
「金融機関の相続手続きが一元化されるとニュースで見たけど、どう変わるの?」
本記事をお読みの皆さんは、このような疑問をお持ちではないでしょうか。
2026年4月、銀行や証券など大手金融機関を含む10社が、金融業界横断の相続手続き一元化プラットフォーム「みらいたすく※1」構築に向けた基本合意書を締結したことを発表しました。
相続発生後、多くの相続人が行う手続きの一つが、金融機関の相続手続きです。
金融機関の相続手続きは、お亡くなりになった方の金融機関の口座を把握することから始まり、慣れない書類集めや相続手続き請求書等の記入を、金融機関の数だけ行う必要があり、多忙な相続人にとって重い負担となっています。
今回、このような相続人の負担を軽減する新しい仕組みが発表されました。
■NTTデータ ニュースリリース:相続手続きの一元化に向けた新会社設立について
目次
1.相続手続き一元化プラットフォーム「みらいたすく」とは
相続手続き一元化プラットフォーム「みらいたすく」とは、遺産相続手続きをウェブ上で一括対応できるようにする仕組みのことです。
この仕組みによって、相続人がウェブ上で口座調査を依頼すれば、みらいたすくへ参画する金融機関のどこに口座をもっていたか調べることできたり、金融機関ごとに行っていた戸籍や印鑑証明書などの必要書類の提出を、ウェブ上で一度に行うことができるようになり、相続人にとって、金融機関の相続手続きにおける負担が大きく軽減されます。
現状、新会社へ出資する金融機関は大手の銀行や証券会社など10社となっていますが、他の多くの金融機関※2が「みらいたすく」に参画する予定であると公表されています。

※1名称は変更になる可能性があります。
※2新会社へ出資する金融機関以外の金融機関による利用も可能とする想定です。
出典:株式会社NTTデータ「金融業界横断の相続手続き一元化プラットフォーム「みらいたすく」構築に向けた基本合意について」
2.金融機関の相続手続きにおける現状の課題
本章では、金融機関での相続手続きにおける現状の課題を大きく3つに分けて解説します。
相続が発生すると、相続人はさまざまな手続きを行うことになります。その中の一つが金融機関での相続手続きです。具体的には、その方の持っていた銀行や証券会社などの金融機関の口座について調査し、その口座について解約・もしくは、名義変更等の手続き等を行う必要があり、多忙な相続人にとって大きな負担となっています。
2-1.「どの銀行に何の口座があるか」の把握が困難
1つ目は、「どの銀行に何の口座があるか」の把握が困難であるということです。
相続人は金融機関での相続手続きを始めるにあたり、まずは亡くなった方が、銀行、証券、信託銀行など、どの金融機関に、どのような種類の口座(普通・定期・外貨など)を持っていたかを特定することから始めなければなりません。
亡くなった方がご生前のうちにご自身の財産が詳細に書かれた遺言や財産目録を作成していれば容易に特定が可能ですが、そうでない場合には、残された通帳やキャッシュカード、郵便物等をヒントに雑然とした膨大な資料の整理から始めなくてはなりません。
2-2. 金融機関ごとに「手続きのルール」が異なり、窓口への来店が必要
2つ目の課題は、金融機関ごとに「手続きのルール」が異なり、原則として窓口への来店が必要になることです。
亡くなった方の口座を持っている金融機関が把握できたら、それぞれの金融機関ごとに相続手続きを行う必要があります。その際、金融機関によって相続手続きの進め方や必要書類のルールが少しずつ異なります。
A銀行では不要だった書類がB銀行では必要になるなど、個別対応が求められます。
また、大きな負担となるのが「窓口への来店」です。現在は郵送で対応できるケースも増えていますが、金融機関や内容によっては窓口への訪問を求められることがあります。仕事や家事で忙しい場合や、遠方に住んでいる場合には、窓口が開いている時間に、複数の金融機関に足を運ぶのは困難です。
さらに、金融機関ごとに専用の相続依頼書が用意されており、氏名・住所・本籍地といった同じ内容を何度も手書きで記入しなければならない点も、相続人にとって大きなストレスとなっています。
2-3. 戸籍謄本や印鑑証明書等の多数の必要書類を金融機関ごとに用意する必要がある
3つ目は、戸籍謄本や印鑑証明書等の多数の必要書類を金融機関ごとに用意する必要があるということです。
金融機関での相続手続きには、戸籍謄本、印鑑証明書、遺言書や遺産分割協議書、遺産分割協議書がある場合にはすべての相続人の印鑑登録証明書などさまざまな書類が必要です。
金融機関が複数ある場合には、相続人は金融機関ごとに同じ内容の書類を準備し、各金融機関に提出する必要があります。また、慣れない作業で書類に不備が見つかると、何度も提出し直すことにもなり、時間的にも金銭的にも大きな負担となります。
■辻・本郷相続ガイド 亡くなった人の預金をおろす方法|銀行での相続手続きと注意点 必要書類を集める
3.相続手続き一元化プラットフォーム「みらいたすく」の導入で、相続手続きはどう変わる?
