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カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

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カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱 炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」

2020年10月26日の菅内閣総理大臣の所信表明演説により、経済ニュースのキーワードとなったカーボンニュートラル。
しかし、その実現のためには、より多くの人に協力をしてもらわなければなりません。

日本の立ち位置と、その政策の観点から税制をみていきましょう。

カーボンニュートラルとは

人類の活動により排出される温室効果ガス(GHG)が地球に与えている悪影響は大きく、次世代のために排出削減が求められるようになりました。

GHGにはCO2の他、メタンやフロンなど6種類のガスが含まれますが、日本のGHGの排出量のうちの85%がエネルギー起源CO2※となっています。

※エネルギーを発生させるために燃料の燃焼することにより排出されるCO2。現在は石炭、石油、ガスなどの化石燃料が多い。

カーボンニュートラルを簡単な算式にすると、下記のようになります。

活動から排出されるGHGの量 ― 削減量/吸収・除去量 = 0

これを企業活動に当てはめてみると、イメージとしては下図のようになります。

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 GHG削減のための企業活動

日本と企業の立ち位置

環境問題に関する国際的な枠組みは、2020年までの「京都議定書」を経て、2020年以降は「パリ協定」に移行しています。
参加締結国はヨーロッパ・アメリカ・中国の他、途上国も含む189か国※という国際的枠組です。

※2021年1月現在。アメリカは一時脱退、2021年1月に復帰表明

パリ協定の長期目標は

  • 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
  • そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる

となっています。

パリ協定はこの目標達成に向けて、すべての参加国に排出量の削減を求めており、日本は自国のみならず、国際的にも主導的な立場となることを期待されています。
日本としては自国の目標達成に向けて、企業の努力・協力を呼び込むことが必須です。

企業の立ち位置としてはどうでしょうか。

企業としても、近年その取引はグローバル化しています。投資家の目線も、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を考慮して投資をおこなう「ESG投資」に向いているため、環境への配慮が不可欠となっています。

このようななかで冒頭の菅内閣総理大臣の所信表明があり、それを皮切りに公的な予算や税、規制・標準化など、さまざまな政策が講じられています。

カーボンニュートラル促進税制

政策の一つとして、令和3年(2021年)度税制改正においてカーボンニュートラル投資促進税制が定められました。

(1)対象資産

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 対象資産イメージ

①大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備への投資

[対象製品]化合物パワー半導体、燃料電池、リチウムイオン電池、洋上風力発電設備のうち一定のもの

②生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備への投資

[計画例]再生エネルギー電力への一部切替えとともに行う、生産設備やエネルギー管理設備の刷新

(2)適用対象法人

青色申告書を提出する法人で認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応事業者であるもの

(1)の対象資産の投資額が大きいため、企業に対し、事前に事業所管省庁への計画申請/認定を求めることとされています。

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 適用対象法人

(3)特典

①設備投資額の50%相当額の特別償却

または、

②設備投資額の5%(エネルギーの利用による環境への負荷の低減に著しく資する一定ものについては、10%)相当額の法人税額の特別控除

※措置対象となる投資額は、500億円まで。控除税額は、別に規定されたDX投資促進税制と合計で法人税額の20%までとなっています。

(4)適用期限

令和6年(2024年)3月31日までに設備投資をし、かつ事業用に供した場合に、適用を受けられます。

※原則2020年、2021年のコロナ禍で欠損となった大法人についても、カーボンニュートラルの設備投資を行う場合は、
事業所管省庁への計画申請/認定を要件として繰越欠損金の控除額を50%+投資額(控除上限は100%)に引き上げることとされています。

おわりに

本税制は投資額が大きいため、なかなか身近に感じられないものですが、2050年の排出量0を目指して脱炭素社会を目指す政策は形を変えても長く継続していくと思われます。
日本のみならず、世界の大きな投資には必ずこの政策が絡んでくることになるでしょう。

一方、脱炭素に向けて、身の回りのチャレンジでは「クールビズ」「ウォームビズ」「省エネ製品を選択する」「省エネに努める」ことも変わらず有効です。

企業活動のみならず、私たち一人一人の行動も問われていくことになります。

執筆担当:新宿ミライナタワー事務所 FP部 金子 敦子

 

<参考サイト>
【「環境・持続社会」研究センター(JACSES)】気候変動をめぐる国際動向
【経済産業省】令和3年度(2021年度) 経済産業関係 税制改正について
【国税庁】令和3年度法人税関係法令の改正の概要 第1編 法人税法等に関する改正

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