相続税に抜け道はある?バレるリスクと正しい相続税対策

「相続税を少しでも安くしたい…何か良い抜け道はないだろうか」

本記事をご覧の方は、このような疑問をお持ちではないでしょうか。

タンス預金・名義預金を隠す、亡くなる直前に口座から現金を引き出して財産を減らすなどが抜け道として紹介されていることもありますが、結論からお伝えすると、このような方法はおすすめできません。

なぜなら国税庁は、強力な調査権限や独自のシステムを駆使して、亡くなった方の資金の動きを徹底的に把握することができるからです。知らずに手を出してしまうと、重いペナルティを受けることになりかねません。

しかし、「抜け道」を探さなくても、生前贈与や各種特例等、正しい相続税対策を行うことで、相続税を軽減することは可能です。

本記事では、「抜け道」がなぜばれるのか、バレた時のペナルティ、税理士が自信を持っておすすめする「安全で効果的な相続税対策」を分かりやすく解説します。

本記事が「相続税の抜け道」についての疑問をお持ちのかたの、一助となれば幸いです。

1.相続税に「抜け道」は存在しない

相続税に「抜け道」は存在しません。

タンス預金・名義預金を隠す、亡くなる直前に口座から現金を引き出して財産を減らすなどが抜け道として紹介されていることもありますが、結論からお伝えすると、このような方法はおすすめできません。

亡くなった人の情報や財産を隠したり、財産の別の人のものにしたり、名義を変えたりすれば、税務署にばれないのでは?という考えは、税務署に見破られてしまいます。

主な理由は以下の4つです。

理由1市区町村に提出した死亡届の情報は、税務署に通知されているから
理由2KSK(国税総合管理システム)で過去の所得や税金の情報は筒抜けだから
理由3税務署の調査権限は強力。本人はもちろん、家族名義の口座であっても強制的に過去の履歴を調査できるから
理由4税務署は相続後の名義変更をすぐに把握しているから

このように、国税庁は、死亡の事実から過去の収入、家族の口座、財産の名義変更にいたるまで、すべて把握することができます。そのため、どのような「抜け道」を試みても、税務署にすべて見破られてしまうのです。

詳細は下記をごご覧ください。
■辻・本郷相続ガイド 2.相続税の申告漏れが税務署に見つかる理由

3.「抜け道」がバレたら重いペナルティが課される

相続税の抜け道が税務署にバレてしまうと、以下のペナルティが課される可能性があります。

税目課税されるケース不徴収となる金額
延滞税納付が相続税の申告期限に遅れた場合1,000円未満
過少申告加算税税務署の指摘(税務調査の事前通知を受けたあと)により追加納付の必要が発覚し、修正申告をして相続税を追加で納める場合5,000円未満
無申告加算税相続税の申告期限を過ぎてから自主的に申告した場合
期限後申告後、修正申告をした場合
税務調査やその事前通知を受けてから申告した場合
5,000円未満
重加算税仮装・隠ぺいをおこなった場合5,000円未満

3-1.延滞税

延滞税は本来の納付期限の翌日から納付完了日までの日数に応じて課される税金です。

修正申告をして相続税を追加で納める場合は、相続税の法定納付期限から納付するまでの日数に対して延滞税が課税されます。ただし、法定期限内に提出した申告書の修正申告で、法定申告期限から1年以上経過している場合、重加算税が課される場合を除き、1年分を限度とします。

計算方法は以下の通りです。

①の金額+②の金額=延滞税の額〔100円未満の端数切捨て〕

①納付すべき本税の額※1×延滞税の割合※2×期間(日数)※3÷365日=金額※4
②納付すべき本税の額※1×延滞税の割合※2×期間(日数)※5÷365日=金額※4

※1 10,000円未満の端数切捨て
※2 延滞税の割合は年毎に代わります。国税庁HP『延滞税の割合』をご覧ください。
※3 法定納期限の翌日から完納の日又は2ヵ月を経過する日
※4 1円未満の端数切捨て
※5 2ヵ月を経過する日の翌日から完納の日

延滞税の割合(税率)は、修正申告の本来の納付期限の翌日から起算して2ヵ月を経過しているか、していないかで異なります。令和3年1月1日以後の税率は以下のとおりです。

納付期限から2ヵ月以内年7.3%または「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
※令和8年1月1日から12月31日は2.8%
納付期限から2ヵ月経過年14.6%または「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合
※令和8年1月1日から12月31日は9.1%

