令和7年度税制改正 エンジェル税制の活用方法と確定申告のポイント
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皆さんは「エンジェル税制」という制度について聞いたことがありますか。この記事では、エンジェル税制の基本的な仕組みとそのメリット、確定申告方法について説明するとともに、令和7年度の税制改正に伴う新しい変化についても解説します。
エンジェル税制とは
エンジェル税制は、個人投資家(エンジェル投資家)が、成長性が高いベンチャー企業に投資した場合、その投資時点またはその株式を売却する際に受けられる税制上の優遇措置です。
この制度の目的は、リスクを取って新興企業に資金を提供する投資家を支援することにより、イノベーションの促進や経済の活性化を図ることにあります。
とくにベンチャー企業やスタートアップにとっては、資金調達の一つであり、重要な手段となります。
そのため、エンジェル税制は投資家に対して税制上の優遇措置を提供することで、企業の成長を支援する役割を果たしています。
エンジェル税制によるメリットと確定申告

エンジェル税制のメリットは、投資額を所得金額から控除できるといった優遇措置を受けられることです。優遇措置は投資する企業によって異なるため、投資先がどの優遇措置の対象となるか投資前に注意する必要があります。
①優遇措置A
創業初期(設立5年未満)の中小企業者のうち、設立年度ごとに一定の要件を満たしている企業への投資を対象とした優遇措置です。このタイプでは、企業が成長段階にあるがまだ安定していない段階で、個人投資家が支援することを奨励しています。
優遇措置内容
(投資額-2,000円)をその年の総所得金額から控除できます。ただし、800万円または総所得金額×40%のいずれか低い金額が上限です。
②優遇措置B
設立から10年未満であり、成長を遂げつつある企業に対する投資を対象とした優遇措置です。このタイプでは、企業がより安定した成長をしている段階で、投資家に対して税制上の優遇を提供しています。
優遇措置内容
投資額をその年の株式譲渡益から控除できます(上限なし)。
③プレシード・シード特例
設立5年未満であり、営業損益0未満等の初期段階のベンチャー企業への投資を対象とした優遇措置です。
優遇措置内容
投資額をその年の株式譲渡益から控除できます。ただし、上限は年間20億円です。
投資家が税制上の優遇措置を受けるためには、投資先が定められた条件を満たしている対象企業である必要があり、かつ、確定申告が必要です。
確定申告では、投資先から受領する証明書類等を準備しなければなりません。また、優遇措置Bとプレシード・シード特例に関しては、株式譲渡益からの控除となるため、譲渡益が発生していない場合には控除が受けられない点に注意して、計画的な投資と譲渡が必要になります。
令和7年度の税制改正のポイント

令和7年度の税制改正では、エンジェル税制に関連する変更が盛り込まれました。令和8年1月1日以降に取得した株式が適用対象となります。おもな改正内容は以下の通りです。
繰戻し還付制度の創設
これまで、エンジェル税制の優遇措置を受けるためには、株式譲渡益が発生した年にスタートアップへの投資を行う必要がありました。
とはいえ、譲渡益が発生した年にスタートアップへの投資が可能であるとは限りません。
令和7年度の税制改正では、保有している株式を譲渡し、スタートアップへの再投資の更なる促進を目的とした、繰戻し還付制度が創設されました。この制度では、譲渡益発生年の翌年末までに再投資を行った場合、譲渡益発生年に遡って投資額相当額を譲渡益から控除することが可能になります。
ただし、この制度を利用するにはスタートアップへの投資を行う前年に発生した株式譲渡益に関して、確定申告が必要です。
再投資非課税措置の適正化
健全な利用促進を図るために、株式を取得した翌年末までの保有期間を設定することとなりました。これにより、株式を取得した年の翌年に譲渡した場合には取得価額が調整されます。
おわりに
今回は、エンジェル税制の活用方法についてご紹介いたしました。
エンジェル税制はベンチャー企業への投資を支援し、企業の成長を促す重要な税制優遇措置であり、令和7年度の税制改正によって、投資家へのインセンティブが一層強化されることが期待されています。
しかし、この制度を活用して、税制優遇を享受するには、計画的な譲渡と投資、そして、確定申告による適切な手続きを行うことが必要です。
「ベンチャー企業への支援には興味があるが、確定申告等の手続きには不安がある」といったモヤモヤを抱えていらっしゃる方はぜひとも、一度私たち辻・本郷 税理士法人にご相談ください。

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