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自社株式の評価対策は慎重に【シリーズ・事業承継】

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自社株式の評価対策は慎重に

前回の記事『最近の事業承継コンサルティングの動向』、『円滑な事業承継のための種類株式活用方法』では、後継者に自社株式をいかに引き継がせていくのかをテーマに、経営権を引き継がせること、すなわち、会社の最高意思決定機関である「株主総会」での議決権比率の重要性を、種類株式等の活用も交えて説明致しました。

取引相場のない株式の価値はどのように決まる?

ただ、経営権を意識して、自社株式を後継者にまとめて引き継がせるには相当なコストがかかってしまいます。なぜなら、優良企業であればあるほど自社株式の評価が高くなる仕組みになっているからです。

日本の法人は、ほとんどが株式を上場していません。上場していれば株式市場で値が付き、いつでも売買換金することができますが、上場していない株式はご存じのとおり「財産評価基本通達」に自社株式の評価方法が示され、その評価に基づいて後継者に自社株式を引き継がせなくてはならないのです。

この「財産評価基本通達」に示されている自社株式の評価、すなわち「取引相場のない株式」の評価は、3通りの方法で計算されます。

会社の解散価値を示した「純資産価額」、業種が類似する上場株式の株価に比準させる「類似業種比準価額」、それと株式配当の支払額に基づいた「配当還元価額」の3種類の評価方法が示されていますが、非常に複雑な計算方法になっています。

自社株式は目的に応じた評価が重要

なお、この「財産評価基本通達」は相続税法の実務をサポートするための通達であり、法律で規定されたものではありません。
したがって、相続・贈与による株式の移動の際に利用されているのであって、自社株式の譲渡や資本金の増減資、自社株取得、さらにはM&Aや組織再編といったような場合には、あくまでも参考にするという程度です。そのほかにも所得税法や法人税法を絡めた複雑な検討をしなくてはなりません。

自社株式評価の対策は時間をかけて慎重に

それでは、実際に自社株式を後継者に移す場合にはどのように株式評価対策を進めていけば良いのでしょうか。

「取引相場のない株式」の評価方法を学ぶと、会社の業績がどのように変化すると自社株式の評価が高くなるのか、あるいは安くなるのかが見えてきます。
自社株式を後継者に引き継がせるときには、できれば評価が低い時のほうが良いでしょう。

とはいえ、通常の業務とはまったく関係のない部門で意図的に赤字になるよう申告を進め、結果的に自社株式の評価を低くして後継者に引き継がせるような場合には相当な注意が必要となるため、おすすめできません。

事業承継対策はその会社の業績推移、事業計画、後継者の育成等、早い段階から中長期的に充分に計画し、進めなければなりません。付け焼刃の対応・対策では、色々なリスクが顕在化してしまいます。
会社の体力を落としてしまうような株価対策や、会社の信用低下につながる対策は本末転倒です。

私たち辻・本郷 税理士法人では、税務面だけでなく、会社が成長発展し続ける事業承継対策のアドバイスを行っております。事業承継でお困りの際には、ぜひお問い合わせください。

執筆担当:
法人ソリューショングループ 岩崎 睦

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