タイ駐在員の株式報酬 ~RSU・ストックオプションの課税時期と二重課税を防ぐ実務ポイント
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日本企業が海外拠点の従業員に株式報酬制度を導入するケースが増加しています。
タイにおいても、従業員に株式を付与する制度は給与所得と同様に課税対象となり、課税タイミングの理解が重要です。
とくに、RSU(譲渡制限付株式報酬)とストックオプション(時価より低い価格で購入できる権利)では、課税ポイントが異なるため誤解が生じやすい分野です。
本稿では、タイ歳入局の基本的な考え方を踏まえ、両制度の課税タイミングの違いを整理し、評価方法や国際税務上の留意点まで実務のポイントを解説します。
課税のトリガーは? タイ歳入局の基本的な考え方
タイ歳入局決定 No.28/1995(คำวินิจฉัย 28/2538)では、「株式の所有権を取得した課税年度に含める」と明記されています。
つまり課税のトリガーは「株式の所有権移転」であり、付与や権利確定の段階ではなく、実際に株式が従業員に交付された時点が基準となります。この「所有権取得」という表現が、RSUとストックオプションで異なるタイミングに対応するため、制度ごとに整理が必要です。
制度ごとの課税タイミングの違い

RSUは、付与時点では条件付きですが、勤務年数や業績条件を満たすと「vesting」し、株式が交付されます。
株式が交付された時点で所有権が移転し、課税所得が発生します。これは通達 No.28/1995 の「株式の所有権を取得した課税年度に含める」という規定に基づくものであり、タイ最高裁判所も従業員が株式を受け取った時点で課税所得が発生すると判断しています。
一方、ストックオプションは付与時点では「購入する権利」が与えられるだけであり、vestingしても権利が取消不能になるだけで株式はまだ交付されません。
従業員が権利を行使して株式を購入した時点で初めて所有権が移転し、行使価格と市場価格の差額が経済的利益として給与所得に該当します。したがって課税タイミングは行使時点となります。
| 制度 | 所有権移転のタイミング | タイ税務上の課税ポイント |
|---|---|---|
| RSU(譲渡制限付株式報酬) | 勤務年数や業績条件を満たした時点(vesting)で株式が交付される | vesting時点で課税 |
| ストックオプション(割安購入型) | 従業員が権利を行使して株式を購入した時点(exercise) | 行使時点で課税 |
株式の評価方法
上場株式の場合、公募価格があるときは公募価格を用い、公募価格がない場合は所有権取得月の平均市場価格を基準とします。
非上場株式の場合は、公募価格があるときは公募価格を用い、ない場合は会社の財務諸表上の純資産価額を基準とすることが検討されます。
実務上の留意点
株式報酬は日本本社から付与されるケースが一般的ですが、勤務がタイ国内で行われている以上、課税権はタイに帰属するとタイ税務署は主張します。従業員がタイ居住者である限り、課税対象となる可能性が高いと考えられます。
また株式報酬は勤務対価であるため、勤務期間に応じて勤務国に課税権が割り当てられるのが国際税務の原則です。
しかし課税は「所有権取得時点」で発生するため、その時点で居住している国も課税権を主張します。
したがって、タイ駐在中に付与された株式報酬が帰任後に確定・行使される場合には、タイと日本の双方で課税対象となり、二重課税の可能性が生じます。この場合は日タイ租税条約や外国税額控除による調整が必要です。
本稿のまとめ
- タイ税務では「株式の所有権取得時点」が課税トリガーとなります。
- RSUはvesting時点で課税され、ストックオプションは行使時点で課税されます。勤務期間に応じて勤務国に課税権が割り当てられるため、二重課税リスクが発生する場合には外国税額控除の検討が必要です。
おわりに
株式報酬はグローバルに普及する一方で、課税タイミングの違いが国際的な二重課税リスクを生みやすい領域です。
タイでは「所有権取得時点」を基準とするため、日本の制度と比較すると課税の発生時期が異なります。
駐在員や海外拠点従業員にとっては、適切な申告と国際税務上の調整を行うことが、持続的な人材戦略と企業のコンプライアンス確保につながります。
私たち辻・本郷 税理士法人は、税務・会計に精通した日本人・タイ人スタッフが所属する事務所をバンコク市内に構えており、皆様の適正な申告をサポートしております。
タイでの株式報酬制度の税務対応でお困りの際は、ぜひご相談ください。
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