今から始める相続対策!生前贈与のメリット・デメリットと公正証書遺言のススメ

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今から始める相続対策!生前贈与のメリット・デメリットと公正証書遺言のススメ

「子どもや孫の将来のために、今のうちにできることはないだろうか……」そう思ったことはありませんか?

住宅資金や教育費を援助したいと考える一方で、「税金はかかる?かからない?」「子どもたちが相続で揉めないだろうか」と不安を感じる方も多いようです。

この記事では、とくにお子さんやお孫さんがいる高齢世代の方に向けて、2024年(令和6年)の制度改正を踏まえた生前贈与のメリット・デメリットや、公正証書遺言との併用による最新の相続対策をご紹介します。

生前贈与のメリット

生前贈与のメリットはおもに以下の2点となります。

  • 相続税税額を減らすことができる
  • 現役世代に資金が回ることにより消費行動が増え、市場経済の活性化につながる

生前贈与のデメリット

生前贈与のデメリットはおもに以下の3点となります。

  • 金額によっては贈与税がかかる
  • 相続の節税対策にならない場合もある
  • 土地を贈与した場合、小規模宅地の特例(条件を満たすと土地の相続税評価額が50%もしくは80%減額となる制度)が使えなくなるため減税効果が得られない

何を贈与する?生前贈与したほうが良い財産とは

贈与する財産によっては、生前贈与よりも相続時まで温存しておいたほうが良いケースもあります

生前贈与か相続まで温存か、ご自身の財産状況や家族構成と照らし合わせて適切な贈与方法を選択しましょう。

財産の種類 生前贈与への適性 理由
株式・自社株 評価が上がる前に移転したい
現預金 小口で柔軟に贈与できるが大きくは節税になりにくい
自宅不動産
(条件次第)
小規模宅地の特例を使うなら相続時が有利
賃貸不動産 相続時の評価減(貸家建付地)を考慮
教育・住宅資金 非課税制度を活用できるなら贈与が有利
配偶者への財産 配偶者控除を使えば相続時の非課税枠が大きい
配偶者が遺産分割や遺贈で取得した遺産額が1億6,000万円もしくは配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは配偶者に相続税がかからない制度のこと

どちらがオススメ? 贈与の2つの制度を目的別に使い分けよう

どちらがオススメ?贈与の2つの制度を目的別に使い分けよう
viola / PIXTA

贈与には暦年課税と相続時精算課税制度という2つの制度があります。

「どちらの制度を選択した方が良いだろうか?」と判断に迷っている方のために、それぞれの制度がどのような特徴を持っているか、違いは何か、比較項目をまとめてみました。

相続時精算課税制度を選んだほうが良い場合

  • 将来値上がりしそうな資産を贈与する(株式、不動産など)
  • 2,500万円以内で一括贈与する(教育費・住宅資金など)
  • 毎年110万円以上の贈与をする(資金援助が継続的に必要)
  • 将来的に相続税の基礎控除内に収まる(相続税がかからない見込み)

暦年課税を選んだほうが良い場合

  • 少額贈与(年110万円以下)を継続することで相続財産を減らしたい
  • いずれも相続税がかかるような資産規模ではない
  • 柔軟に将来の贈与方針を見直したい(制度変更に対応しやすい)
比較項目 暦年課税 相続時精算課税制度
年間の非課税枠 110万円 110万円
非課税枠超過時 累進課税(最大55%) 一律20%(2,500万円まで非課税)
贈与財産の相続時加算 一部のみ加算(7年以内など)
非課税枠の範囲内でも加算
全額加算(年間110万円の基礎控除後
制度変更の可否 他の制度に変更できる 一度選択すると暦年贈与に戻れない
対象者 制限なし(血縁者以外でも可) 贈与者:60歳以上の父母・祖父母
受贈者:18歳以上の子・孫
申告手続き 110万円を超えたら必要 祖父母・父母からの贈与により取得した財産の価額が110万円を超え贈与税の申告書を提出する場合には「相続時精算課税選択届出書」および戸籍謄本等の書類を贈与税の申告書に添付して申告する

令和5年12月31日以前の贈与に係る贈与税の計算については、基礎控除額の控除はありません。

将来のトラブルを防ぐために
~公正証書遺言と合わせて円満な相続を~

特定の相続人にだけ生前贈与で財産を多く与えてしまったことにより、相続の際の遺産分割協議で揉めてしまうことも想定されます。

遺言がないと、どうなる?

