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研究開発税制~試験研究費の特別控除について~

  • 法人税

研究開発税制 試験研究費の特別控除について

研究・開発を行う法人がぜひ知っておきたい制度に、研究開発税制があります。

当制度には、法人が支出する試験研究費の一部を法人税額から控除できるという規定があります。
イノベーション創出に繋がる中長期・革新的な研究開発等を促し、日本の成長力・国際競争力の強化を目的としています。

自社製品の開発・製造などで試験研究を行っている法人では、規模の大小に関わらずこの制度を利用しているところは多いと思います。近年、多くの改正が入り、控除額や範囲が変化しています。

この記事では、令和3年4月1日以後に開始した事業年度の試験研究費の特別控除についてまとめました。

控除額の計算構造

中小企業者等以外の法人は、以下のAB-1を、中小企業者等は以下のAB-2の適用を受けることができます。どちらも青色申告をしている法人が対象となります。
なお、中小企業者等とは、期末の資本金が1億円以下の法人(大規模法人が株主にいる一定の法人を除く)をいいます。

A:特別試験研究費の額に係る税額控除制度(オープンイノベーション型)

特別研究機関や大学などの機関と、法人とが共同で行う共同試験研究や委託試験研究においては、一定の要件を満たすものは控除率が高くなります。

なお、このオープンイノベーション型においては、試験研究費はB-1B-2の計算をする際の試験研究費からは除くことになります。

【控除額】試験研究費の額×控除率(対象となる相手先により20%~30%)

【控除上限】法人税額×10%

B-1:試験研究費の総額に係る税額控除制度(一般型)

中小企業者等の法人は、次に紹介するB-2の適用を受ける方が有利です。よって、B-1は中小企業者等ではない法人が適用されることになります。

【控除額】試験研究費の額×控除率(2~14%※)
※増減試験研究費割合により変動します。

【控除上限】法人税額×(25%+上乗せ)

B-2:中小企業技術基盤強化税制

中小企業者等の法人が適用できる制度で、控除率がB-1の一般型より高くなります。

【控除額】試験研究費の額×控除率(12~17%※)
※増減試験研究費割合により変動

【控除上限】法人税額×(25%+上乗せ)

増減試験研究費割合と控除率

増減試験研究費割合とは、過去3年間の平均試験研究費に対する試験研究費が増加した割合です。
増減試験研究費割合の研究開発投資目標を国が決めており、値が目標の9.4%に達していれば、控除額の率は10.145%となります。

この9.4%:10.145%を基準として、増減試験研究費割合が9.4%を上回れば控除額の率は10.145%より上がり最大14%となります。
増減試験研究費割合が9.4%を満たなければ、控除額の率は10.145%より下がり、最小2%となります。

なお、中小企業技術基盤強化税制の場合は、9.4%:12%を基準として、12%が下限となります。
そのため下がることはなく、増減試験研究費割合が9.4%を上回れば控除額の率は12%より上がり最大17%となります。

B-1とB-2の控除上限の上乗せ

控除上限の率は、以下の条件を満たす場合、それぞれ上乗せすることが可能です。

  • その事業年度含め4年間の平均売上金額に占める試験研究費の割合が10%超の場合
    →最大10%上乗せ
  • コロナ前(2020年2月1日より前に終了する事業年度)と比較し、売上が2%以上減少しているにも関わらず、試験研究費を増加させた場合
    →5%上乗せ
  • 増減試験研究費割合が9.4%を超える場合
    →10%上乗せ(中小企業技術基盤強化税制のみ)

試験研究費とは

研究開発税制 試験研究費の特別控除について

今回の改正は、従来からの製品・技術開発に係る試験研究費のほか、サービス開発に係る試験研究費も対象となるなど、デジタル化やビジネスモデルの変化を後押しする傾向にあります。

製品・技術開発に係る試験研究費について

対象となる研究は、工学的・自然科学的な研究で、人文・社会科学関係の研究は対象とはなりません。例えば、営業活動や経営管理、工程管理のためといった研究は工学的・自然科学的な研究ではないため、対象とはなりません。
よって、工学的・自然科学的な研究の試験研究を行うために要する原材料費、人件費および経費を集計することになります。

