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消費税率8%から10%への引き上げと新型コロナの影響

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2019年10月に消費税が増税されてから、ほぼ1年が経とうとしています。
増税時には、増税後の景気の落ち込みを見据えて景気振興策もセットで打ち出されたものの、今年に入ってからは新型コロナの影響により、消費動向は急激に悪化しました。
海外では消費税を引き下げる動きも出てきましたが、日本ではどうなるのでしょうか。

消費税とは

消費税は、消費に伴って広く一般に課税される間接税です。

<間接税>
税金を負担する人と実際に税金を納める義務がある人が異なる税のことをいいます。消費税のほかに酒税やたばこ税などが間接税に該当します。

税金は、事業者が販売する商品やサービスの価格に含まれて次々と転嫁され、最終的に商品を購入したりサービス提供を受けたりする消費者が負担します。

消費者から預かった消費税は、かわりに事業者が申告・納税しますが、生産や流通の段階で二重三重に税が課されることがないような仕組みになっています。

消費税のしくみ

消費者から見た8%と10%の差

消費者から見た8%と10%の差は、2%の税率アップに他なりません。
食料品等の軽減税率8%も、消費者から見た場合は、以前の8%となんら変わるところはありません。

しかし、消費税はその税収全てが国庫に行くわけではなく、一部は地方に回ることになっています。
以前の8%と現在の10%、軽減税率の8%は、国と地方の取り分がそれぞれ異なっているのです。

前の8%と現在の10%、軽減税率の8%

消費税増税の経緯と事業者の対応

消費税は、物の販売やサービスの提供により広く課税されることから税源としては安定しており、法人税や所得税の税収を上回る重要な税目です。

<租税および印紙収入の割合>
租税および印紙収入の割合
出典:国税庁『税の学習コーナー これからの社会と税

消費税は所得に関係なく、消費者が負担する税であるため、その増税には国民が強い関心を寄せており、政治との結びつきが強い税です。
第二次安倍政権では2014年4月に5%から8%に税率を引き上げた際、「社会保障と税の一体改革」で「消費税の税率引き上げによる増収分は、全額社会保障へ回す」という方針を打ち出しました。国民の理解を得られるように、その使途を限定したのです。

10%への引き上げについてはその時期を2度延期しています。軽減税率の導入もあるため、2019年10月からの増税実施に当たっては、2018年10月にその方針を表明し、1年間の準備期間を置いた経緯があります。

一方、納税をする事業者側では、税率変更や軽減税率の導入の対応が不可欠でした。売上を複数税率で把握する必要があるため、レジの入替や会計システムの新規導入を行った事業者が多数存在します。

新型コロナウイルスの感染症拡大による影響

2019年の消費税税率引き上げ時には予想できなかった新型コロナの影響により、景気は一気に冷え込みました。

2020年7月に発表された2019年度一般会計概要によると、国税収入は58兆4415億円と前年を下回り、税率が引き上げられ増収が期待された消費税も18兆3526億円と前年を下回りました。その一方で、新型コロナによる緊急支出により2020年度第二次補正予算後の一般会計歳出規模は160.3兆円と過去最高となっています。

消費税率引き下げはあるのか

イギリスやドイツでは、コロナ後の景気振興策として、消費税率を引き下げています。ただし、これは約半年と期間限定であり、経済回復のカンフル剤としての減税です。

日本でも同様の政策が取られる可能性は0ではないでしょう。
しかしながら国も地方も税収が減り、一般支出が増えていること、新型コロナの対応には行政サービスが不可欠なことを考えると、中長期的には消費税以外の税目も含めて増税の方向になると考えられます。

消費税は安定財源であり、これまでの経緯見ると、国にとってはなんとか導入を勝ち取ってきた税ともいえます。
コロナ後ではその性格も変わっていくかもしれません。広く徴収される税目であるからこそ、その使途も含めて国民の注視が必要です。

(執筆担当:新宿ミライナタワー事務所 FP部 金子 敦子)

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