仮想通貨の税金が20%に!分離課税の開始時期と適用要件を解説します

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仮想通貨の税金が20%に!分離課税の開始時期と適用要件を解説します

近年、投資対象として広く認知されているビットコインなどの仮想通貨(以下「暗号資産」といいます)ですが、利益に対する税金が最大で約55%(総合課税)に達することが、投資家の皆様にとって大きなハードルとなっていました。

しかし、令和8年度の税制改正により、一定の暗号資産取引について「申告分離課税(税率約20%)」への移行と、「譲渡損失の3年間繰越控除」が認められることになりました。

先日、令和8年7月23日付の官報にて前提となる改正法(「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」、以下「金商法等改正法」と略します)が公布され、いよいよ新税制のスタートが現実のものとなります。

本記事では、金商法への移行に伴う分離課税の適用時期や、対象となる「特定暗号資産」の要件、そして損失の繰越控除の仕組みなど、投資家の皆様が今のうちに見直しておくべきポイントを総合的に解説します。

暗号資産取引に係る令和8年度税制改正のポイント

「資金決済法」から「金融商品取引法」への規制法令変更

暗号資産はこれまで「決済手段」として資金決済法の下で規制がなされてきました。しかし、今日では国内外の投資経験者において暗号資産が「金融資産」(投資対象)として位置付けられています。

また、無登録での投資勧誘やハッキングによる暗号資産の流出などが行われている実態に鑑みて、利用者に対する「適切な情報開示」と「不公正取引の防止」のために、更なる環境整備を行う必要性が指摘されていました。その枠組みとして、「金融商品取引法」が最も適していると考えられ、今回の規制法令変更に至りました。

金商法への移管により、暗号資産は有価証券(株式や債券など)とは別に新しい金融商品として分類されます。また、有価証券と同列ではなく、暗号資産の性質に応じた独自の規制体系が金商法の中に組み込まれることになります。

総合課税から申告分離課税(一律20.315%)への移行

これまで、暗号資産の取引による所得は原則として「雑所得(総合課税)」に区分され、給与所得など他の所得と合算して税金が計算されていました。そのため、所得が高い人ほど税率が上がり、住民税を含めると最大55.945%の税率が課されていました。

しかし改正後は、他の所得と区分して税金を計算する「申告分離課税」の対象となり、所得税15%に住民税等を加えた一律20.315%の税率となります。これにより、多額の利益が出た場合の税負担が大幅に軽減されることになります。

本改正の対象となる取引や所得区分は、トレーダーの方(事業所得)に限らず、趣味で投資をされている方(譲渡所得)や、デリバティブ取引(雑所得)なども含まれます

譲渡損失の3年間繰越控除が可能に

暗号資産取引で生じた損失は、これまで翌年以降に繰り越すことができませんでした。

今回の改正により、確定申告書を継続して提出するなどの一定の要件を満たせば、その年に控除しきれなかった譲渡損失を、翌年以後3年間にわたって暗号資産に係る譲渡所得等の金額から控除できるようになります。

暗号資産取引に係る令和8年度税制改正のポイント
項目名 改正[前] 改正[後]
規制法令 資金決済法 金融商品取引法
所得税課税方式 総合課税 申告分離課税
所得税・復興特別所得税率(住民税含む) 55.945% 20.315%
譲渡損失の繰越控除 繰越不可 その年の翌年以後3年間の繰越可能
適用対象取引 現物取引、デリバティブ取引 現物取引、デリバティブ取引、ETF(上場証券投資信託)

※出典:辻・本郷 税理士法人「令和8年度税制改正のポイント」p.41より

すべての暗号資産が対象になるわけではないことに注意!

すべての暗号資産が対象になるわけではないことに注意!
3Pac / PIXTA

この有利な特例を受けるためには、取引する暗号資産が「特定暗号資産」に該当する必要があります。特定暗号資産とは、一般的には「国民の資産形成に資する金融商品」とされ、おもに金融商品取引業者登録簿に名称が登録されている暗号資産などを指します

ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)など、国内の登録取引所で扱う主要な銘柄が対象となる見込みです。

海外取引所銘柄・DEX直接取引は適用対象外

マイナーな海外取引所でのみ扱われているような暗号資産など、特定暗号資産以外の譲渡については、引き続き総合課税の対象となり、申告分離課税や損失の繰越控除、損益通算は適用されません。

加えて、DEXで直接売却・交換した場合は分離課税の対象外となり、国内登録業者に移送して売却する等の経路要件を満たす必要があります。

国外転出時課税の対象となる可能性もある?

なお、税制改正大綱に記載はありませんが、改正法の施行により、「国外転出時課税制度」の対象へ追加される可能性についても注視が必要です

国外転出時課税制度とは、1億円以上の有価証券や未決済デリバティブ取引等を所有する一定の居住者が国外転出(出国)する際、その対象資産の含み益に対して時価で所得税が課税される仕組みです。

現行の税法上、暗号資産は同制度の対象資産に含まれていませんが、申告分離課税化に伴い対象資産の範囲(所得税法第60条の2)が見直される可能性があります。今後の法案や関連省令の動きについて、引き続き情報を確認していく必要があります。

改正でどのくらい負担減になる? 事例で見る税負担シミュレーション

この改正によって、どのくらい負担減につながるかをシミュレーションしてみましょう。
年齢や家族構成等は架空の設定であり、シミュレーション上、復興特別所得税および住民税は考慮しておりませんのでご了承ください。

東京都内のIT企業に勤めるAさん(42歳・給与所得800万円)の事例で考えてみましょう。Aさんが特定暗号資産の取引で500万円の利益(譲渡所得)を出した場合の税金はどうなるでしょうか。

旧税制(総合課税)では給与所得と合算されるため、暗号資産の利益に対する税率は非常に高くなっていました。

しかし、新税制(申告分離課税)では500万円に対して一律15%の所得税が課されるため、75万円の税負担で済み、投資計画が立てやすくなります。

事例:給与所得800万円・暗号資産利益500万円の比較
項目 旧税制[総合課税] 新税制[申告分離課税]
給与所得 8,000,000円 8,000,000円
暗号資産による利益 5,000,000円 5,000,000円(※要件を満たす特定暗号資産)
課税方式 総合課税(他の所得と合算) 申告分離課税(区分して計算)
適用税率(暗号資産部分) 33%(※超過累進税率により変動) 一律 15%
所得税負担(暗号資産部分) 1,550,000円 750,000円
税負担の差額(目安) 約▲800,000円(負担軽減)

※辻・本郷 税理士法人が独自に作成

おわりに

今回の税制改正は、暗号資産を投資対象としている方にとって非常に有利な内容となっています。

適用時期は「金商法等改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日」以後に行う取引とされており、前提となる金商法等改正法は「公布の日(令和8年7月23日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」から施行されます。

現時点では、令和9年中の施行および令和10(2028)年1月1日からの適用開始が見込まれていますが、仮に、施行日が令和8年中となれば令和9(2027)年1月1日から適用されます

ご自身が保有している暗号資産が「特定暗号資産」に該当するかどうか、また、新税制に向けた投資計画の見直しなど、事前の準備が重要です。

辻・本郷 税理士法人では、暗号資産にかかる税務申告や、改正を踏まえた事前のタックスプランニングについて専門スタッフがサポートいたします。ご不安な点がありましたら、ぜひお問い合わせください。

執筆担当: 東京ミッドタウン八重洲事務所 プライベートウェルスマネジメント部 道見 舞美

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