相続手続き一元化プラットフォーム「みらいたすく」の導入で、相続手続きはどう変わるのでしょうか。
「みらいたすく」は、提携金融機関の相続手続きがウェブ上で一括依頼することができる仕組みです。今までのように、金融機関の窓口に来店しなくても手続きが可能となります。
本章では「みらいたすく」の仕組みについて3つのポイントで説明します。
表:現行の手続きと「みらいたすく」の比較
| 項目 | 現行の手続き | みらいたすく |
|---|---|---|
| 口座の把握 | 遺言・財産目録等がない場合は 通帳や郵便物から自力で探す | ウェブ上から口座調査を一括で依頼 |
| 相続手続きの依頼 | 金融機関ごとに窓口に来店して依頼 ※ウェブ・郵送で対応できる場合もあり | ウェブ上から手続きを一括で依頼 |
| 手続きのルール | 金融機関ごとに独自の手続き | 提携金融機関共通の手続き |
| 必要書類の提出 | 金融機関ごとに必要書類を窓口・郵送で提出 | 書類をウェブ上に一括アップロード 手続きを申し込んだ金融機関が情報を共有 |
| 相続依頼書 | 金融機関ごとに申請書を作成 | ウェブ上からマイナンバーカードで電子相続依頼書を作成 手続きを申し込んだ金融機関が情報を共有 |
3-1.ウェブ上から提携金融機関の口座調査を一括で依頼
1つ目のポイントは、ウェブ上から提携金融機関の口座調査を一括で依頼できることです。
亡くなった方がどこにどのような口座を持っていたかを調べるのは、相続人にとって大きな負担の一つでしたが、この仕組みを利用することで、ウェブ上の1つの窓口から口座調査依頼を行えば、亡くなった方の口座情報を、提携金融機関から一括で照会できるようになります。
3-2.提携金融機関への相続手続きをウェブ上で一括で完結
2つ目のポイントは、提携金融機関への相続手続きをウェブ上で一括で完結できることです。
現状では、金融機関ごとで主に窓口で相続手続きを行う必要がありますが、「みらいたすく」では、金融機関ごとに独自のルールがあった相続手続きを一元化し、ウェブ上の一つの窓口から、手続きを申し込んだ金融機関へ一括して相続手続きができるようになります。
現状、新会社へ出資する金融機関は大手金融機関7社となっていますが、これ以外にも多くの金融機関が「みらいたすく」に参画する予定であると公表されています。
これにより、忙しかったり、遠方に住んでいたりする相続人の負担を大幅に軽減することができます。
3-3.書類の提出や相続依頼書の作成が一度で済む
3つ目のポイントは、書類の提出や相続依頼書の作成が一度で済むことです。
現状銀行ごとに提出している戸籍謄本や印鑑証明書等の多数の必要書類は、ウェブに一括アップロードすれば、手続きを申し込んだ金融機関に共有されます。
また、銀行ごとに用意されていた専用の相続依頼書も、マイナンバーカードを活用して「電子相続依頼書」を作成します。
これにより同じ書類を複数用意したり、何度も同じ内容を書き込んだりする負担が軽減されます。
4.全国での運用開始は2028年秋頃の予定
本章では、「みらいたすく」の運用スケジュールについて解説します。
「みらいたすく」は、2028年秋ごろの全国でのサービス開始を目指して準備が進められています。
現在は開発・準備段階で、相続手続きは金融機関ごとに個別手続きが必要となりますので注意が必要です。
■辻・本郷相続ガイド 亡くなった人の預金をおろす方法|銀行での相続手続きと注意点
2026年秋頃 | 新会社設立 |
|---|---|
2027年夏頃 | 一部地域での「みらいたすく」試験導入 |
2028年秋頃 | 全国での「みらいたすく」の提供開始予定 |
5.まとめ
本記事では、金融業界横断の相続手続き一元化プラットフォーム「みらいたすく」について解説してきました。実現されれば、金融機関の相続手続きにおける相続人の負担が大きく軽減されることが期待されます。
一方で、「みらいたすく」で一元化できるのは、あくまで金融機関の相続手続きです。実際の相続では預貯金だけでなく、不動産などさまざまな種類の財産の相続手続が必要になることは変わりません。
万が一の時にご遺族が困らないよう、まずは、早い段階ですべての財産を把握できる「財産目録」を作成しておくのがおすすめです。財産が整理されているだけで、将来の手続きに対する安心感が高まります。
■辻・本郷相続ガイド 【相続】財産目録の作成は義務ではない!作るメリットや作り方を解説
本記事が、金融業界横断の相続手続き一元化プラットフォーム「みらいたすく」について、疑問をお持ちの方の一助となれば幸いです。

