令和8年度税制改正はどうなる? 各省庁の主要要望は
- 税務・会計
- 法人
- 個人事業主
- 個人

例年8月末を目途に、各団体や府省庁から税制改正に関わる要望が税制調査会へ提出されます。これらはあくまでも「要望」であり、税制調査会による審議を経て、12月頃に「税制改正大綱」としてまとめられます。
今年提出された内容は、地方創生に関する施策の推進、国内投資促進及び産業基盤整備、資産運用の整備、中小企業の成長促進、豊かな暮らしの実現と個性をいかした地域づくりの整備等、いつもながら多岐に渡ります。
こうした要望を見ていくことで令和8年度税制改正大綱のアウトラインが見えてまいります。本稿で各府省庁から提出されたおもな要望を確認していきましょう。
内閣府による税制改正要望
地方における企業拠点の強化を促進する税制措置の拡充及び延長
東京圏の一極集中への弊害やリスクを分散するため、企業の地方移転等を促進し、地方における雇用創出を図るため、内閣府では地方拠点強化税制の適用期限の2年間延長を要望しています。
また、地方へ移転する企業に対し、税額控除率の引上げ(現行、移転型7%、拡充型4%からの引上げ)等も要望しています。
地震防災対策用資産に係る課税標準の特例措置の拡充及び延長
飲食店や病院、旅館等の不特定多数の方が利用する施設等において、緊急地震速報受信装置等の地震防災対策用資産を取得した場合の固定資産税の軽減措置の適用期限延長を要望しています。
また現在では、対象が南海トラフ地震防災対策推進地域等の地域に限定されていますが、全国に拡充することを要望しています。
地震は全国どこでも発生しうるので、この措置が全国に拡充すれば社会全体の防災力向上につながるでしょう。
金融庁による税制改正要望

NISA対象商品の拡充を含む制度の充実
NISAの普及をさらに進め、より一層の充実のため、さらに子育て支援の一環として、つみたて投資枠の対象年齢(18歳以上)の見直しや対象商品の拡充、投資商品の入替をしやすくするための非課税保有限度額の当年中の復活が改正要望として挙がっております。
NISA口座数は増加傾向にあります。(過去記事「導入から1年、新NISA利用動向と今後の展望」を参照)対象年齢を引き下げ、対象商品を拡充することで投資への関心が増え、さらにあらゆる世代に浸透することでしょう。
暗号資産取引に係る課税の見直し
暗号資産取引に係る必要な法整備と併せて、株式等を譲渡した時の課税と同じように、「分離課税」の導入を含めた暗号資産取引等に係る課税の見直しを要望しています。
現在、仮想通貨の利益への課税は総合課税であり、所得税が最大45%、住民税一律10%かかります。
分離課税をすることによって、所得税15.315%、住民税5%の計20.315%になりますので、目に見えて負担が軽減されることがわかります。
株式や投資信託と同じ税金になるので、申告分離課税になれば、今後仮想通貨の売買が増加するかもしれません。
生命保険料控除制度の拡充の恒久化等
令和8年中の1年間に限定された、23歳未満の扶養親族を有する場合の一般生命保険料控除枠の所得控除限度額に対する2万円の上乗せ措置(一般生命保険料控除限度額6万円)について、1年間に限定せず、恒久化することを要望しています。
生命保険料を支払っている日本人は多く、1年間に限らず恒久化されると、23歳未満のお子さまを持つ方にとって税金にかかる負担が軽減されることになります。
経済産業省による税制改正要望

研究開発税制の拡充・延長
現行の一般型等の研究開発税制とは別に、日本の戦力技術領域を対象とした戦略技術領域型の創設や試験研究費の税額控除の繰延制度の導入、中堅企業に対するインセンティブの強化、一般型の控除率上乗措置の適用期限の延長等が挙がっております。
世界的に投資競争が激化するなか、日本でも国内投資の促進や産業基盤を強化を目指しており、上記のような要望が提出されました。
事業承継税制に係る特例承継計画の期限延長等
令和8年3月末までの事業承継税制の特例承継計画の適用期限について、承継計画の確認申請の期限の延長を要望しています。
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置の延長等
中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、合計300万円までを限度に即時償却を認める「少額減価償却資産の特例」があることはよく知られています。
この措置の期限が2025年度末(2026年3月31日)となっており、期限延長や現行制度の見直しが要望されています。
食事支給に係る所得税非課税限度額の見直し
企業が従業員に提供する食事について、従業員が食事価額の50%以上を負担し、かつ、食事支給の企業負担額が月額3,500円以下の非課税限度額について、企業負担分の非課税限度額3,500円の引き上げを要望しております。
この制度が施行されたのはバブル期以前の1984年であり、約40年に渡って見直しが行われていませんでした。昨今の物価上昇で食材が高騰しているので、非課税限度額の引き上げにより従業員の税金負担軽減が期待されます。
厚生労働省による税制改正要望
セルフメディケーション推進のための医療費控除の特例措置の拡充
一般の方にも広く浸透している「セルフメディケーション税制」が令和8年3月末までの期限のため、恒久化または継続希望を挙げております。
また、対象の医薬品の範囲を拡大し、現行の控除限度額8万8千円の上限を20万円に引き上げることも要望しています。
なお、セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、通常の医療費控除との選択適用となります。
国土交通省による税制改正要望
住宅ローン減税等の住宅取得等促進策に係る所要の措置
令和7年末に適用を迎える住宅ローン減税や認定住宅の投資型減税について、適用期限の延長等を要望しています。
また、新築住宅に対する固定資産税額を1/2に軽減している特例措置(戸建て3年間、マンション5年間)についても令和8年3月末に適用期限を迎えますが、2年間の延長も要望しています。
昨今の物価上昇で住宅価格が都心を中心に高騰を続けています。住宅購入は一生に一度の買い物でもあるので、少しでも減税が続くと、購入者の家計にとって大きな一助となるでしょう。
おわりに
今回ご紹介した内容は、各府省庁から提出された一部に過ぎません。この他さまざまな要望が紹介されておりますので、興味のある方は「参考サイト・参考文献」にリンクを張りましたのでぜひご確認ください。
今年7月には、ガソリン暫定税率を廃止することが与野党で合意されました。このほかにも、年収の壁の撤廃による所得税の減税や消費税の減税といったトピックが日々のニュースに取り上げられていますが、執筆時点では与党による総裁選が終了したばかりで先が見通せない状況です。
令和8年も政局によって税制の行方が左右されるかもしれません。
辻・本郷 税理士法人のWebサイトでは、毎年12月頃に税制改正大綱が発表された際に速報解説版を、翌年1月には詳細な解説を掲載しています。そちらもぜひご覧ください。

サービスに関するお問い合わせ
サービスに関するお問い合わせ、税務業務のご依頼などをお受けしております。
※内容によってはお返事にお時間をいただく場合がございます。あらかじめご了承ください。
お電話でのお問い合わせ
受付時間:9:00~17:30(土日祝・年末年始除く)
原則折り返し対応となります。
自動音声ガイダンスにしたがって、
お問い合わせ内容に沿った番号を選択してください。