財産債務調書とは?令和6年2月7日裁決事例から考える正しい書き方

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財産債務調書とは?令和6年2月7日裁決事例から考える正しい書き方

この記事では財産債務調書の基本を説明し、財産債務調書の記載内容が争点となった最新の裁決事例(令和6年2月7日裁決)を参考に、財産債務調書の正しい書き方について考えていきます。

財産債務調書とは

高額な資産を持つ人の適正な課税を確保する観点から、所得および資産額が一定の基準を満たす方に対し、その保有する財産および債務に係る調書(財産債務調書)の提出が求められます。

項目 内容
提出義務者 所得税の確定申告書を提出する必要がある方または還付申告書を提出することができる方で下記2例にあてはまる方

①対象年分の退職所得を除く所得金額の合計が2,000万円超
かつ、対象年の12月31日時点で、保有財産の合計額が3億円以上、または国外転出特例対象財産(有価証券等)の合計額が1億円以上
②対象年の12月31日時点で財産の合計額が10億円以上

提出期限 対象年の翌年の6月30日
提出先 対象年の12月31日における住所地の所轄税務署(所得税の納税地を所轄する税務署長)
記載内容 ①財産債務を有する本人の情報
 氏名・住所・マイナンバー・電話番号など
②財産の情報
 18個に分類
 財産ごとに、用途(事業用/一般用)、所在、数量、金額などを記載
③財産ごとの詳細
 財産ごとに必要な情報や書類を準備し、記載

例)
土地・建物:固定資産税の納税通知書を参照し、地目や用途、所在地、面積、評価額など
有価証券:証券会社の取引残高報告書を基に、種類や銘柄、所在、取得価額および12月31日時点の時価など
※一部の少額財産債務の記載を省略可能
例:取得価額300万円未満の家庭用財産(現金・美術品等を除く)

その他 提出時には、財産債務調書合計表の添付も必要

※国税庁「No.7457 財産債務調書の提出義務」の内容を筆者が要約して平易な言葉で記載

また、財産債務調書は、税務当局が富裕層の資産を正確に把握するという目的があります。適正な提出を促すために、軽減措置と加重措置が設けられています

  • 財産債務調書を提出期限内に提出がある場合:財産債務調書に記載がある財産または債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときは、過少申告加算税等が通常より5%軽減
  • 財産債務調書を提出期限内に提出がない場合、または提出された財産債務調書に記載すべき財産もしくは債務の記載がない場合:財産または債務に関して所得税の申告漏れが生じたときは、過少申告加算税等が通常よりも5%加重

所有株の銘柄や数量まで記載すべき? 国税不服審判所「令和6年2月7日裁決」

国税不服審判所「令和6年2月7日裁決」

財産債務調書の記載内容を争った事例として、国税不服審判所(令和6年2月7日裁決)の事例があります。
裁決の本文は国税不服審判所(令和6年2月7日裁決)をご覧ください。

請求人(納税者)は、令和3年分の所得税について、上場株式等(E社株式、G社債券)の譲渡所得の申告漏れがあったとして、修正申告書を提出しました。原処分庁(税務署)は、この修正申告にかかる過少申告加算税について、「財産債務調書に譲渡した株式や債券の記載が不十分だった」として、加重措置を適用しました

この調書には、修正申告の原因となった上場株式等(E社株式、G社債券)についての銘柄や数量の記載がありませんでした。

請求人(納税者)は、財産債務調書の記載は不十分ではない、または特定が容易であるため、加重措置は適用されず、むしろ軽減措置が適用されるべきだと主張し、賦課決定処分の取り消しを求めました。

原処分庁(税務署)と請求人(納税者)の主張と根拠をまとめると以下の表のようになります。

項目 原処分庁(税務署) 請求人(納税者)
主張 加重措置が適用されるべき 軽減措置が適用されるべき
主張の根拠 財産債務調書にE社株式とG社債券の銘柄・数量の記載がないことは、法令の求める「財産の種類、数量及び価額」の記載が不十分な「重要なものの記載が不十分である場合」に該当する。外部資料(残高報告書など)で特定できるかは関係ない 銘柄がなくても、調書には国内株式等や債券等として記載されており、価額も一致している。外部資料で財産の特定は容易であり、「記載がないと同視できるほど不十分」な状態ではないため。加重措置は不適用、軽減措置が適用されるべきだ

結論としては、国税不服審判所は、請求人(納税者)が上場株式や債券の譲渡所得の申告漏れを修正申告した事案について、原処分庁(税務署)が課した過少申告加算税の加重措置は妥当であると判断し、請求人(納税者)の請求を却下しました。

この裁決の最大のポイントは、財産債務調書の記載内容が不十分だったという点にあります。

裁決事例から読み取れる教訓

この裁決事例は、財産債務調書に銘柄などの重要事項の記載が欠けていた場合は、記載がない場合と同視できる「記載が不十分な場合」に該当し、過少申告加算税が5%増額される加重措置が適用されるという厳格な姿勢を表していると考えることができます。

また、有価証券の場合、「銘柄」まで含める必要があると判断しているので、財産を「国内株式等」や「債券等」として一括で記載することは認められず、外部資料での特定は考慮されないことも表していると言えるでしょう。

高額な財産を持つ人が所得税の申告の適正性を確保するため、財産債務調書には法律が要求するすべての事項を正確に記載する義務があるという、教訓を残したと考えることができます。

おわりに

ご紹介した裁決事例は、提出義務のある財産債務調書の記載の正確性が、過少申告加算税の税額を左右する結果となった事例です。
納税者は記載事項の不備が「加重」を招くことを理解し、正確な記載を徹底する必要があります。

国税庁Webサイトに掲載されている債務調書の記載例へのリンクを掲載しますので、この内容に沿って、正確に記載することが大事です。

国税庁Webサイト「財産債務調書の記載例

執筆担当: 西新宿事務所 相続カンパニー執行部 川島 有希

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