令和以降の生命保険の改正について
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令和に入ってから生命保険に係る改正が行われました。今回はその内容の一部をご紹介します。
令和元年(2019年)の改正でふさがれたもの
法人向け節税保険として広く販売されていた全損型定期保険(保険料を全額損金として計上できるため、節税となる保険)などについて、令和元年に改正が行われました。
原則、最高解約返戻率(払った保険料の合計と解約返戻金として受け取る金額の割合)が50%超の保険については保険料の一部が資産計上されることになりました。
個人でも解約返戻金の額が著しく低いと認められる期間(以下、低解約返戻期間)のある保険(以下、低解約返戻金型保険等)を低解約返戻期間中に役員などに名義変更することで、その役員などのキャッシュアウト(資金の流出)を抑制することができましたが、令和元年の改正によりふさがれることになりました。
法人税の改正(令和元年7月8日以後契約分※1)
保険は大きく分けて3つの分類があり、第一分野は生命保険、第二分野は損害保険、その他の保険を第三分野保険といいます。
保険期間が3年以上の定期保険または第三分野保険(以下、定期保険等)で最高解約返戻率50%超の保険については、下記の区分に応じ損金算入に制限が加えられることになりました。
なお、保険期間が3年未満の定期保険、最高解約返戻率が50%以下の保険、最高解約返戻率が70%以下で、かつ、年換算保険料(保険料総額 / 保険期間年数)が30万円以下の保険については適用されません。
※1 解約返戻金額がない短期払いの定期保険または第三分野保険については、令和元年10月8日以後に改正が適用されます。
最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩期間 |
---|---|---|---|
50%超から70%以下 | 保険期間開始日から 保険期間100分の40の期間まで | 当期分支払保険料額 × 40 / 100 | 保険期間100分の75の期間経過後、終了まで |
70%超から85%以下 | 当期分支払保険料額 × 60 / 100 | ||
85%超 | 保険期間開始日から最高解約返戻率となる期間まで。 期間経過後のその期間の解約返戻金額からその直前の期間の解約返戻金額を控除した金額を年換算保険料額で除した割合が70%を超える期間がある場合はその超える期間まで。 資産計上期間が5年未満の場合は、保険期間開始日から5年、10年未満の場合は保険期間開始日から50 / 100の期間 | ・保険期間開始日から10年までは当期分支払保険料額 × 最高解約返戻率 × 90 / 100 ・11年目以降は当期分支払保険料額 × 最高解約返戻率 × 70 / 100 | 解約返戻金額が最も高い金額となる期間経過後から、終了まで(一定の場合を除く) |
所得税の改正(令和3年(2021年)7月1日以後名義変更分)
法人が契約者および保険受取人の地位(権利)を役員または使用人に支給した場合、原則、その支給時における解約返戻金の額により評価します。ただし低解約返戻金型保険等については、以下により評価することになりました※2。
条件 | 評価額 |
---|---|
①支時解約返戻金の額<支給時資産計上額 × 70 / 100 | 支給時資産計上額 |
②復旧することができる払済保険その他これに類する保険※3 | 支給時資産計上額 + 上記法人税の規定により損金算入した額を加算した金額 |
※2 令和3年7月1日以後の名義変更について適用されますが、対象となる保険は法人税の改正があった令和元年7月8日以後に契約されたものとなります。
※3 ②については、復旧することができる低解約返戻金型保険等を低解約返戻期間に払済保険に変更して役員等に支給した場合、①の規定が適用できなくなるからです。
[参考]具体例
・低解約返戻期間4年 ・4年目で役員に名義変更 ・年間支払保険料500万円
・4年目の解約返戻率10% ・5年目の解約返戻率90%
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
名義変更時 (4年目) 法人から役員へ | 200万円 500万円 × 4年 × 10% (5年目の解約時に一時所得が750万円かかります) | 1620万円※4 500万円 × 90% × 90% × 4年 (5年目の解約時に一時所得が40万円かかります) |
※4 解約返戻率85%超かつ保険期間開始から10年以内のため
おわりに
法人では、改正前まですべて保険料として損金算入できたものが一部資産計上されることになりました。個人については改正の対象となる契約が令和元年7月8日以後なので、今のところ適用されるケースは多くないと思いますが、キャッシュアウトが増加したことがお分かりいただけたと思います。
今後、法人を支える手段として新たな保険商品が販売されるでしょう。契約を検討される場合、課税インパクトや課税庁の対応について注意する必要があると思われます。
法人ソリューショングループ 寺島 忍
<参考サイト>
【国税庁】令和元年6月28日付課法2-13ほか2課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)の趣旨説明
「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)
<参考資料>
税のしるべ、一般財団法人大蔵財務協会 2019年4月8日号、2019年4月15日号、2019年4月22日号、2019年7月8日号、2019年7月15日号、2019年8月19日号、2021年4月30日号、2021年5月10日号、2021年6月7日号、2021年7月5日号
週刊税務通信、税務研究会 2019年4月15日号、2019年7月1日号、2021年5月10日号、2021年6月7日号、2021年7月19日号
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