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Tax Administration Lawの施行による変化(ミャンマー事務所)

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今回は、SAS(自主申告制度:Self Assessment System)にも関連する法律で、2019年10月にミャンマーで新たに施行されたTax Administration Lawについてご紹介いたします。

Tax Administration Law(TAL)の施行

Tax Administration Law(税務行政法)

2019年6月にTax Administration Law(税務行政法:以下、TAL)が公表され、同年10月1日から適用されました。
この法律は、下記5点を目的としています。

1. 徴税の効率化
2. さまざまな税の手続的一貫性の確保
3. 納税者の権利と義務の具体化
4. 内国歳入局の義務と権限の具体化
5. より効果的で明確かつ容易な自己申告制度(SAS)への移行

TALには、無申告や過少申告等の行為に関する罰金が明示されている他、Advance Rulingsという納税者にとっての予測可能性の確保に資すると期待される制度が具備されており、ミャンマーの徴税手続きに規律を与えうる法律であると評価できます。

税務当局とのコミュニケーション

TALでは、11条「Public Rulings」、12条「Advance Rulings」、34条「Administrative Review(不服審査)」、35条「Appeal(税務訴訟)」等の規定が創設されました。

まず、Public Rulingsとは、税務行政の一貫性を確保し、税務署職員間での基準を統一するために発する指針であり、日本の税法基本通達や解釈通達と似ています。
納税者を拘束するものではないと述べられている点も日本の通達と似ているところです。

次に、Advance Rulingsは、日本の「事前照会に対する文書回答手続」と類似するものです。
従来から、ミャンマーでは事前に担当税務官に取り扱いを確認したり、同意を取り付けたりすることはありましたが、法的拘束力を持つものではありませんでした。
TALによりこれが規定されたことで、税法の細則の整備が不十分なミャンマーにおいては、納税者にとっての税務リスクの予測可能性の確保の一助になると期待されます。

さらに、当該事前照会の内容は、照会者が特定されない形で一般に公開することができるとも規定されていることから、こうした蓄積も納税者にとっては有用なものになるでしょう。

TALにより規定された不服審査や税務争訟に関する規定により、一連の手続きが実効性のあるものになり、法的安定性が保たれることが期待されます。

罰則規定の導入

TALでは、無申告、過少申告、不納付等に関する各種罰則について規定されています。

なかでも特徴的なものとして、書類の保管義務違反に関する罰則があります。
書類の定義や日数計算の詳細が明確化されていませんが、違反した場合には1日当たり5,000チャットが罰則として科されると規定されていることから、場合によっては高額な負担を強いられる恐れもあるかと思われます。

各種議事録や契約書等を取引の都度、確実に作成し、保存することが重要となるでしょう。

税務調査について

TALはSASへの移行を念頭に制定されたこともあり、同25条では税務調査等についても規定しています。

これによると、徴収職員は事前の通知なしに事業所その他の施設に立ち入って調査をすることができるとされています。日頃から、資料等を整備しておくことが重要になるでしょう。

また、調査に際して必要な場合には、書類その他の物品を押収することができるとされており、返却期間については、調査終了後14日以内には返却しなければならないとされています。

なお、この調査の対象者は納税者の他、取引先等の第三者も対象としていることから、反面調査のような手法も想定されていると解することができます。

このように、2019年10月から施行されたTax Administration Lawは、これまで不明確であったミャンマーの徴税制度における納税者および課税当局双方の権利や義務を安定させる役割を果たすものです。
ところどころ、表現に不明確な点はありますが、徐々にPublic Rulings等を通して取り扱いが明確になるものと考えられます。

ただし、本法律の施行は、これまでのOAS(Office assessment System)の下で行われてきた実質的な賦課課税ともいえる推定課税等が直ちに是正されることを意味するものではないでしょう。
TALの27条(d)では、納税者が確定申告で提供した情報以外の情報に基づいて課税当局が課税を行おうとする場合には、その根拠となる情報を示す必要がある旨が規定され、課税当局の義務が示されています。

しかし、同32条では課税所得を減らす目的で行われたと認められる人為的または架空の取引は、経済的実体に従って取引が行われたものとして引き直すことができる旨が規定されており、実質課税原則についての言及がされています。

実質課税原則自体は日本の税法にも存在する考え方ですが、課税当局内での方針が安定していない場合には、恣意的な課税の温床になる可能性もあります。
法律自体は施行されましたが、人が入れ替わったわけではありませんので、運用の安定までには一定の時間を要するかもしれません。

SASの導入は多くの外資系企業が望んでいたものではありますが、現在のミャンマー税法においては、自主申告(および納付)の根幹となる法律の整備が脆弱なままとなっております。
何を基準にどのように経費を否認するかなど、損金算入規定等の基本的規定を整備・明確化しなければ、従来のように課税当局が局内の税収目標だけを追いかける安易な推定課税が繰り返され、SASに移行した意味さえ問われかねない事態に陥ることも考えられます。

これまでのミャンマーでは、ともすれば、「ミャンマーだから」とか「法律が曖昧だから」とか「税務官がいうから」などとして、法的根拠等が曖昧なままで済まされてきた側面がありました。しかし、曲がりなりにも自主申告制度(SAS)が導入され、税務調査が想定される以上、納税者としても準備を進めなければなりません。

このような状況に対処するために、会計証憑を保存すること、社内規定を整備すること、議事録等はその都度作成することなど、基本的な作業を徹底し、課税当局の主張に対して合理的な抗弁ができるような態勢を整えることが重要になるでしょう。
また、不安な点については、専門家等の第三者の意見を仰ぐことをお勧めいたします。

(執筆担当:ミャンマー会計事務所 平井 琢磨)

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