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令和6年度確定申告以降に留意が必要な大口株主の配当と財産債務調書について

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大口株主の配当及び財産債務調書について

令和4(2022)年度税制改正により、大口株主等に該当すると令和5年10月以降に受け取る配当について申告不要制度を適用することができません。
令和5年以降の確定申告書において、どのような論点が変更されたかを解説いたします。

令和5(2023)年に改正された上場株配当における大口株主等の要件

個人の株主が大口株主等に該当する場合、その株主が受け取る配当には20%程度の税率がかかる分離課税ではなく、最高で約55%の税率がかかる総合課税が適用されます

令和5(2023)年10月以後に支払われる上場株式等の配当等では、この大口株主等の要件が改正されました。

令和4年度税制改正以前の大口株主等は、上場株式等の発行済株式の3%以上保有している個人株主を指していました。
改正施行後の令和5年10月以後は、株主本人が保有する株式に加え、一定の同族会社が保有する株式を含めて3%以上保有している個人株主に要件が変更されます。

以下に、今回の改正について具体例を示しながら解説致します。

令和5年10月以後の取り扱いの具体例

上場会社Aの株式を個人株主Bが1%保有している
個人株主Bの同族会社Cが上場会社Aの株式を2%保有している

上記の場合、個人株主Bの上場会社Aに対する保有割合が1%です。
そのため、令和5年10月より前は大口株主等に該当しません。

一方、令和5年10月以降は個人株主Bが保有する1%と同族会社Cが保有する2%が計算に含まれますので、合計3%保有として個人株主Bは大口株主等に該当します。

今回の改正の意図は?

本改正の意図を上の例にあてはめて説明しますと、同族会社Cに上場株式等を移すことにより、個人株主Bの保有割合を3%未満とすることで令和4年度税制改正前の大口株主等に該当しないようにするという方法がありました。
本改正はこのような手法を封じるものです。

令和5年10月前後における税制上の比較

上場株式等の配当等の課税関係を整理すると以下に示す表の通りです。
大口株主等に該当した場合には下記表の②の申告不要制度および③の申告分離課税を選択することができず、①の総合課税のみとなります。

大口株主等に該当しない場合には①~③の有利な方法を選択することができますので、大口株主等に該当するか否かは大きな論点となります。

大口株主等以外大口株主等
①総合課税(配当控除あり。最高税率約55%)
②申告不要制度(特定口座等で源泉徴収済)
③申告分離課税(税率約20%・損益通算可)
①総合課税(配当控除あり。最高税率約55%)
※少額配当については申告不要

なお、大口株主等に該当しない場合に適用できる②と③の制度についてご説明します。

②の申告不要制度は特定口座内等の約20%の課税関係で完結します。そのため、例として、所得が給料と配当金のみで年末調整において完結している方はこちらの申告不要制度を選択することで確定申告が不要となります。

③の申告分離課税は、上場株式等の譲渡損失があれば上場株式等の配当等との損益通算が可能となります。
そのうえ、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、その年分の翌年以後3年間にわたり、上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除することができます。

令和5年度確定申告における財産債務調書および国外財産調書について

確定申告

令和4年度以前の財産債務調書及び国外財産調書の提出期限はその年の翌年の3月15日でしたが、令和5年度以降の提出期限はその年の翌年の6月30日までとなりました。

なお、財産債務調書の対象者についても改正されています。
令和4年度以前はその年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつその年の12月31日時点で3億円以上の財産等を保有することが要件でしたが、令和5年度以降はその年の12月31日において10億円以上の財産を保有する方も対象者となります

大口株主等に該当する方については、今まで申告不要制度を活用することで各種所得金額の合計額が2,000万円を超えずに申告されていなかった方もいらっしゃるかと思われます。
改正後には、各種所得金額の合計額に限らず10億円以上の財産を保有している方は財産債務調書の提出義務者となりますので、ご留意ください。

おわりに

上場会社の場合、中間配当・期末配当等がありますが、令和5年10月~12月に配当を受け取っていない方も多くいらっしゃるかと思います。
令和6年度確定申告以降は、改正された大口株主等の要件についてご自身が該当するかどうかをご留意ください

なお、各種合計所得金額が2,000万円を超えていなかった方も、その年の12月31日時点で10億円以上の財産を保有する方はその年の翌年の6月30日までに財産債務調書を提出する必要がございますので、大口株主等とあわせてご確認ください。

執筆担当:新宿ミライナタワー事務所
 法人ソリューショングループ 清水 厚志
参考サイト
関連動画

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【令和4年度税制改正】上場株配当における大口株主等の要件見直し

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