宗教法人設立のメリットは?設立手続の流れについても解説します

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宗教法人設立のメリットは?設立手続の流れについても解説します

日本では信教の自由が保障されており、すべての人が宗教活動を行うことができます。実際、宗教法人の数は178,921となっており、非常に多くの法人が存在しています。(2023年12月31日時点)

一方で、法人化せずに宗教団体として宗教活動を行っている団体もあります。今回は、その宗教団体が法人化をするメリットとその具体的な手続、そして宗教法人になると生じる義務についても解説します。

宗教法人化するメリット

税制上の優遇を享受できる

お布施、寄付金、会費のような宗教活動による収入は、法人税が非課税になります。
また、宗教儀式を行うための土地や建物にかかわる固定資産税は非課税となる等、税制上優遇されることになります。

ただし、駐車場経営や不動産賃貸、物品販売といった収益事業に該当する事業の収入については、課税の対象となるため、注意が必要です。具体的な収益事業の内容については、下記の資料に記載がございますので、ご興味のある方はご参照ください。

参考:【国税庁】「令和7年版宗教法人の税務」

法人格の取得により財産管理がしやすくなる

土地や建物などの財産を代表者個人から法人の名義で所有することになります。これにより、代表者が亡くなった場合においても、相続の対象とはならないため、法人の財産を永続的に継承していくことが可能です。

また、宗教法人が、宗教活動を目的として、土地や建物を取得し、登記を行う場合、登録免許税が非課税となります。

そのためには、都道府県への申請手続を行うことが必要です。一定の要件を満たすことが前提となるので、事前によく確認することが肝心です。

社会的信用の獲得

宗教法人化をした場合、国や地方公共団体から認証を受けた公的な存在となり、社会的な信用度の向上が期待できます。そのため、地域社会との連携を進めやすくなり、宗教活動を行いやすくなります。

宗教法人の設立の前提

宗教法人の設立にあたり、約3年程度の活動実績があることが大前提となります。具体的には、以下の活動を継続的に行い、その活動の証拠書類を保管する必要があります

活動内容 証拠書類
教義を広める活動をしていること 布教活動の日時、内容の記録
儀式行事を行っていること 儀式行事の日時の記録や写真
信者を教化、育成していること 信者の教化、育成の実施記録

また、信者が集まる場所として礼拝施設を所有しているか、あるいは、設立後に法人へ確実に寄付されることが求められます。

設立のための具体的な手続は?

具体的な設立の手続
mits / PIXTA

宗教法人設立のために用意するべき項目は以下の6点です。以下の項で各項目について解説します。

  • 規則の作成
  • 設立発起人会
  • 公告
  • 所轄庁への規則の認証申請
  • 設立登記
  • 設立登記完了届出の提出

規則の作成

宗教法人の基本的なルールである「規則」を作成します。これは、株式会社における定款に該当し、設立手続において重要な書類となります。この書類には、名称、事務所の所在地、代表役員の氏名等の所定の事項を記載することになります。

設立発起人会

設立の発起人を集め、設立発起人会を開催します。この時の発起人は、将来の代表役員、責任役員で構成されます。この会にて、作成した規則案の決定、所轄庁への認証申請手続の権限付与等がなされ、また、正式に代表役員と責任役員が選出されます。

この際、設立発起人会で決定した事項を議事録に記載する必要があります。

役職 職務内容 人数 選任要件
代表役員 宗教法人の代表となる者 1名 責任役員の中から1名選任
責任役員 規則に定められた範囲内で、宗教法人の意思決定を行う 3名以上 要件なし

公告

信者やその他利害関係人に作成した規則の内容を示したうえで、宗教法人を設立する旨を公告する必要があります。この公告は、所轄庁へ認証申請を行う少なくとも1カ月前に行います。

所轄庁への規則の認証申請

作成した規則を所轄庁へ認証申請を行います。この際、所轄庁は異なるケースがあるので、注意が必要です。

1つの都道府県で宗教活動を行っている場合 主たる事務所の所在地を管轄する都道府県の都道府県知事
2つ以上の都道府県で
宗教活動を行っている場合
文部科学大臣

所轄庁への認証が完了すると、認証書が交付されます。ただし、規則の認証には約3カ月の時間を要しますので、計画的に行うことが肝心です。

設立登記

所轄庁への認証が済んだら、宗教法人の設立登記を法務局にて行います。
その際、所轄庁から交付された認証書の謄本、規則が必要となります。法務局での設立登記が完了すると、全部事項証明書の謄本を取得することができます。

設立登記完了届出の提出

法務局から取得した全部事項証明書の謄本を所轄庁(都道府県あるいは文部科学省)に設立登記完了の届出書を提出します。これにより、宗教法人の設立の手続が完了となります。

宗教法人化に伴い生じる義務

宗教法人は、毎会計年度終了後4カヵ月以内に、事務所備付け書類の一部の写しを所轄庁に提出しなければなりません。下記がその提出書類になります。

提出書類 提出の範囲
役員名簿 すべての宗教法人
財産目録 すべての宗教法人
収支計算書 作成義務を免除され、作成していない場合は不要※1
貸借対照表 作成している場合に限る
境内建物に関する書類 該当法人に限る※2
事業に関する書類 規定する事業を行う場合に限る※3

※1 収益事業を行っておらず、一会計年度の収入の金額が8,000万円以内の宗教法人は、経過措置として、当分の間、収支計算書の作成義務が免除されています。ただし、収支計算書を作成している宗教法人は、所轄庁に提出する必要があります。
※2 財産目録に記載されていない境内建物がある場合は、境内建物に関する書類を所轄庁に提出する必要があります。
※3 公益事業や収益事業を行う場合は、所轄庁に提出する必要があります。

宗教法人の設立後は、提出書類をよく確認し、忘れずに提出するようにしましょう。

おわりに

辻・本郷税理士法人には、公益法人を専門とする部署があります。
公益法人部では、財団法人、社団法人、学校法人の他に、宗教法人についても専門性の高いスタッフが在籍しております。宗教法人を設立したい方、あるいは、設立を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。

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執筆担当: 新宿ミライナタワー事務所 公益法人部 佐久間 要丞

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