不動産から地金まで!相続財産を売却したら確定申告が必要?
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この記事をご覧いただく方は、以下のような悩みや疑問をお持ちかと思います。
「親から不動産を相続したが、遠方にあって管理も手間がかかり自分たちの住む家も既にあるので売却したい」
「株や投資信託を相続したが、資産運用には興味がないので売却したい」
「相続税を払ったのに、売却でも税金がかかるって本当? 確定申告をしなくてはいけないの?」
今回は相続によって引き継いだ財産を売却した際にかかる税金や、確定申告での注意点をまとめました。空き家特例や相続税の取得費加算といった特例が適用できれば、納める税金を抑えられるかもしれません。
相続した不動産、株、投資信託、金地金を売却することでかかる税金「譲渡所得」
相続した不動産、株、投資信託、金の延べ棒などの金地金を売却すると「譲渡所得」となり、譲渡所得に税金がかかってきます。
譲渡所得は以下の計算式で求められます。
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除
売却価格:資産を売却した金額
取得費:資産の購入にかかった費用(購入代金、仲介手数料、登録免許税など)
譲渡費用:売却にかかった費用(売却時の仲介手数料、印紙税など)
特別控除:一定の要件を満たす場合に差し引ける金額 (空き家特例など、後述)
譲渡所得の算出にあたっての共通ルール
相続財産を売却した際発生する譲渡所得の算出にあたっては、3つの共通ルールがあります。
- 取得費は相続前の所有者(亡くなった方)の購入価額を引き継ぎます。相続税評価額でも時価でもないことに留意しましょう
- 相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」があります(3年10か月以内の売却に限る)
- 取得費が不明の場合、売却価格の5%が取得費となります
相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」とは?
取得費加算の特例とは、売却額から差し引くことができる取得費に、納めた相続税の一部を加算することで譲渡所得額を抑えることができる制度です。
ただし、相続税がかからず納税額が0円だった場合はこの制度を適用できないことに留意してください。
取得費加算の特例を受けるための要件は、以下の3つです。
- ①相続や遺贈(遺言で特定の人に財産を贈ること)で財産を取得していること
- ②その財産を取得した人に相続税が課税されていること(相続税を納めている)
- ③その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
売却する財産別のポイント
売却する財産ごとに、その税率とポイントをまとめました。
| 種類 | ポイント | 税率 |
|---|---|---|
| 不動産 |
|
5年超:20.315% 5年以下:39.63% |
| 株 |
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20.315% |
| 投資信託 |
|
20.315% |
| 金地金 |
|
給与所得など他の所得と合わせて総合課税の対象となる※ 税率は15%~55% |
※ 金地金の譲渡が営利を目的として継続的に行われている場合には、譲渡所得ではなく事業所得または雑所得として扱われます
空き家を売却する場合に検討したい「空き家特例」
近年、空き家が増加しており安全や環境面などさまざまな観点から全国的な問題になっています。
現在誰も住んでいないお家を相続され、将来的にも住む人がおらず売却を検討する場合には、要件を満たせば3,000万円の控除を受けられる「空き家特例」について確認をお勧めします。
この特例は税負担の軽減効果が大きいのですが、その要件は「昭和56(1981)年5月31日以前に建築されたこと」「一定の耐震基準を満たすこと」等少々シビアとなっています。
また、相続税の取得費加算の特例とは重複して適用することができませんので、どちらか有利な方を選択して適用すると良いでしょう。
詳しい要件については国税庁Webサイトと特例適用可否を判断できるチェックシートをご参考ください。
売却時・確定申告時の注意点
「小規模宅地の特例」を適用する土地は、申告期限前に売却すると特例が使えなくなる

小規模宅地の特例とは、相続税申告において要件を満たすと相続した土地の評価額を50~80%減額できる制度です。
この特例適用の要件には「その宅地等を相続税の申告期限まで有していること」とあります。
売却する予定の土地に、小規模宅地の特例を適用して相続税申告をする場合、申告期限前に売却をしてしまうと特例を適用することができなくなってしまいます。
逆に、小規模宅地の特例を適用しない土地であれば申告期限を待たずに売却しても構いません。
不安な場合は、相続税申告を依頼している税理士へ「相続する土地をすぐに売却して問題ないか?」と確認してから手続きすることをおすすめします。
5年以下、5年超の基準はいつになる?
不動産の保有期間について、売却した年の1月1日時点で5年を超えるか超えないかが基準となります。
不動産を売却した日(売買契約を締結した日)ではないことにご留意ください。売買契約をして引き渡した時点では5年超でも、1月1日時点で5年以下ですと高い税率での納税となってしまいます。
その不動産、共有名義になっていませんか?
複数の相続人で共有名義となっている不動産を売却した場合、それぞれの相続人がご自分の共有持ち分に応じて確定申告をしなくてはなりません。
不動産の登記簿謄本で確認することができますので、売却をする前に共有名義になっていないか改めて確認することをおすすめします。
名義変更をするだけだったはずなのに? 代行時には行き違いに注意
相続した財産を売却するつもりはなかったのに、遺産整理手続きを代行したところ誤って売却されてしまい、確定申告をして税金を納付しなくてはならなくなった、という本来ならあってはならないことも稀に起こり得ます。
ご自身で手続きをする際はもちろんのこと、遺産整理として代行してもらう場合は、しっかりと自分の意思を伝えて行き違いのないようにしましょう。
おわりに
財産の取得価額が分からないまま売却手続きをしたことで多額の譲渡益が出てしまい、税金を多く納めることになってしまった……とならないように、取得費が分からない場合は、売却を進める前に一度証券会社や金地金の購入元である貴金属店等に確認をしましょう。
他にも、「申告に必要と思われる書類を取り寄せたけれどどこを見ていいのか分からない」「相続税申告をしたが取得費加算の特例が適用できるか、いくらを取得費として加算すればいいのか自分では判断ができない」そんな場合も、ぜひ辻・本郷 税理士法人までお問い合わせください。
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