海外のマイホームを手放す・譲る前に知っておきたい! 日本の税金はかかる? 使える特例はどれ?

  • 相続・贈与
  • 個人
海外のマイホームを手放す・譲る前に知っておきたい! 日本の税金はかかる? 使える特例はどれ?

海外赴任や海外移住をきっかけに、海外でマイホームを取得する人が年々増えています。一方で、そのマイホームを売却・贈与・相続する局面になると、日本の税金はかかるのか、また税の特例は使えるのか、といった点で判断に迷うケースが少なくありません。

本記事では、海外のマイホームに使える税の特例を売却、贈与、相続の場面別に整理します。

そもそも海外の自宅に日本の税金がかかるのか?

本題の前に、そもそも海外にある自宅に対して日本の税金がかかるのかを確認しましょう。

売却時に所得税がかかる

日本の居住者(非永住者を除く)であれば、全世界所得課税となり、海外で生じた不動産の譲渡益などに対しても日本の所得税がかかります。

詳細については、国税庁タックスアンサー No. 2010「納税義務者となる個人」をあわせてご確認ください。

相続時に相続税、贈与時に贈与税がかかる(10年ルールあり)

海外の不動産も日本の課税対象となります。海外に住んでいても、例えば日本国籍があり、「あげた人(被相続人・贈与者)」または「もらった人(相続人・受贈者)」のどちらかが、過去10年以内に日本に住所を有していた場合などです。

詳細については、国税庁タックスアンサー No. 4432「受贈者が外国に居住しているとき」、No. 4138「相続人が外国に居住しているとき」をあわせてご確認ください。

売却する場合:
「居住用財産の3,000万円特別控除」が適用可

売却する場合居住用財産の3,000万円特別控除が適用可
EKAKI / PIXTA(ピクスタ)

海外赴任中に現地で購入した自宅を帰国してから売却する場合などには、「居住用財産の3,000万円特別控除」という特例を検討してみましょう。

この所得税の特例は、居住用財産である自宅の譲渡益から最高3,000万円を控除できる制度です。居住期間は問いません。

財産の所在地を国内に限定していないため、その他の要件を満たせば海外の自宅でも適用可能です。

この特例を適用せずに確定申告した場合、原則、後から修正することができませんので注意が必要です。

詳細な適用要件については、国税庁タックスアンサー No. 3302「マイホームを売ったときの特例」をあわせてご確認ください。

[例]日本に帰国してから海外で自宅であった居住用財産を譲渡したとき

Q/イギリスから帰国したことにより日本の居住者となったAさん(日本国籍)は、帰国前の2025年9月に自宅の売買契約を締結し、帰国後の同年10月に引渡しをしました。引渡しベースにより日本で譲渡所得の申告をする予定です。

A/海外不動産の売却であっても、「譲渡日(契約日または引渡し日)に日本の居住者であったか」によって、申告の要否が決まります。
この設例では、譲渡日は引渡しベースとしており、日本への帰国後に引き渡しが行われているため、日本の居住者として売却した扱いとなり、日本での申告が必要です。
「居住用財産の3,000万円特別控除」は、対象が国内の不動産に限定されていないため、その他の要件を満たす限り、海外の自宅であっても適用できます。

※参考:国税庁「イギリスから帰国した居住者がイギリス国内で居住の用に供していた資産を譲渡した場合

適用不可な特例に注意!

以下の居住用財産の譲渡に関する特例は、対象となる居住用財産が国内にあることが要件であるため海外不動産には適用できません。

  • 所有期間が10年超の居住用財産を売却した場合の軽減税率の特例
  • 特定の居住用財産を売却した場合の買換え等の特例
  • 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越損失の特例
※出典:松岡ほか編「所得税・個人住民税ガイドブック(令和7年12月改訂版)」一般財団法人 大蔵財務協会

贈与する場合:
家族へ引き継ぐ・購入を支援するとき「相続時精算課税」が適用可

贈与する場合家族へ引き継ぐ・購入を支援するとき相続時精算課税が適用可
ぺっぱー / PIXTA(ピクスタ)

相続時精算課税制度」は、財産の所在地や種類に制限がないため、国内外を問わず、自宅や投資用物件、店舗などの不動産、さらにはそれらを取得するための資金贈与にも適用できます

本制度を選択すると、贈与者ごとに累計2,500万円までの贈与については、贈与時の税金がかかりません。

贈与した財産は将来の相続財産に加算して課税されますが、その価額は「贈与時の価額」で固定されます。そのため、為替変動の影響を受けやすい海外不動産や外貨建て資産を、円高局面や物件価格の上昇前に贈与することで、将来の相続税負担を抑える効果が期待できます。

2024年以降、上記とは別に年110万円の基礎控除が認められます。

適用対象者

原則として、贈与をした年の1月1日時点で「60歳以上の父母または祖父母」から、「18歳以上の子や孫(養子を含む)」への贈与が対象となります。

この制度を使うためには、相続時精算課税選択届出書の提出が必要になります。
詳細な適用要件については、国税庁タックスアンサー No. 4103「相続時精算課税の選択」をあわせてご確認ください。

相続時精算課税を選択する場合には、ここに注意!