延滞税に関する詳細は国税庁HP『延滞税の計算方法』をご覧ください。

3-2.過少申告加算税

過少申告加算税は期限内申告をした後に税務署の指摘(税務調査の事前通知を受けたあと)により追加納付の必要が発覚し、修正申告をして相続税を追加で納める場合に課税されます。

また、過少申告に正当な理由があった場合には賦課されません。

計算方法は以下の通りです。

追加で納める税額×過少申告加算税の税率=過少申告加算税の額

過少申告加算税の税額は、修正申告のタイミングや追加で納める税額によって異なります。

修正申告の時期50万円以下
(期限内申告税額が50万円よりも高ければ、
期限内申告税額以下)
50万円超
(期限内申告税額が50万円よりも高ければ、
期限内申告税額超)
税務調査の事前通知前なし
税務調査の事前通知後から税務調査まで
(更正等予知前)
5%10%
税務調査後10%15%

※以下の場合は「国外財産調書/財産債務調書に係る加重」として「+5%」となる。
  ①国外財産調書/財産債務調書の提出がない場合
  ②提出された国外財産調書/財産債務調書に申告漏れに係る国外財産/財産債務の記載がない場合

詳細は財務省作成資料『加算税制度の概要①(基本情報)』をご覧ください。

3-3.無申告加算税

無申告加算税は、相続税の申告期限を過ぎてから自主的に申告した場合、期限後申告決定後に税務調査やその事前通知を受けてから修正申告や更正があったした場合に課税されます。

ただし、正当な理由がある場合や、法定申告期限から1ヶ月以内にされた一定の期限後申告の場合は免除されます。

計算方法は以下の通りです。

新たに納める税額×無申告加算税の税率=無申告加算税の額

過少申告加算税の税額は、期限後申告のタイミングや追加で納める税額によって異なります。

期限後申告の時期50万円以下50万円超300万円以下300万円超
(高額無申告を発生させたことについて納税者の責めに帰すべき事由がない場合を除く)
税務調査の事前通知前5%
税務調査の事前通知後
から税務調査まで
(更正等予知前)
10%15%25%
税務調査後15%20%30%

※以下の場合は「短期累犯加重」として「+10%」となる。
 ・過去5年以内に無申告加算税⼜は重加算税を課されたことがある場合
 ・「更正等予知前」であれば、調査通知後も適⽤なし
 ・連年無申告加重との重複適⽤なし

※以下の場合は「連年無申告加重」として「+10%」となる。
 ・前年分及び前々年分の国税について、無申告加算税⼜は重加算税(無申告)を、
  ① 課されたことがある場合
  ② 賦課決定をすべきと認める場合

詳細は財務省作成資料『加算税制度の概要①(基本情報)』をご覧ください。

3-4.重加算税

重加算税は仮装・隠ぺいをおこなった場合に課される税金です。
過少申告加算税や無申告加算税の代わりに課税されます。

計算方法は以下の通りです。

追加で納める税額または新たに納める税額×重加算税の税率=重加算税の額

税率は以下の通りです。

過少申告(期限内申告書を提出していた場合)35%
無申告(期限内申告書を提出していなかった、期限後申告・決定後に修正申告・更正があった場合)40%

※以下の場合は「短期累犯加重」として「+10%」となる。
 ・過去5年以内に無申告加算税⼜は重加算税を課されたことがある場合
 ・「更正等予知前」であれば、調査通知後も適⽤なし
 ・連年無申告加重との重複適⽤なし

※以下の場合は「連年無申告加重」として「+10%」となる。
 ・前年分及び前々年分の国税について、無申告加算税⼜は重加算税(無申告)を、
  ① 課されたことがある場合
  ② 賦課決定をすべきと認める場合

詳細は財務省作成資料『加算税制度の概要①(基本情報)』をご覧ください。

4.抜け道を探すより確実!税金を軽減できる正攻法の「相続税対策」

抜け道を探すより確実に、税金を軽減できる正攻法の「相続税対策」を解説します。

本記事では代表的な対策に簡単に触れる程度ですが、詳細は下記の記事でご確認ください。
■辻・本郷相続ガイド 相続税対策22選|節税のためにできることを税理士が解説

4-1.年間110万円以下で暦年贈与をする

相続税対策の1つ目は、「年間110万円以下で暦年贈与をする」です。

暦年贈与とは、1人あたり年間110万円までの贈与が非課税になる仕組みを利用し、生前に財産を少しずつ家族へ移していく方法です。時間をかけて計画的に行うことで、将来かかる相続税の負担を安全に減らすことができます。