人件費については、専門的知識をもって試験研究の業務に専ら従事する者に対するもののみが対象となります。
ただし、新製品だけに限らず、製造中の製品、既存の技術の改良等、日常的に工場などで行われている試験研究も含まれますので、対象となる費用の範囲は比較的広いと思います。

工学的・自然科学的な研究については、以下の3つの区分に分けて考えることができます。

  • ①基礎研究:学術論文で発表されるような原理原則の研究
  • ②応用研究:基礎研究を実用化や応用化するもので、具体的な製品には至らない段階の研究
  • ③工業化研究:製品化のめどがついた研究や既存の製品等に対する改良・研究

研究内容で「①基礎研究」、「②応用研究」になるものは、期間費用として、その事業年度の試験研究費になります。
「③工業化研究」については、この区分に該当することが明らかな研究は、製造原価に含める必要があります。ただし、明らかでなければ製造原価に含めず、期間費用とすることが可能です。

工業化研究に該当することが明らかな研究は、棚卸資産や固定資産として資産計上を検討する必要があります。固定資産となった試験研究用の資産は、その資産の減価償却費が試験研究費として税額控除の対象となります。
また、自己研究以外にも、委託研究、共同研究で負担した費用も対象となり、受託研究で外部から受け取る金研究費から控除することになります。

サービス開発に係る試験研究費について

平成29年度の税制改正で、試験研究費に第四次産業革命型サービス開発にかかる費用が追加されました。
対価を得て提供するものなので、社内の業務の改善は対象とならず、新たな役務の開発なので、既存サービスの改良や改善も対象となりません。

次の4項目すべてが行われる計画で、工程が事前に決定していれば試験研究費になります。

1 データの収集 センサー等を活用して自動的にさまざまなデータを収集
2 データの分析 情報解析専門家が、AI等の情報解析技術によってデータを分析
3 サービスの設計 データの分析によって得られた一定の法則性を利用した新たなサービスを設計
4 サービスの適用 サービスの再現性を確かめる

例として提示されているのは、「ドローンを活用して収集した画像データ等を組み合わせて分析し、より精緻でリアルタイムな自然災害予測を通知するサービス」といったものです。

AIを駆使して大量のデータを集めて解析し、その結果を役立てていくようなサービス提供を行う事業を考えている場合、試験研究費にあてはまる可能性があります。

令和3年の税制改正による追加点

市場販売目的の、いわゆるパッケージソフトフェアの開発は、これまでも税額控除の対象でしたが、クラウドを通じてサービス提供を行う自社利用ソフトウェアの製作に要した試験研究費も対象に追加されました。
市場販売目的のソフトウェアとは、製品マスター(複写可能な完成品)を制作し、これを複写したものを販売するものをいいます。

しかし、同様に販売目的であってもクラウド環境で提供するソフトウェアは、原本をクラウド等に保存し、インターネットを通じて顧客にアクセスさせるため、「製品マスター」を「複写して販売する」ものとはいえません。

ことのことから、クラウドでサービスを提供するソフトウェアの場合、市場販売目的ではなく、「自社利用目的のソフトウェア」に区分されていました。そのため取得価額として資産計上され、試験研究用のソフトウェアでない場合は試験研究費として税額控除の対象とならない状態でした。

令和3年の税制改正では、これまで取得価額に含まれて費用扱いにならず、認められていなかった部分についても試験研究費に該当することになりました。

最後に

中小企業者等については、都道府県税や市町村民税も、試験研究費の税額控除後の法人税額を元に計算されます。よって、この制度を利用すると税額に大きく影響します。
研究・開発を行う法人が本税制を活用し、今後もさらに技術を発展させ、アイディアを形にしていけることを願っています。

私たち税理士は、みなさまが試験研究費の税額控除など税制上の優遇規定を最大限に利用できるよう、サポート致します。

執筆担当:北九州事務所 江原 里恵

【参考資料】
【経済産業省】経済産業省 研究開発税制について

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