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アウトドアブームのいま、手放せる? 山林売却に関する税金

  • 所得税

山林売却に関する税金

先祖から山林を引き継いで所有している方もいらっしゃるかと思いますが、現代社会で利活用できている方はそう多くないでしょう。

「負」動産とも呼ばれて久しい山林ですが、最近はコロナ禍でのアウトドア人気の高まりにより、山林を購入したいという需要も高まっているようです。
そこでうまく売却に繋がれば山林の有効利用に繋がりますし、固定資産税の負担もなくなり、相続で悩むこともない…など、メリットも多いでしょう。

取らぬ狸の皮算用ではありますが、もし自分が所有する山林を買いたいという声がかかり、売却に至った場合、税金はどうなるか見てみましょう。

山林を売るとかかる税金は?

山林を売ると一口に言っても、内容によって、かかる税金の計算方法が異なります。
立木や、立木を伐採して売った場合は山林所得等として計算し、山林の土地を売却した場合は譲渡所得として計算を行います。
そのため、契約の際に何をいくらで売るか明記しておくと確定申告がしやすいでしょう。

売るもの要件課税方法
立木所有期間5年以下事業所得or雑所得(事業の継続性で判断)(総合所得)
所有期間5年超山林所得(申告分離課税)
土地所有期間5年以下短期譲渡所得(申告分離課税)
所有期間5年超長期譲渡所得(申告分離課税)

林業を営んでいるかどうかで、かかる税金が違う

山林の所有期間が5年を超えると、立木を伐採して譲渡したり、立木の状態で譲渡した場合は山林所得に該当します。
つまり林業経営者にとってはなじみ深い所得ということになりますが、手入れをしていない立木にはほとんど価値がないと思われますので、その場合は不動産譲渡としての計算をすることになります。

譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除

譲渡所得の税金=譲渡所得金額×税率(下記の表を参照)

短期長期
税率39.63%
(所得税30.63%・住民税9%)
20.315%
(所得税15.315% 住民税 5%)

山林所得の税金は優遇されている!

山林所得は、10種類ある所得区分のなかでも優遇されている方法で税金の計算をします。
山林所得の税金の計算は「分離5分5乗課税方式」と呼ばれていて、「超過累進税率方式」より少なく税金が算出されます。

その理由は、所得を1/5した金額で規定の所得税率をかけるので、税率の上がり方が緩やかになるためです。
なぜこのように優遇されているかというと、長い時間費用をかけて育成した山林の所得が、他の1年間で稼いだ所得と同じ計算方法では不公平という考えがあるためと言われています。

山林所得の税額=(山林所得金額×1/5×所得税率)×5

山林所得の計算方法

それでは、山林所得の計算方法を見ていきましょう。

山林所得の金額=総収入金額-必要経費-特別控除額(一般(最高50万円)・森林計画特別控除)

(1)総収入金額とは

売却金額が総収入金額となります。間伐材の伐採等も収入になります。なお、山林を伐採して自宅を建築するために使用する家事消費は、その消費したときの時価が総収入金額に算入されます。

また、申告する時期は、原則として山林を引き渡した年です。ただし、申告する時期は引き渡しが済んでいないものについても年中に売買契約を締結している場合は、その未収入金も含めその年中の収入として申告することができます。

(2)必要経費とは

伐採中

必要経費は、実際かかった原価によることになっていますが、特例として概算経費控除が認められています。

原価計算による方法

植林費などの取得費のほか、下刈費などの育成費、維持管理のために必要な管理費、さらに、伐採費、運搬費、仲介手数料などの譲渡費用を合計します。

概算経費率による方法

伐採または売却した年の15年前の12月31日より前から引き続き所有していた山林を伐採または譲渡した年の必要経費は、下記の算式で計算することができます。

(山林の譲渡収入金額-伐採費・譲渡に要した費用)×50%+伐採費・譲渡に要した費用

(3)特別控除とは

また、特別控除は、総収入金額から必要経費を差し引いた金額が50万円未満ならその残額、50万円以上なら50万円です。
森林経営計画を策定しており、一定の要件を満たす場合は森林計画特別控除、土地収用法などによって収用された場合には5,000万円控除等を適用することができます。

おわりに

このように山林を売った場合は税金の計算方法が多様であるほか、さまざまな控除が適用できる可能性があります。
山林にくわしい税理士へ相談されることをおすすめします。


[付録]山林の処分や税金を考える際に抑えておきたいポイント

保安林の標識

保安林であるかどうか

保安林とは水源の涵養(かんよう)、土砂の崩壊その他の災害の防備、生活環境の保全・形成等、特定の公益目的を達成するため、農林水産大臣又は都道府県知事によって指定される森林です。
民有林の場合は都道府県知事が指定し、水源かん養保安林・土砂流出防備保安林・土砂崩壊防備保安林等があります。

一般には伐採制限や土地の形質変更の際に許可が必要になりますが、固定資産税、不動産取得税、特別土地保有税は課税されず、相続税、贈与税は伐採制限の内容に応じて相続税等の評価の際に3~8割が控除されます。

森林経営計画の有無

政府の森林・林業計画等に基づき、森林所有者又は森林所有者から森林の経営の委託を受けた者が、自らが森林の経営を行う森林・施業の勧告について、自発的に作成する具体的な伐採・造林、森林の保護、作業路網の整備等に関する計画。
こちらを作成していると、山林所得の計算上森林計画特別控除の特例(措法30条の2)が適用できます。

上記は都道府県の林業事務所等で該当するかどうか調べることができます。気になった方は調べてみるのもいいでしょう。

分収林契約の有無

公社等と森林の土地所有者との間で、分収林特別措置法に基づく分収造林契約を締結し、土地所有者が提供した土地に、公社等が費用負担者となって、植栽、保育等を行い、伐採時に得られた収益を、契約書に定めた割合で分け合う仕組みです。

一般に、分収造林契約に定める期間、土地に地上権を設定しますので、不動産登記謄本を取得することで有無を確認することができます。売買をする場合には公社等に許可が必要になるほか、立木を相続・贈与で取得する場合は分収契約に基づく割合を控除することができます。

執筆担当:新潟事務所 柳 翠

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