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導入から1年、新NISA利用動向と今後の展望

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導入から1年 新NISA利用動向と今後の展望

2024年からNISA制度が刷新され、新NISAとして個人の資産形成を後押しするため制度内容へと大幅に拡充されました。導入から1年が経過した今、その利用状況はどのように動いたのでしょうか。

最新データに基づき、新NISAが日本の投資状況に与える影響と、不確実な経済状況下での資産運用についてみていきましょう。

新NISA制度の概要

新NISAは2024年1月にスタートした、18歳以上の日本居住者向けの少額投資非課税制度です。
年間投資枠は「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」が240万円と、旧NISA制度から大幅に拡充されました。

生涯投資できる非課税保有限度額は1,800万円に設定されており、一度投資した資産を売却した場合、その投資枠を再利用できる簿価残高方式が採用されています(成長投資枠の上限は内数1,200万円)。

この制度改正により、個人はより長期的な視点で、柔軟な資産形成が可能となりました。

新NISA制度についてさらに詳しい内容を知りたい方は、当法人による記事「貯蓄から投資へ~2024年はお金にもっと働いてもらいましょう!」をご覧ください。

開始1年間の新NISA利用状況

口座開設数と買付金額が著しく増加

金融庁が公表したデータによると、新NISA口座数は2023年末の約2249万口座から、2024年末には約2560万口座へと約13.9%増加しました。

これは、制度に対する国民の関心の高さを明確に示しています。
特筆すべきは買付金額の増加で、同期間で約36億5,111万円から約52億7,024万円へと約44.4%もの大幅な増加となりました。

この数字は、単に口座数が増えただけでなく、実際に投資に積極的に取り組む人が増えていることを表しています。

NISA利用状況の推移(単位:万)
2023年12月 2024年3月 2024年6月 2024年9月 2024年12月
NISA口座数 2,249 2,320 2,425 2,509 2,560
NISA買付額 365,111 414,290 453,814 490,355 527,024

※金融庁「NISAの利用状況の推移(令和7年3月末時点)」より引用

投資資金の出所と幅広い参加層

新NISAで投資されている資金の約75%は、預金、給与所得、年金からの拠出です。

これは、投資のための新たな資金調達というよりも、既存の資産を投資に振り向ける動きが主流であることを示唆しています。

また、利用者の年収分布を見ると、年収300万円未満が約40%、300~500万円が約28%と、高所得層だけでなく、幅広い所得層への投資の裾野の広がりが確認できます。

新NISAにおける購入資金
新NISAにおける購入資金

※日本証券業協会「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)p.5より引用

新NISA利用者の年収分布
新NISA利用者の年収分布

※日本証券業協会「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)p.5より引用

若年層の投資意欲が顕著に活発化

年代別に見ると、29歳以下の口座開設数は前年の17%から24.5%へと大幅に増加しています。

とくに、以前より投資への関心が高かった若い世代において、2024年の新NISA開始を機に実際に投資を始める動きが顕著になっています。

前年比で口座開設数が大幅に増加していることからも、その積極的な姿勢がうかがえます。年収300万円以下の層でも口座開設数が大きく伸びており、少額からの投資が可能な新NISAが、若年層や投資初心者にとって投資への入り口となっていると考えられます。

年代別NISA口座開設年(単位:%)
年代別NISA口座開設年(単位:%)

※日本証券業協会「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)p.29より引用

年収別NISA口座開設年(単位:%)
年収別NISA口座開設年(単位:%)

※日本証券業協会「日本証券業協会 新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)p.29より引用

投資初心者にも良好な成果が見られる

2024年の新NISA損益調査では、つみたて投資枠の利用者のなかで、金融経済教育未経験者の約81%が利益を確保しており、損失を出しているのはわずか約2%という結果が出ています。

成長投資枠でも約67.5%がプラスの収益を上げています。これらのデータは、必ずしも専門的な金融知識がなくても、新NISAを活用することで良好な投資成果を期待できる可能性を示唆しており、投資への心理的なハードルを下げる効果があると考えられます。

まとめ

新NISA開始からの1年間で、口座数と買付金額は著しく増加し、若年層を含む幅広い所得層が投資に積極的に参加する明白なシフトが見られました。

とくに、投資初心者層においても良好な成果が出ていることは、新NISAが個人の長期的な資産形成をサポートするうえで、重要な役割を果たし始めていることを示唆しています。

今後の展開

先行き不透明な経済と投資の重要性

現在の株式市場は、世界の金融政策の変動、中東情勢やウクライナ情勢といった地政学リスク、そして自然災害の可能性など、多くの不確実性を内包しています。
国内では日銀の金融政策の動きや、政府の経済政策が市場に影響を与え、米国市場もインフレの動向や政治的な要因により、上下しやすい状況にあります。

このような状況下では、短期的な市場の動きを正確に予測することはかなり難しいと言えます。しかし、市場の一時的な変動に左右されず、長期的な視点で積立投資を継続することで、20年間程度の長期保有の場合は「複利の効果」によって資産が増えていくため、結果として元本割れの可能性が低くなると考えられています。

とくに、世界的な物価上昇傾向が続く現代において、現預金のみを保有し続けることは、実質的な資産価値の目減りを招くリスクを伴います。

長く投資をする場合、市場が一時的に下がることがありますが、それは焦る場面ではありません。むしろ、将来の投資を増やす良い機会だと考え、広い視野を持つことが重要です。

新NISAを活用した長期的な投資の強力なススメ

予測困難な経済環境だからこそ、少額から柔軟に投資を始められる新NISAは、長期的な資産形成を実現するための極めて賢明な第一歩となります。

世界の経済や市場の変動を適度に情報収集しつつ 、ご自身のリスク許容度や投資目標に合わせて、新NISAを活用した投資計画を検討するのも良いと思います。

一時的な市場の変動に感情的に反応するのではなく、長期的な視点に立ち、規律ある投資を継続することこそが、現在の不安定な時代において、財政的な安定を築くための賢明な戦略と言えるでしょう。

おわりに

新NISAは、これまで以上に投資を身近にし、個人の長期的な資産形成を強力に後押しする制度として、その利用は開始から1年で着実に広がりを見せています。

少額からの柔軟な投資が可能でありながら、大幅に拡充された投資枠によって、株式譲渡益や配当金にかかる税金が非課税となる新NISAは、まさに資産形成の強力な武器と言えるでしょう。

将来に向けた資産形成の有効な手段として、この税制優遇が拡充された新NISA制度を、ぜひこの機会にご活用ください。

執筆担当:いわき事務所 吉田 薫
参考文献・参考サイト
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