国税庁の新システム「KSK2」導入で財産が丸見えに? 富裕層が気を付けたいポイント

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国税庁の新システム「KSK2」導入で財産が丸見えに? 富裕層が気を付けたいポイント

国税庁の情報管理システム「KSKシステム」が、2026年9月の連休明けに次世代の「KSK2」へと刷新されます。

これにより富裕層の方が最も気をつけるべきポイントは、申告漏れの可能性が高い、と調査のターゲットにされないようにすることです。
今回のシステムリニューアルによって、個人情報がインターネットを通じて税務署に把握されやすくなり、複数税目(所得税・相続税・贈与税・法人税)にわたる過去の申告データが横断的に分析され、申告漏れが速やかに検知されるようになるためです。

その具体的な仕組みについて、確認していきましょう。

オンライン照会とAI分析の強化で、何がどう可視化される?

従来のKSKは完全に外部から遮断されていましたが、KSK2は直接インターネットに繋がります。

KSK2導入以降、税務署から「申告漏れの可能性が高い」と調査のターゲットにされたなら、システムを通じて各種WebサイトやSNS等の閲覧履歴、購買履歴、位置情報など、あらゆる個人情報が税務署に取得され、利用したサービス、関心のある製品などから暗号資産やネットによる収入などを把握されたり、家族の購買履歴や銀行の入金履歴、メールのやり取りから生前贈与などを把握される可能性もあります

また、従来は税目ごとの「縦割り」でしたが、KSK2ではすべてのデータが納税者単位で一元管理されます。法人の売上・個人の所得・相続財産・海外資産などのデータがAIとKSK2のビッグデータで照合され、「法人の売上は低いのに、個人資産が急増している」といった不自然なキャッシュフローが瞬時に検知されるようになるためです

参考:【国税庁】国税庁70年史【e-GOV】国税通則法 第七十四条の七の二

従来の国税庁のKSK(国税総合管理)システム

現行のKSKは、平成13年に全国の国税局・税務署のパソコン端末に繋がり、申告事務、調査や滞納処分に重要な役割を担ってきたネットワークシステムです。

KSKに保有されている情報は、法人・個人から提出された申告書・届出書のみならず、法律で提出が義務付けられている「法定資料」と課税庁が独自に収集している「法定外資料」、令和6事務年度では10億枚もの膨大な資料情報を収集しており、それらを数十年にわたって蓄積している巨大なデータバンクでもあります。

これまでのKSKシステムはどんなデータが蓄積されてきたか

例えば、「法定資料」として提出されている給与、報酬、不動産の譲受、株式、金などの取引資料からは、自分だけでなく、家族の収入についてのデータも蓄積されています。

死亡保険金などの調書により、自分が保険料を負担し、家族が契約者となっている資料も提出されています。

さらに株取引や国外送金、国外財産調書など、申告漏れが多い取引も法定調書として提出義務が課されるようになっています。

また、「法定外資料」として税務署が独自に収集している情報や、内部情報のタレコミ、実地調査時の調査先での資料収集、外国税務当局との情報交換(CTS)、共通報告基準(CRS)に基づく非居住者の金融機関口座情報や多国籍企業グループの国ごとの活動状況に関する報告書等の交換資料などもKSKに蓄積されています。

これら旧KSKのデータはすべて、新しいKSK2にも引き継がれます。そのうえで9月連休明けからの新KSK2は外部のネットワークに直結することで、最新データを即時に取り込めるようになります。

税務署のPCが直接ネットに繋がることで何が起きるか

これまでは税務署のPCは外部から切り離されていたため、メールすら送ることができませんでした。当然、データのやり取りもメールやクラウド経由ではなく、紙や記録媒体を通じてのみ。データバンクへも人が抽出した情報を「入力」する形式か、記録媒体の情報を「読み込む」形式に限られていました。

そのため、手作業で抽出されない情報はデータ化されず、すべての情報が一元化されていたわけではありませんでした。

しかし、KSK2ではAI-OCRの導入や外部機関(金融機関や官公庁等)とのオンライン照会が進み、紙の書類も含めた膨大なデータが網羅的かつ迅速に蓄積・参照される環境が整います

