辻・本郷 税理士法人

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上場企業のM&Aで必要な「PPA」とは?その対応と活用方法

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PPA

上場企業とのM&Aで必要になるPPA(無形資産の識別・割当)について、国内におけるM&A会計の流れとともにご説明します。また、売却側(譲渡側)の対応とPPAの枠組みの活かし方についてもあわせてご説明します。

今回は、辻・本郷 税理士法人が所属する辻・本郷グループの関連会社である、辻・本郷 M&Aソリューション株式会社の寄稿によりお届けします。

PPAとはそもそも何か?

PPAとは、Purchase Price Allocationの頭文字を取ったものであり、無形資産の識別・割当という意味になります。M&Aの実務では、買収金額と時価純資産との差額である「のれん」(営業権)の識別を行う主旨で使われています。

PPA業務が必要になるのは、おもに上場企業です。上場企業に株式や事業を売却(譲渡)する場合、売却側(譲渡側)はPPAに関する調査を受けることになります。

PPAの目的は、のれんの源泉、構成要素を特定・識別することを通じて、どのような要素を評価しM&Aを行ったか、あるいはM&Aの目的を開示することにより、投資家の投資判断に役立てるものになります。

企業が保有する、形のない経営資源をさす。PPAで識別される無形資産の例については本稿の図1を参照。

日本国内におけるM&A会計の歴史

国内におけるM&A会計の歴史を辿ってみますと、もともとは「持分プーリング法」と、「パーチェス法」の2つの会計処理方法があり、どちらを使っても問題ないとされていました。

持分プーリング法とは、資産・負債を簿価で承継し、買収コストを認識せず、また、のれんの発生はないものとする会計処理方法です。一方、パーチェス法とは、資産、負債を時価で承継し、買収コストを認識し、また、のれんも認識するという会計処理方法です。

持分プーリング法ですと、M&Aの実態が外部の利害関係者に分かりづらく、また、国際会計基準、米国会計基準ともにパーチェス法に一本化をしていることから、2010年4月以降は、持分プーリング法は廃止され、パーチェス法に一本化されました。

パーチェス法では、のれんが発生しますので、そののれんとは何なのかを具体的に特定するのがPPA業務になります。
最近では、上場企業のIR資料にもPPAの処理について開示をされることが増えてきました。

PPA業務の流れ

PPA業務は、M&Aの実行日であるクロージング日(企業結合日)から本格的に始まりますが、実際にはデュー・デリジェンスの段階から開始することが多いです。

業務の流れは、売却側(譲渡側)に資料依頼や質問を行った後に、分析・評価を行い、その後会計監査人に報告となりますが、依頼資料や質問は、デュー・デリジェンスと重複する部分があるのが理由です。

依頼資料や質問の趣旨は、「譲渡対象となる会社や事業の強みの源泉はなにか」というものです。
強みは各社各様ですが、大まかにはいくつかにグループ分けができると思います。図のように、強みの源泉の主な枠組みを用意し、そのうえで「このなかで強みの源泉に該当する事項はあるか」という観点で調査を進めていきます。

図1:PPAの主な枠組み
競争優位性全般契約・許認可
競合との違い、強み、優位性優位性のある契約、権利
収益の源泉許認可
ロイヤリティ
顧客人材
顧客一覧、属性組織
新規顧客獲得活動資格
既存顧客継続活動採用コスト、研修コスト
契約
受注残
特許・技術商標、ブランド
特許商標、商号、ロゴ、マーク等
優位性のある技術ブランド
研究開発認知度
ソフトウェア
知的財産

売却側(譲渡側)のPPAへの対応と活かし方

上述のとおり、売却側(譲渡側)は交渉相手が上場企業の場合、デュー・デリジェンス以降にPPA業務の対応を行うことになります。私たちからは、デュー・デリジェンス以降とするのではなく、むしろM&Aの準備の段階からPPAの枠組みを活かした強み分析をお勧めします。

おわりに

昨年2021年にはM&Aの実行件数が4,280件と過去最高を記録しましたが、本年もその数字を更新する可能性が高くなってまいりました。

後継者不在企業が多いことに加え、人口減少、物価上昇、円安、サプライチェーンの課題噴出など、企業を取り巻く環境は変化し、どの業界でも再編は加速していくと考えられます。
上場企業もM&Aを戦略に据えるのは当たり前になり、非上場企業側でも上場企業を相手にM&A交渉をすることが増えることと思います。そうした際に本稿が参考になると幸いです。

M&Aについてお悩みの際には、私たち辻・本郷グループまでご相談ください。

執筆担当:辻・本郷グループ  辻・本郷 M&Aソリューション株式会社 森永 良

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