ただし、相続人が相続開始前3~7年以内に、被相続人から贈与を受けた財産は、相続税の申告の際に、相続財産に加算(持ち戻し)されて相続税が計算されます。資産を保有している人が高齢ではない場合に効果を発揮しやすい対策です。

正しい暦年贈与の手順や注意点については、下記の記事で詳しく解説しています。
■辻・本郷相続ガイド 非課税で生前贈与できる6つの方法生前贈与加算とは?令和6年改正による期間延長の影響と対策を解説
国税庁HP No.4402 贈与税がかかる場合

4-2.生命保険に加入する

相続税対策の2つ目は、「生命保険に加入する」ことです。

残された家族が受け取る生命保険金には、「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠が用意されています。手元にある現金を生命保険に変えて遺すだけで、非課税枠の分だけ課税される財産を減らすことができます。

詳細は、下記の記事で詳しく解説しています。
■辻・本郷相続ガイド 生命保険金に相続税はかかる?生命保険と税金の関係について徹底解説
国税庁HP No.1750 死亡保険金を受け取ったとき
国税庁HP No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

4-3.配偶者の税額軽減を活用する

3つ目は、「配偶者の税額軽減を活用する」です。

配偶者の税額軽減(配偶者控除)とは、亡くなった方の配偶者が相続した遺産のうち、「1億6,000万円」または「法定相続分」のどちらか多い金額までは、相続税がかからなくなる制度です。

つまり、正味の遺産額が1億6,000万円までの相続で、すべての財産を配偶者が取得すれば、その家族に対して相続税はかかりません。また、子供など他の法定相続人と配偶者が遺産を分け合ったとしても、配偶者が取得した分の財産に対しては相続税はかかりませんので、非常に節税効果の高い制度です。

しかし、一次相続と二次相続をトータルで考えると、一次相続で配偶者の税額軽減を最大限活用することが、その家族にかかる相続税を一番安くする方法とは限らないのでご注意ください。

■辻・本郷相続ガイド 相続税の配偶者控除とは?活用するポイントを税理士が解説
国税庁HP No.4158 配偶者の税額の軽減

4-4.小規模宅地等の特例を活用する

4つ目は、「小規模宅地等の特例を活用する」です。

小規模宅地等の特例とは、被相続人が事業や居住のために使用していた土地を相続した場合、一定の要件を満たすと相続税評価額を最大で80%減額できる制度のことです。

とても節税効果の高い小規模宅地等の特例ですが、適用を受けるためには、相続した土地の用途や取得する人ごとに定められた要件を満たす必要があります。

■辻・本郷相続ガイド 家を相続したら相続税額が安くなる?~「小規模宅地等の特例」基礎編
国税庁HP No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

5.相続税対策は相続専門税理士へ相談を

相続税対策は相続専門税理士へ相談することをおすすめします。

2章のNGケースのように、自己判断で間違った対策を行ってしまうと、税務署から「意図的な財産隠し」とみなされ、重いペナルティを課されるリスクがあります。
相続税対策や、相続税を軽減する特例の適用に迷ったら、相続専門の税理士に相談するすることをおすすめします。税理士は、正しい方法で税負担を最小限に抑える対策を提案します。

■辻・本郷相続ガイド 相続の相談先をお悩み別に徹底解説|無料相談も紹介相続税の相談はどこにすべき?税理士・税務署など4つの窓口を比較解説相続税申告は税理士に依頼すべき?その理由と選び方・費用を徹底解説

6.まとめ

相続税に「抜け道」はなく、正攻法で確実な相続税対策を行うことが重要です。

「バレない裏技」や「抜け道」は、税務署の強力な調査やシステムによってすべて見破られます。「悪質な財産隠し」と判断されれば、ペナルティが課され、結果的により多くの財産を失うことになりかねません。

少しでも相続税申告や相続税対策に不安がある場合は、ご自身で判断せずに、豊富な知識と実績を持つ相続専門の税理士に相談されることをおすすめします。

本記事が、皆様の安全で正しく無駄のない相続税申告の一助となれば幸いです。

辻・本郷 税理士法人の相続税申告サービス
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