グループ全体の税負担を最適化!グループ通算制度の活用メリットと導入時に潜むリスク
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グループ通算制度が2022(令和4)年に導入されてから数年が経過し、多くの企業グループで実務運用が定着してきました。
一方で、グループの組織再編(M&Aや子会社の設立・整理など)や業績推移に伴い、あらためて制度適用の可否やシミュレーションを見直す企業が増えています。
今回は、グループ通算制度の基礎知識と合わせて、導入・見直しにおいて押さえておくべき重要なメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
グループ通算制度とはどんなものか
グループ通算制度とは、完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算および申告を行う制度です。
そのうえで、グループ内の個々の法人の所得金額と欠損金額を通算(損益通算)し、グループ全体の所得金額を計算する等の調整を行います。
グループ通算制度のメリット3点
グループ通算制度を導入・適用するおもなメリットとしては、「グループ全体での損益通算」「繰越欠損金の共有」「税額控除のグループ配分」の3点が挙げられます。
自社グループの財務・税務にどのようなインパクトがあるか、それぞれの具体的な内容を確認していきましょう。
①グループ全体の黒字と赤字を相殺して税負担を直接軽減できる
企業グループ内の一方の法人に所得金額が発生し、もう一方の法人に欠損金額が発生している場合、損益を相殺して企業グループ全体の税負担を軽減することができます。
図1では、それぞれの法人で税額を計算すると、グループ全体で120の税額が発生しています。
図2では、通算グループ内のS2社及びS3社の欠損金額の合計額(300)が、所得法人の所得の金額の合計額(600)を限度として、その所得法人の所得の金額の比で各所得法人に配分され、その配分された通算対象欠損金額が所得法人の損金の額に算入されます。
したがって、P社の所得金額は500から250に、また、S1社の所得金額は100から50に減少します。それぞれの法人で税額を計算すると、グループ全体で60の税額が発生します。
損益通算をすることによって、グループ全体の税負担が軽減されています。
| P社(親法人) | S1社(子法人) | S2社(子法人) | S3社(子法人) | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 所得金額 | 500 | 100 | ▲50 | ▲250 | 300 |
| 法人税額 (20%) |
100 | 20 | 0 | 0 | 120 |
※20%は仮定の税率です。
| P社(親法人) | S1社(子法人) | S2社(子法人) | S3社(子法人) | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 通算前所得 (欠損) |
500 | 100 | ▲50 | ▲250 | 300 |
| 損益通算 | P社500+S1社100=600 | S2社▲50+S3社▲250=▲300 | 0 | ||
| 通算前所得金額の合計額 | 通算前欠損金額の合計額 | ||||
| ▲300×500/600 =▲250 |
▲300×100/600 =▲50 |
300×50/300 =50 |
300×250/300 =250 |
||
| ⇒損金算入 | ⇒損金算入 | ⇒益金算入 | ⇒益金算入 | ||
| 損益通算後 | 所得金額250 | 所得金額50 | 欠損金額0 | 欠損金額0 | 300 |
| 法人税額 (20%) |
50 | 10 | 0 | 0 | 60 |
②グループ内で繰越欠損金を共有し、将来の所得から控除できる
図3では、それぞれの法人で税額を計算すると、グループ全体で60の税額が発生します。
図4では、通算前欠損金額の合計額(▲600)が通算前所得金額の合計額(300)を超えることから、欠損金の額300を翌事業年度へ持ち越すことができます。
したがって、グループ全体で法人税が発生しなくなります。
グループ通算制度では、加入後に発生した繰越欠損金を共有し、所得金額が発生した場合に控除することができます。
| P社(親法人) | S1社(子法人) | S2社(子法人) | S3社(子法人) | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 所得金額 | 250 | 50 | ▲500 | ▲100 | ▲300 |
| 法人税額 (20%) |
