持ち込み課税の解釈が厳格化したタイ居住者の所得税務、新ルールへの対応策

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持ち込み課税の解釈が厳格化したタイ居住者の所得税務、新ルールへの対応策

タイでのビジネスや生活において避けて通れないのが、個人所得税の管理です。

2024年以降、国外源泉所得の持ち込み課税に関する解釈が厳格化されるなど、制度は大きな転換期を迎えています。
本稿では、居住者判定の基準から、日本独自の「年末調整」がないタイ特有の確定申告プロセス、駐在員が留意すべき手取り保証の仕組みまでをご紹介します。

居住者と非居住者の区分

まずは居住者と非居住者の定義がどのようになっているかを確認しましょう。

居住者の定義

タイにおける居住者の定義はシンプルで、年間で180日以上タイに滞在すると居住者とみなされます
居住者は、タイ国内源泉所得と、2024年以降に発生したタイ国外源泉所得を「タイへ持ち込んだ場合」に課税対象となります。

非居住者

180日未満の滞在者は非居住者とされ、タイ国内源泉所得のみが課税対象です。

国内源泉所得と国外源泉所得の定義

タイ国内源泉所得の定義

タイ国内での職務もしくは事業活動、タイ国内の雇用主の事業活動またはタイ国内に所在する資産に起因して生じた所得のことを言います(給与やボーナス、不動産所得、利子・配当など)。

タイ国内源泉所得に該当する場合は、タイに居住していなくても、日本円などの通貨で受け取ってもタイで課税対象となります。

タイ国外源泉所得の定義

タイ国外に起因する同様の所得を指します。

タイ国内源泉所得 タイ国外源泉所得
居住者 課税対象 原則課税対象外(タイ国内に持ち込んだ場合は課税)
非居住者 課税対象 課税対象外

福利厚生費の取り扱い

福利厚生費の取り扱い
ilixe48 / PIXTA(ピクスタ)

タイは課税所得の範囲が広く、雇用に起因する個別の従業員への恩恵(住宅手当、教育手当、通勤費など)は給与とみなされ課税対象となります

日本の親会社が負担するタイの駐在員の海外旅行保険なども、タイでの個人所得税課税対象とみなされています。

税率と控除

タイの個人所得税は累進課税で0%〜35%まで段階的に設定されています。なお、住民税はありません。

課税所得金額(バーツ) 税率
0~150,000 0%
150,001~300,000 5%
300,001~500,000 10%
500,001~750,000 15%
750,001~1,000,000 20%
1,000,001~2,000,000 25%
2,000,001~5,000,000 30%
5,000,001以上 35%

おもな所得控除

本人控除 60,000バーツ
配偶者控除 60,000バーツ(タイで60,000バーツ以上の収入のない配偶者)

配偶者の方が日本に住んでいて収入があっても、タイ居住者の確定申告において配偶者控除は認められると判断されています。

子供控除 1人あたり30,000バーツ(2018年1月1日以降に生まれた第2子以降は60,000バーツ)

※参考:タイ在住180日未満のタイ非居住者は、原則として配偶者控除や子供控除は利用できません。年の途中でタイに赴任された方や帰任された方は注意が必要です。

そのほか、老親扶養控除、生命保険料控除、退職投資信託控除、寄附金控除などがあります。

確定申告の必要性

日本のように年末調整で完結する制度はないため、タイで給与のみを受け取っている場合でも確定申告が必要です

納税額の有無に係わらず、前年度の所得について個人所得税の確定申告書を提出する義務がある対象者
配偶者なし 所得が60,000バーツ超、または給与所得が120,000バーツ超
配偶者あり 所得が120,000バーツ超、または給与所得が220,000バーツ超

タイ子会社で働いている駐在員の場合、日本の親会社から受け取る給与も合算して申告する必要があります。合算により追加所得税が発生する可能性があるため、注意が必要です。

合算した際に発生した追加所得税額も大きいため、駐在員の負担が増えないよう手取保証(タックスオンタックス)で計算し、会社負担とするケースが多々あります。

その場合は追加申告所得(日本で受け取った給与)の約40%~50%をタイ税務署に納税する必要があります。損益計算書にも経費として計上され、納税も発生するため、資金繰りにもご留意ください。

ビザの手続き等で申告不要のステータスでも、申告が必要になることがありますので、ビザ申請を専門に行っている行政書士や弁護士などの専門家に確認をおすすめします。

紙での申告(PND90/91) 毎年3月31日までに提出
電子申告(E-Filing) 毎年4月8日まで(2027年1月31日までの限定延長措置)

紙またはオンラインのいずれかで申告可能です。
タイ国税庁ウェブサイトのE-Filingシステムを活用すれば、オンラインで手続きが完結できます。

税務署からの指摘とリスク

申告漏れや不正確な情報があれば、税務調査が実施され追加の税金や罰金が科される可能性があります。
個人所得税の還付を求めた際に、パスポートの出入国データや日本の所得詳細など追加書類の提出を求められたケースもありました。

※参考:扶養の証明をするためには、一般的には日本で戸籍謄本を取得し、在タイ日本大使館で英語翻訳をする必要があります。

[2024年以降の改正]居住者が海外所得を持ち込んだ場合、課税対象になる

タイ居住者は、2024年以降に発生したタイ国外源泉所得をタイに持ち込んだ場合、原則課税対象となります

以前は、年をまたげば持ち込んでもタイで課税されない(2022年に受け取った給与、年金、土地売却代金などを2023年にタイに送金するなど)と解釈されていました。このため大幅な改正となりました。

おわりに

2024年からの国外所得への課税強化により、タイの個人所得についての税務環境は大きく変わっています。法人についても駐在員の日タイ給与合算時に発生する「手取り保証」に伴うコスト増は、タイ拠点の資金繰りに直結する経営リスクです。

不正確な申告は、個人・法人ともに追徴課税などの悪影響を招く恐れがあります。
私たち辻・本郷 税理士法人はタイ現地に事務所があり、現地の事情に精通したスタッフがおりますのでぜひご相談ください。

執筆担当: タイ会計事務所 井口 将来

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