして、法人成りの手続きだけでなく法人成りをした後もサポートを受けられるタイプがあります。具体例には法人成りの手続きにプラスして、下記のような相談や業務代行依頼が可能です。

・法人成り後の会計帳簿記帳代行

・決算書の作成サポート

・融資や助成金などの手続きのサポート

・法人成り後の経理や運営のサポート

法人成りをすると、個人事業主のときとは経理や申告、会社運営の方法が大きく異なります。そのため、法人成りをした後に課題や疑問を抱えることが多いです。あらかじめ顧問契約をしておけば、適切な知識をもとに判断ができます。

また、融資の相談や会社運営していくうえでのサポートなども受けられるため、法人成りをした後の不安を払拭し会社を成長させるために二人三脚で進めることができます。

法人成り+顧問契約で法人成りをした後もサポートするタイプのメリットとデメリット
メリット融資や会計、会計運営など法人成りをした後に課題となりやすい部分のサポートを受けられる 法人成り時に契約をすることで会計設立時の状況から理解でき的確なアドバイスをもらえる
デメリット法人成りの手続きのみよりもコストがかかる

デメリットとしては、法人成りの手続きのみのタイプよりもコストがかかるところです。とは言え、法人成り後に顧問契約をすれば同等かそれ以上の金額がかかります。

・法人成りした後の会計管理や決算書の作成が不安

・法人成りだけでなく知識のある人の会社経営をサポートして欲しい

という場合は、法人成り+顧問契約で法人成りをした後もサポートするタイプがおすすめです。


6.法人成りのサポートは辻・本郷 税理士法人にお任せください

法人成りをするときに代行依頼を検討している場合は、創業のプロフェッショナルである「辻・本郷 税理士法人」にお任せください。確実なスタートダッシュを切れるように、全力でサポートさせていただきます。

辻・本郷 税理士法人ならではの強みは、次の3つです。

6-1.地域や業種問わず的確なアドバイスを受けられる

「辻・本郷 税理士法人」は、拠点数・職員数ともに日本一の税理士法人です。地域ごとに拠点があるため、どの地域で法人成りを検討していても質の高いサポートを受けられます。

携わっている業種が幅広く、専門性の高い業種であっても各分野に特化したスタッフがサポートいたします。特定の分野しか対応できないなど、業種の限定はありません。

法人成りをするときは不安や疑問を抱えやすいですが、長年育まれた経験と情報量をもとに、的確なアドバイスをさせていただきます。

6-2.法人成りの費用を抑えられる

「辻・本郷 税理士法人」は、自分で法人成りの手続きをするよりも費用を抑えられる仕組みを採用しています。法人成りの手続きは登記や定款の認証が必要なので、誰が行っても基本的には24万円程度(最低22.2万円)がかかります。

「辻・本郷 税理士法人」の「会社設立代行サービス」では必要な費用を全て含めたうえで、一部の費用を辻・本郷 税理士法人が負担しています。

主なサービス内容自分で法人成りする場合辻・本郷 税理士法人
定款認証印紙代 定款認証手数料 登録免許税など240,000円163,000

※目安費用です。資本金額等により変動します。

法人成りに必要な手続きはしっかりと満たしながらも、低価格でのサービス提供を実現しています。法人成り時には手続き以外にも様々な場面で費用がかかるため、「辻・本郷 税理士法人」なら納得のできる価格で安心してご利用いただきます。

6-3.法人成りをした後も手厚いサポートを受けられる

「辻・本郷 税理士法人」では法人成りの手続きだけでなく、法人成りをした後も多方面から会社の経営をサポートさせていただきます。一例として、会社設立後の課題や悩みに寄り添うサービスを用意しています。

「辻・本郷 税理士法人」が提供しているサービス一例
・銀行の融資や助成金、補助金の相談
・設立後の経理や従業員の雇用などの運営サポート
・法人税などの報告書の作成、提出
・会計帳簿の記帳代行
・決算書の作成代行
・決算や節税のシミュレーション
・税務調査への対応
・子会社設立の相談

法人成りをするときも専門的な知識が必要ですが、法人成りをした後のほうが会計処理や決算書の作成、融資などに課題を抱えやすいです。「辻・本郷 税理士法人」では法人成りをした後も円滑に会社経営ができるように専門的な視点からサポートさせていただきます。

法人成りは法律や税務など様々な知識が必要なので、一人で行うことが非常に難しいです。実際に「どうにか自分で法人成りをしようとしたけれど分からないことばかりで挫折した」「法人成りの手続きを見ているとハードルが高くで自分ではできない」などの声を耳にします。

「辻・本郷 税理士法人」は創業のプロフェッショナルとして、創業者と真摯に向き合いながら効率よく法人成りを進めていきます。法人成りでお悩みの場合は、お気軽にお問い合わせください。

会社設立代行なら 辻・本郷 税理士法人の無料相談へ

いかがでしたか?法人成り時の債務引受とはどのようなものなのか理解できたかと思います。最後に、この記事の内容を振り返ってみましょう。

〇債務引受とは個人事業主のときに借りたお金を法人成りした後の会社に引き継ぐ方法。下記の2つの方法がある

・重畳的債務引受:個人と法人成りをする会社がともに債務者になる方法
・免責的債務引受:法人成りした会社が単独で債務者になる方法

〇債務引受をするには借入をしている金融機関や公庫に相談する

〇法人成り時に債務引受をするときの注意点は次の2つ

・資産と負債のバランスに注意する
・利益相反取引に該当するため株主総会や取締役会の承諾が必要

法人成りをするときには、資産や負債の引継ぎ方法を検討しなければなりません。法人成りの手続きと併せて進める必要がありますが、判断が難しい場合や分からないことがある場合は「辻・本郷 税理士法人」にお気軽にご相談ください。

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