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インボイス対応にともなう修繕、会計上の取扱いはどうするのが最適解?

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インボイス対応にともなう修繕、会計上の取扱いはどうするのが最適解?

2023年10月1日のインボイス制度開始がいよいよ近づいてきています。
制度対応に追われる事業者の方も多いかと思いますが、その過程で避けて通れないのが、システムの改修です。
今回はインボイス制度の対応に伴うシステム改修について、会計面から深堀りしてみたいと思います。

インボイス制度に対応するための支出は、すべて経費…?

国税庁のウェブページでは「消費税のインボイス制度の実施に伴うシステム修正費用の取扱いについて」に、インボイス制度対応時の修繕費用の取扱いを定めています。

ただ、このページを探し当てて「インボイス対応した費用はすべて経費で計上しても良い」と思い込み、改修に係る請求額をすべて修繕費で計上…… してしまうと、税務調査で思わぬ指摘を受けるおそれがあります。

修繕費に該当するのは、現在の効用を維持するために必要な変更を施すための費用のみ

先ほど紹介したページをよく読むと、国税庁の見解が以下の通り記されています。

各システムのプログラムの修正が、現行の請求書等のフォーマットや、現行の税額計算の方法につき、インボイス制度の実施に伴い、システムに従来備わっていた機能の効用を維持するために必要な修正を行うものであることが作業指図書等から明確である場合には、新たな機能の追加、機能の向上等に該当せず、これらの修正に要する費用は修繕費として取り扱われることとなります。

【出典】国税庁「消費税のインボイス制度の実施に伴うシステム修繕費用の取扱いについて」。強調は筆者による

修繕費として処理してもかまわないのは、既存システムの機能を維持するための支出に限定されています。インボイス制度対応と関連していれば、すべて経費というわけではありません。

税率計算や請求書のフォーマットが旧制度に対応したままでは、システムそのものが使い物にならなくなってしまいます。それを修復して使える状態にするために支払うものをイメージしてもらうと分かりやすいと思います。

また、「作業指図書等で明確である場合」と、客観的に支出内容を明示することも求められています。
この点は、改修に対応したシステムベンダーに作成・提出を依頼する必要があります。

なお、作業指図書は例示であるため、作業指図書以外の書類でも内容を提示することができれば問題ないものと考えられます。

追加の機能は、原則として「資産計上」

以下のように、システムの追加機能を付与する場合は、インボイス対応にかかる支出であっても資産計上が求められています。

・受発注システム上で受領し、又は取り込んだ請求書に記載された取引先の登録番号と国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトに公表されている情報を自動で照合し、確認する機能を新たに搭載するもの
・これまでシステムで作成した請求書等を紙媒体で出力し交付していたものを、電子交付まで自動で行えるよう仕様変更するもの

【出典】国税庁「消費税のインボイス制度の実施に伴うシステム修繕費用の取扱いについて」。強調は辻󠄀・本郷 税理士法人による

いずれも、既存のシステムがこれまでに保有していなかった機能を新たに追加するための支出として例示されています。
実務では、税率計算の仕様を変更した過程で、前述したような新たな機能を追加することも考えられます。その支出の内訳を精緻に把握しておく必要があります。

補助金を受け取った場合は?

システム改修という側面からも、事業者の金銭的な負担増が避けられないインボイス制度。国として事業者を支援するために、要件を充足する事業者には、以下の2つの補助金制度が用意されています。

  • IT導入補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

これらの補助金を受け取った場合、国庫補助金等の圧縮記帳制度の対象になり、受取補助金額分は課税のタイミングを将来に繰り延べることができます。
また、中小企業者等に該当する事業者は、支出額から補助金額を差し引いたあとの金額が30万円未満となった場合、少額減価償却資産の損金算入の特例を受けることで、資産計上せずに、支出した期の損金にすることができます。

ただし、補助金を受けるための機能要件として、IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)では、「会計・受発注・決済・EC」のうち、1つまたは2つの機能追加が求められています。
そのため、先に例示した請求書フォーマットの修正や税額計算の方法の修正といった、既存の機能を改修するための支出、つまり、修繕費に区分される支出のみでは補助を受けることは難しいと考えられます。

新たな機能の追加、機能の向上等のための支出(資産に計上すべき支出)があった場合に、補助金を受けることができ、そのうえで、圧縮記帳 → 少額減価償却資産の損金算入の特例の順番で処理を検討していくことになります。

おわりに

本記事が、インボイス対応で悩む皆様の力になれば幸いです。

なお、辻・本郷 税理士法人のグループ会社である辻・本郷 ITコンサルティング株式会社では、インボイス対応からオフィスのDX化など包括的なIT関連サービスを提供しています。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

執筆担当:新宿ミライナタワー事務所 法人ソリューショングループ

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