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2023年には金が高値更新!売却したら税金はどうなる?

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2023年には金が高値更新!売却したら税金はどうなる?

金の国内小売価格が、2023年8月に史上初の1グラム1万円の大台を突破しました。
世界情勢やドル円相場の影響で価格は変動しますが、2000年以降は値上がりを続け、2023年9月までの20年でおよそ10倍に上昇しています。

こうした金価格の高騰により、手持ちの金地金(きんじがね=インゴット)を売って利益が出た場合の税金はどのくらいかかるのかというお問い合わせが多くなりました。

今回のトピックスではおもに一般の会社員など、個人の方が金を売却するときの税金をわかりやすく説明します。

金を売ったら、売却利益に対して税金がかかる

金を売った時にかかる税金は、売った金額すべてに税金がかかるわけではありません
買った時の金額や売る際にかかった費用を差し引いた差額(利益)が税金の対象となります。

具体例として、「100万円で購入した金を300万円で売却した場合」は、差額(利益)の200万円に対して税金がかかります。
計算式は以下になります。

売った金額 - 買った金額 = 差額(利益)

数値をあてはめると以下の通りです。

300万円 - 100万円 = 200万円

購入価格がわからない場合

金の購入価格がわからない場合

両親や祖父母から相続した金を売ったときなど、購入当時の金額がわからない場合は「売った金額の5%」を、購入時の金額として計算します。
相続などで金を取得した場合は、先代の取得価額を引き継いで計算します。

売った金額 - 買った金額 = 差額(利益)

数値をあてはめると以下の通りです。

300万円 -(300万円 × 5%)= 285万円

この場合は、285万円が税金の対象となります。

買った金額が不明の場合は、税金を計算する上で不利になることがあるといえるでしょう。
金地金や金貨を購入した場合には、領収書や買付明細などの書類を保存しておくことが大切です。

ただし金地金や金貨の種類によっては、製造メーカーや地金番号なども購入金額の手がかりとなる場合があります。
取得価額を証明するものがない場合は税理士に相談してみるのもおすすめです。

税金の計算① 課税所得

では、具体的に税金がどれくらいかかるのかみていきましょう。

計算方法は、金を持っていた期間によって変わります。
先ほどの具体例では、以下の2つのケースに分けられます。

パターン1/所有期間 5年以内の場合

売った金額 - 買った金額 - 特別控除50万円 = 課税所得

数値をあてはめると以下の通りです。

300万円 - 100万円 - 50万円 = 150万円

パターン2/所有期間 5年超の場合

下記の計算式からわかるように、5年以上所有して売却したほうが税計算上は有利です。

(売った金額 - 買った金額 - 特別控除50万円)× 1/2 = 課税所得

数値をあてはめると以下の通りです。

(300万円 - 100万円 - 50万円)× 1/2 = 75万円

税金の計算② 課税所得×税率

税金の計算1で算出された課税所得に、税率をかけると税金がわかります。

(課税所得 + 給与所得など) × 税率 = 税金

この「税率」はいくらになるのでしょうか。

給与所得など他の所得がある場合、すべての所得の合計金額により税率が決まります。
所得税は所得金額に応じて5%から45%、住民税は一律10%です。

したがって、課税所得に15%から55%の税率をかけたものが税金となります。(復興所得税は別途)

例えば、給与収入が年間400万円、金の売却による所得が150万円の方の場合、約55万円の税負担になります。

※社会保険料等控除後の合計所得318万円で試算、家族構成や支払保険料等の諸条件により異なります。
 復興特別所得税が別途上乗せされます。

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円~330万円以下10%97,500円
330万円~695万円以下20%427,500円
695万円~900万円以下23%63万6,000円
900万円~1,800万円以下33%153万6,000円
1,800万円~4,000万円以下40%279万6,000円
4,000万円以上45%479万6,000円

金の売却で年間50万円以上の利益が出たら確定申告が必要

金の売却で年間50万円以上の利益がでたら、翌年の3月15日までに確定申告が必要です
金を売却すると、一回あたり200万円を超える取引について買取業者は「金地金等の譲渡の対価の支払調書」(下図)を税務署に提出します。

このため申告が漏れている場合、後日税務署から「●月頃に金を売却しましたよね? 申告が漏れているようです」と指摘を受けることがあります。

金地金等の譲渡の対価の支払調書

金の売却で年間50万円を超える利益があっても、確定申告が不要になる場合もある

金の売却で年間50万円以上の利益が出たら確定申告が必要

金の売却で年間50万円を超える利益が出る場合でも、確定申告が不要なケースがあります
以下の条件を満たす給与所得者です。

①年収2,000万円以下の年末調整対象者
②給与所得以外の所得の合計額が20万円以下
(金の売却の場合は、利益から特別控除50万円を差し引いた金額)

ただし、住民税の申告は必要です。
住民税申告は、1月1日に住民登録をしている市区町村に「住民税申告書」を提出することで行います。
提出場所はお住まいの自治体によって異なります。必要書類は、事前にホームページや市区町村窓口で確認されるとスムーズです。

金価格に連動する有価証券を売って利益が出た場合

銀行や証券会社等の金融機関が扱う「金投資口座」や「金貯蓄口座」などからの利益は金地金の売却とは異なり、金融類似商品の収益として一律20.315%(地方税5%含む)の税率による源泉徴収だけで済みます。
この場合、他の所得と合算して確定申告をすることはできません。

おわりに

価値が下がりにくいとされ、高値で話題の金ですが、金地金の売買を事業として行っていたり、個人の場合でも営利目的で継続的に利益を得ている場合、税金の計算方法が異なります。

そのほか損失が生じた場合など税金の取扱いにご不明な点がございましたら、辻・本郷 税理士法人までお気軽にお問い合わせください。

執筆担当:福岡事務所 立川 祐子

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