50 | 10 | 0 | 0 | 60 |
| P社(親法人) | S1社(子法人) | S2社(子法人) | S3社(子法人) | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 通算前所得 (欠損) |
250 | 50 | ▲500 | ▲100 | ▲300 |
| 損益通算 | P社250+S1社50=300 | S2社▲500+S3社▲100=▲600 | 0 | ||
| 通算前所得金額の合計額 | 通算前欠損金額の合計額 | ||||
| ▲300×250/300 =▲250 |
▲300×50/300 =▲50 |
300×500/600 =250 |
300×100/600 =50 |
||
| ⇒損金算入 | ⇒損金算入 | ⇒益金算入 | ⇒益金算入 | ||
| 損益通算後 | 所得金額0 | 所得金額0 | 欠損金額 ▲250 |
欠損金額 ▲50 |
▲300 |
| ⇒翌事業年度へ 繰り越す欠損金 |
⇒翌事業年度へ 繰り越す欠損金 |
||||
| 法人税額 (20%) |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
③研究開発を行っていない子法人でも税額控除の恩恵を受けられる
グループ通算制度を適用した場合には、通算グループを一体として税額控除を計算し、所得が発生した各社に控除額を配分することができます。研究開発を行っていない通算グループ内の法人においても税額控除の恩恵が受けられます。
グループ通算制度のデメリット3点

一方で、グループ通算制度の導入にあたっては注意すべきデメリットやリスクも存在します。
おもなデメリットとして「中小企業特例の不適用リスク」「制度加入前の繰越欠損金の利用制限」「決算・申告事務負担の増加」などが挙げられます。導入後のトラブルを防ぐために、それぞれの注意点をあらかじめ確認しておきましょう。
①中小企業者等の税制優遇措置の適用不可
中小企業等の優遇措置(年800万円以下の所得金額の軽減税率、交際費の損金不算入の特例、貸倒引当金の損金算入等)について、通算グループ内に1社でも資本金1億円超の法人がある場合、適用できません。
②グループ通算制度加入前の繰越欠損金の制限
グループ通算制度加入前の繰越欠損金(特定欠損金)を通算グループ全体に使用することはできません。また、特定欠損金を使用できないまま切り捨てになる恐れがあります。
③事務負担の増加
グループ通算制度において親法人と子法人の決算期が異なる場合、制度上は決算期の不一致は認められていますが、グループ全体での所得合算や税額計算などの事務負担が増大します。そのため、グループ通算制度適用前に決算期を親会社と統一することが一般的です。
また、損益通算をするには、すべての法人が通算前所得金額の計算を終えていなければなりません。1社でも遅れてしまうと、申告・納付のスケジュールの遅れが生じてしまいます。
したがって、法人が子法人の進捗状況を管理し、決算・申告業務をサポートする必要があります。親子法人の数が多ければ多いほど、その負担が増えるでしょう。
制度開始から現在(令和8年)までの変化と最新の留意点
グループ通算制度の導入から数年が経過し、実務面や申告ソフト(e-Tax等)の環境整備が進んだことで、導入当初に懸念されていた事務負担の一定部分は効率化されてきました。
一方で、近年の税制改正ではグループ再編(M&Aや子会社の離脱等)に伴う株式の帳簿価額修正(投資修正)の計算ルールや、各種税制優遇措置(税額控除や交際費等の特例など)の適用判断について、より明確な実務指針が示されています。
単に「損益通算ができる」というメリットだけでなく、自社の将来のM&A計画や地方税への影響、申告体制のデジタル化までを含めた最新の税制に基づく総合的なシミュレーションが、現在ますます重要となっています。
おわりに
グループ通算制度のメリット・デメリットについて解説しましたが、最大のメリットは所得金額と欠損金額を相殺し、グループ全体の税負担を最適化できる(節税効果が見込まれる)ことです。
実際にグループ通算制度を適用する場合には、グループ内の法人の所得金額、欠損金額を把握する必要があります。したがって、導入前に通算グループに含める法人の範囲やグループ内の各法人の所得金額と欠損金額の発生見込等をシミュレーションし、検討する必要が出てきます。
辻・本郷 税理士法人では、グループ通算制度の導入と申告のサポートをしておりますので、グループ通算制度の適用を検討している方は、ぜひお気軽にお問合せください。
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