  • 暦年課税への変更不可:一度この制度を選択すると、その贈与者からの贈与については、「暦年課税(年110万円の基礎控除を超える分への課税)」に戻すことはできません。
  • 小規模宅地等の特例との併用不可:相続時精算課税を使って生前に自宅を贈与した場合、将来その宅地について「小規模宅地等の特例」を適用して評価額を減額することはできなくなります。

海外不動産では【適用不可】となる贈与税の特例

以下の贈与の特例は、対象となる住宅が国内にあることが要件であるため、海外の不動産や海外住宅取得のための資金贈与には、適用できません。

相続する場合:
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)が適用可

相続税において大きな減税効果を持つ「小規模宅地等の特例」も、海外の自宅に適用できる場合があります。この制度は、亡くなった人の自宅や事業用の土地の評価額を最大80%減額できる制度です。

財産の所在地を国内に限定していないため、その他の要件を満たせば海外の自宅でも適用可能です。配偶者が被相続人の自宅を相続する場合には、要件が緩やかで被相続人との同居の有無や、申告期限までの継続保有要件がありません。

この特例を適用せずに申告した場合、原則、後から修正することができませんので注意が必要です。

適用要件については厳しく定められていますので、詳細な要件は国税庁タックスアンサー 「No. 4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」をあわせてご確認ください。

[例]別居親族による小規模宅地特例(通称:家なき子特例)のケース

Q/亡くなったBさん(配偶者なし)が住んでいたアメリカの自宅を、別居しているBさんの子どもであるCさんが相続します。小規模宅地等の特例を適用できますか?
この父子はともに日本国籍で、アメリカに移住して5年です。Cさんは不動産を所有したことがなく、相続開始時はCさんの妻がアメリカに所有している家に住んでいました。

A/BさんとCさんは海外居住期間が10年以内であるため、Cさんは「非居住無制限納税義務者」に該当し、アメリカの自宅も日本の相続税の課税対象となります。
そのうえで、Cさんは父Bさんと同居していませんので、いわゆる「家なき子」の要件を満たせば小規模宅地の特例を適用することが可能です。
家なき子の要件のひとつに、相続開始前3年以内に一定の親族の所有する家屋に居住したことがないこと、という要件があります。
この家屋の所在地は日本国内となっていますので、アメリカに所在する妻の持ち家の場合には、この要件を満たしていることになります。

「家なき子」については、他にも要件があります。辻・本郷 税理士法人の相続ガイド「家なき子特例とは? 同居していなくても小規模宅地等の特例が使える」をご確認ください。

海外ならではの3つのハードルに注意

現地の法律の壁

現地の法律や租税条約等の調査が必要になります。現地でも課税される場合、二重課税を避けるため外国税額控除等の確認が必須となります。

証明の壁

日本のような「住民票」や「登記事項証明書」があるとは限りません。居住の事実などを証明するため、現地当局の書類(公証人による宣誓供述書など)を揃える必要があります。

不動産評価の壁

日本のように「路線価」や「固定資産税評価額」の制度がありません。現地で不動産鑑定評価などに基づき算出する必要があります。為替にも注意が必要です。

おわりに

海外のマイホームには、国内と同様に適用できる特例もあれば、所在地が国外であるために適用対象外となる特例もあります。

「海外だから無理だ」と即断するのも早計ですが、国内と同じ感覚で進めるのも大きなリスクを伴います。それぞれの特例の要件を正確に把握することが重要です。

判断が難しい場合は、お近くの税務署または専門家にご相談ください。私たち辻・本郷 税理士法人でも、申告に関するご相談を承っておりますので是非お問い合わせください。

執筆担当: 東京ミッドタウン八重洲事務所 事業承継カンパニー 市川 園美

参考サイト・参考文献

サービスに関するお問い合わせ

サービスに関するお問い合わせ、税務業務のご依頼などをお受けしております。

※内容によってはお返事にお時間をいただく場合がございます。あらかじめご了承ください。

お電話でのお問い合わせ

0120-730-706

受付時間:9:00~17:30(土日祝・年末年始除く)

原則折り返し対応となります。
自動音声ガイダンスにしたがって、
お問い合わせ内容に沿った番号を選択してください。