  • 仲が良かったはずの兄弟姉妹が、生前贈与の不公平感から争いになる可能性あり
  • 申告期限までに遺産分割協議が円滑にまとまらず、長期化するおそれがある

公正証書遺言を活用してできること

  • 公平な遺産分配のルールを明文化
  • 生前贈与を考慮した内容でトラブル回避
  • 生前伝えきれなかった家族への感謝の気持ちを遺すことができる

生前贈与分を考慮した遺言を作ることで、相続人同士の間で公平性を保つとともに遺産分割協議におけるトラブルを防ぐことができます。また、公正証書遺言なら形式ミスによる無効リスクが低く、強い証明力があります

生前贈与と遺言作成の注意点

タカス / PIXTA

生前贈与と遺言の作成について、単独でもそれぞれに相続対策として効果を発揮しますが、いくつか注意点もあります。

不動産の贈与

土地・家屋の贈与には登記変更が必要です。贈与契約書を交わし、登記漏れを防ぎましょう。

また、亡くなった祖父母・曾祖父母名義のままとなっている不動産や未登記不動産がないか確認しましょう。2024年4月に開始された相続登記の義務化により、未登記にしていたことで将来的に過料が科されるおそれや、遺産分割がより複雑になるリスクがあるため、早めの対応が必要となります。

現金・その他の財産の贈与

暦年贈与、相続時精算課税制度に関わらず、お互いの意思確認のために贈与契約書を交わしておくことをおすすめします。将来的な誤解やトラブルを防ぐだけでなく、税務署に対して贈与の事実を証明する書面としても有効です。

贈与税・相続税のバランス

生前贈与のしすぎで贈与税が重くなると本末転倒です。財産状況や全体の課税負担を見て判断することが重要です。

遺言内容の更新

状況が変わったときに、遺言を放置すると逆効果になることもあり得ます。定期的に見直すことも忘れずにおきましょう。

法定相続人の最低限の取り分「遺留分」

法定相続人(おもに子・配偶者・直系尊属)には最低限の取り分があり、「遺留分」といいます。
これを侵害すると「遺留分侵害額請求」の可能性があります。せっかく遺した遺言がトラブルの元になることもあります。

贈与契約書は手書き・パソコンで作成し印刷したものいずれでも構いませんが、「あげる人・もらう人・贈与する財産の内容・日付・署名」を明記しましょう。不動産の贈与契約書に限り、200円の収入印紙が必要となります。

また、遺言はたとえ遺留分を侵害する内容であっても、作成自体は可能であり、無効にはなりません

なぜそのような財産の分け方にしたのか、介護や日々の生活援助の有無・感謝の気持ちなどを手紙や付言事項で丁寧に伝えることで、気持ちの行き違いを防げる場合もあります。

家族構成・人間関係・将来の生活の変化など、あらゆる可能性を想像しながら、慎重に準備していくことが大切です。

おわりに

お盆や年末でご家族が集まる時期は、「これからの暮らし」や「もしものとき」の話をする絶好の機会です。
「気づいたときには、もう手遅れだった……」というケースも少なくありません。

相続対策や遺言作成には、ご本人の判断力に問題がみられないことが前提です。今から少しずつ準備を始めることで、ご本人にとってもご家族にとっても将来の安心につながります。

辻・本郷 税理士法人では、贈与税申告は勿論、資産状況とご家族のライフスタイルに応じた適切な相続税対策のご提案や公正証書遺言作成のサポートも可能です。

全国各地に事務所があり、多くの専門スタッフが在籍しておりますのでぜひお気軽にご相談ください。

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執筆担当: 秋田事務所 今野 真理子

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