図1:旧KSKのオンライン照会の図。これが新KSK2でさらに進化すると見込まれます。

図1:旧KSKのオンライン照会の図

出典:【国税庁】「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション 説明資料」令和5年6月23日

税務職員の質問検査権には個人情報保護法が適用されない

一定の社会公共の利益や、他の権利利益を保護する必要性が上回る場合には、個人情報保護法の適用はなく、質問検査権もこれに該当するとされています

つまり税務調査に必要な場合には税務職員は調査対象者に関係する者なら誰にでも質問し、関係書類データその他の物件すべてを検査することができます。検査拒否や質問不答弁には罰則規定が設けられているため、調査対象者に関係する経済取引や個人情報のデータ提供を拒否することは、事実上できません。

したがって、税務調査となれば、取引したことのあるすべての企業や事業者から、国税庁はデータ提供を受けることが可能です。KSK2になり、ネットを通じて関係各所から迅速かつ網羅的にあらゆるデータを把握される時代が来たのです。

個人情報保護法 第69条第2項第1号による

縦割り型の旧システムでは見えにくかった点と線が、新システムでは可視化される

図1:旧KSKのオンライン照会の図
kohanova / PIXTA

また、従来のKSKでは、税目別に所得税、消費税、相続税、法人税といった各税目に係る情報が、税務署内の個人の所得税申告を担当する個人課税部門、相続、贈与、資産の譲渡を担当する資産課税部門、企業を担当する法人課税部門などの税目ごと部門ごとの縦割りで分断されていました。

担当している税目以外のデータを、簡単には閲覧することができない仕様になっていたのです。
しかしKSK2ではこれらが統合され、税目データが横断的に一元管理されます。

今後は、各税目の情報を横断的にすぐ確認できるようになることで、これまで見えにくかった個人の情報と相続・贈与や資産の売り買い、関連法人の情報は統合され即座に総合的な分析が可能になります

富裕層が注意すべき3つのポイント

1.「名義預金」や家族の資金移動の監視

相続や贈与の際、配偶者や子供、孫名義の口座であっても、実質的に被相続人が管理・資金提供していた場合は「名義預金」とみなされ、すべて相続財産として課税対象になります

2. 海外資産・国外送金の網羅的な把握

昨今の税務行政では、CRS(共通報告基準)により海外の金融口座情報が日本の税務署に自動で共有されます。海外に保有する不動産や有価証券の所得も徹底的に追跡されます。

3. 過去データ(所得・不動産等)と相続財産の不一致

KSKは過去の所得税や固定資産税のデータを長期間にわたって保持・照合しています。過去の個人の所得税、資産管理会社の法人税、消費税などの申告にズレや不整合がないかも分析されます。

「生前の収入や保有不動産の規模に対して、申告された相続財産が少なすぎる」といった矛盾はシステムに自動検知され、調査のターゲットになります

どのような対策をすればよい?

システムに疑念を抱かせないために、以下のデジタル対応と備えが必要です。
税理士と相談しながら、できることから進めると良いでしょう。

証拠書類の完全整備 電子取引データや領収書などの根拠をいつでも提示できるようにします。
税目を横断したセルフチェック 法人と個人、相続と贈与などの申告内容に「矛盾」がないか、事前に税理士と確認します。
適法な資産管理の徹底 家族名義の口座であっても通帳・印鑑を誰が管理していたかが重要です。名義預金などの曖昧な資産管理をやめ、贈与の事実や資金移動の経緯を明確な書面(贈与契約書など)に残します。
直近の資産状況を定期的にリストアップし、不透明な資金移動がないか整理しておくことが有効です。

おわりに

昭和24年の国税庁開庁時、発足に重要な役割を果たしたGHQのハロルド・モス氏は、開庁式で「正直者には尊敬の的、悪徳者には畏怖の的」というスローガンを贈りました。

適正に申告を行っている納税者にとって、国税庁は「不公平な不正を暴く信頼できる存在」であり、一方で悪質・不適正な申告を行う者にとっては「的確な調査によって正される恐れるべき存在」であるという意味です。
新KSK2の導入でさらにこの傾向は強まるといえるでしょう。

つねに重点調査対象に掲げられている富裕層の方は、とくにこうした国税庁の動きをよく知っているプロとの連携が必須であると思われます。

辻・本郷 税理士法人では、法人・個人の税目を横断した事前リスクの点検をはじめ、名義預金や贈与の適正化など包括的なサポートをご提供しております。
国税庁出身の税理士も多数在籍しておりますので、ぜひご相談ください。

執筆担当: 新宿ミライナタワー事務所 審理室 片 ユカ

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