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タイ国でのPE認定について

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タイ国でのPE認定

PEとは

国際租税法上の原則として、非居住者・外国法人の所得に対しては、国内の恒久的施設(Permanent Establishment(PE)注1)を通じて事業を行わない限り、源泉地国は課税できないとする、「PEなければ課税なし」というルールがあります。

日タイ租税条約第7条1項第1文にこの規定があり、日本国-タイ国間においても、この原則が適用されます。
従いまして、タイ国において事業を行う日本企業の観点から見ますと、タイで事業を行っていても、タイ国内にPEが無ければ、タイの税務当局は当該日本企業のタイ国内での事業所得に課税できないルールです。
他方で、日本企業がタイ国内で稼得した、利子、配当、使用料といった投資所得については、主に源泉徴収の課税方式により、タイの税務当局は課税する事ができます。

タイ国歳入法上にも、PEについての規定があります。歳入法第76条の2(Bis)にて、「外国の法律に基づき設立された会社・・・が、タイ国内において事業を行うため使用人、代理人または仲介者を置きタイ国内において利得または所得を生じている場合は、かかる会社・・・は、タイ国内において事業を営んでいるものとみなされ、・・・本節に規定する申告書の提出および納税の義務と責任を負うものとする。」と規定されております。

タイ国内に代理人等を置いて、タイ国内で事業を行い、所得を得ている場合は、タイでの申告納税義務があるとの意になります。

注1 PE
Permanent Establishment (恒久的施設)の略で、事業を行う一定の場所等をいい、非居住者および外国法人の事業所得に対する課税の根拠となるものです。一般に非居住者および外国法人が国内で事業を行っていても、当該国内に恒久的施設を有していない場合には、その非居住者および外国法人の事業所得は課税されません。「恒久的施設なければ課税なし」と呼ばれ、事業所得課税の国際的なルールとなっています。

日タイ租税条約上のPEの規定

PEの有無については、租税条約の規定が、国内法の規定を修正するルールとなっておりますので、タイ国内でのPEの有無の判定は、主に租税条約の規定を参照する事になります。日タイ租税条約第5条にPEの定義が規定され、以下の4つの種類が規定されています。

1. 事業所PE
2. 建設PE
3. 役務提供PE
4. 代理人PE

以上の4つのうちいずれかでもタイ国内に存在すると認定されれば、そのPEに帰属する所得は、タイ国において、申告納税する必要があります(帰属主義、日タイ租税条約第7条1項第2文)。

PEに帰属する所得は、そのPEがあたかも独立企業であるかのようにして、第三者や本店と取引した場合のそれを基準として算定されます(日タイ租税条約第7条2項)。従いまして、タイ国内法人と同様に、一般管理費等経営上生じた費用については、課税所得計算において、損金算入が可能です。

しかし、タイにおいて、PE認定を受けた場合は、PE帰属所得計算の困難さもあり、推計課税を受ける事となり(歳入法第76条の2(Bis)2項)、課税額は税務当局との交渉によるところが大きい状況です。

タイ国内でのPE認定の事例

タイにおいて、実際に税務当局によって指摘を受けている事例が多いものとして、上記「3.役務提供PE」の認定があります。このPEは、コンサルティングを含む役務提供が任意の12カ月の間に6カ月超行われる場合について、タイ国内にPEが存在するとするものです。

事例として、日本親会社からタイ子会社への出向者が、日本親会社の役務提供PEと認定されるケースが発生しています。日本親会社からの出向者は、本来的には出向先子会社のための業務に従事していると考えられます。

しかし、その職務の実態によっては、タイの税務当局は、当該出向者が、タイ子会社に対してコンサルティング業務に従事していると認定し、そのコンサルティング料に相当する金額について、課税するケースがあります。

上記のタイ子会社出向者が日本親会社のPEとして認定されるリスクへの対応としては、出向者があくまでもタイ子会社のための業務に従事している事を示す事がポイントです。また、実態面のみならず、形式面の対応も必要と考えられます。

例えば、タイ子会社との雇用契約書や出向契約書の整備、出向者のタイ子会社の組織図への記載があげられます。また実態面においては、当該出向者が子会社の指揮命令系統から外れ、親会社からの指示に基づいて業務を行っている場合は、注意が必要です。

実際の事例として、日本親会社の役員が、タイ子会社に出向するケースで、このPE認定が発生しています。タイ子会社において、WP取得に必要な最低限の給与(5万バーツ)しか支給されず、日本親会社での支給が全額役員報酬であったケースです。法的にはこの役員報酬はタイ国内源泉所得ではないため、タイでの申告義務がありません(タイは個人所得税については、タイ国内に持ち込まれた所得を除いて、国外所得免除のルールです)。

従いまして、当該出向者の所得は、上記5万バーツについてのみしかタイでは課税されません、一方で、タイ子会社はそれ以上の便益を受けている状況であり、税務当局はその点を問題視したと思われます。

終わりに

PE認定については、駐在員事務所が実質的な営業活動を行っている場合等にも行われるリスクがあります。PE認定を受けた後のPE帰属所得についての推計課税については、金額が大きくなる傾向があります。
法人所得税等の過度な節税が、PE認定を始めとした、税務当局よる強引な課税につながる傾向がありますので、留意が必要です。

辻・本郷 税理士法人 タイ事務所
https://www.ht-tax.or.jp/corporate/branch_oversea/thai/

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