令和9年の改正に要注意! 相続直前の不動産評価引き下げスキームにメス

  • 相続・贈与
  • 個人
令和9年の改正に要注意! 相続直前の不動産評価引き下げスキームにメス

令和8年度税制改正において、相続対策として広く活用されてきた不動産スキームに対し、重要な見直しが行われました。
相続直前の不動産取得や小口化不動産を利用した評価引下げスキームについて、従来のような節税効果が得られにくくなる可能性があります。

今回は、不動産評価における改正の概要と実務上の留意点についてまとめてみました。

相続等の直前に取得した貸付用不動産の評価方法が変わります
[令和9年1月1日~]

従来、現金を保有したまま相続を迎えるよりも、不動産に組み替えることで相続税評価額を引き下げることが可能とされてきました。

とくに貸付用不動産については、借家権割合や賃貸割合の影響により、時価に比べて大きく評価が下がるケースも少なくありません。この差を利用し、相続税対策として賃貸マンションを取得して税負担を抑える手法が広がりました。

相続開始前5年以内の取得は「取引価額」評価へ

今回の改正では、こうした短期的な評価引下げを目的とする不動産取得について評価上の制限が設けられ、相続開始前5年以内に取得するか、または新築した一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額(実勢価格に近い金額)によって評価されることとなりました。

小口化された貸付用不動産についても評価方法が変わります
[令和9年1月1日~]

小口化された貸付用不動産についても評価方法が変わります

近年、富裕層を中心に活用が広がっていたのが、不動産を小口化した投資商品(小口化不動産)です。

小口化不動産は一棟の不動産を複数の投資家で共有し、保有口数に応じた賃料収入や売却益などを分配金として受け取ることができる商品で、少額から不動産投資が可能となる点が特徴です。

これは金融商品に近い性質を持つ一方、相続税評価上は不動産として評価されます。
そのため、市場価格との差を利用した相続・贈与対策として活用されるケースが広がっていました。

相続税対策への影響と新たな評価基準

今回の改正では、こうした「商品として小口化された貸付用不動産」についても見直しが行われることとなり、路線価による評価から通常の取引価額に相当する金額によって評価され、取得時期にかかわらず、通常の取引価額を基準として算定されます。

それぞれの評価方法の変更点と適用時期について、一覧にまとめました。

相続等の直前に取得した貸付用不動産の評価 商品として小口化された貸付用不動産の評価
改正前 〈評価方法〉
・路線価等による評価:借家権等に相当する金額の控除などにより、市場価格よりも通達評価額が低くなる傾向にある
〈評価方法〉
・路線価等による評価:市場価格と相続税評価額との乖離を利用して、低い税負担で生前贈与するケースが多く見受けられる
改正後 〈評価方法〉
・課税時期前5年以内に、購入や新築をした貸付用不動産(マンションやアパート等)は原則として通常の取引価額に相当する金額によって評価

※課税上の弊害がない限り、取引価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の80%で評価することも可

〈評価方法〉
・通常の取引価額に相当する金額(売買実例価額等を基に算定)によって評価

  1. 出資者等の求めに応じて、事業者(販売会社)等が示した適正な処分価格・買取価格等
  2. 事業者等が把握している適正な売買実例額等
  3. 定期報告書等に記載された不動産の価格等を参酌して求めた金額
  4. 買取価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の80%に相当する金額

1~3に該当するものがないと認められる場合は貸付用不動産に準じて評価

適用時期 令和9年1月1日以降に相続、遺贈または贈与により取得をする財産の評価に適用

※通達の改正日によって適用の有無が変わる貸付用不動産もある

令和9年1月1日以降に相続または贈与により取得をする財産の評価に適用

※令和9年1月1日以降に取得した場合は、取得時期にかかわらず今回の見直し対象となる

実務においては、不動産の取得時期に留意し、相続・贈与税申告の際に従来の評価方法が適用となるか、改正後の評価方法が適用となるかを適切に判断する必要があります。

令和8年中の駆け込み贈与は不利になることも?

これらの改正に備えて、令和8年中に駆け込み的な贈与を行ったとしても、他の財産状況や将来の相続税負担によっては必ずしも有利になるとは限りません。ご自身や受贈者の財産、生活環境、家族関係等を踏まえて慎重に検討した方がよいでしょう。

おわりに

令和8年度税制改正は、不動産を活用した相続・贈与税対策に対し、大きな転換期となる可能性があります。
従来有効とされてきた手法であっても、今後はそのまま通用するとは限りません。

また、これからは従来以上に不動産の「時価」の把握や不動産評価の妥当性が重要になると考えられます。

辻・本郷 税理士法人では、豊富な税務知識を備えたスタッフが多数在籍しております。相続・贈与税額のシミュレーション等も可能ですので、ぜひご自身や家族の将来について一緒に考えてみませんか?

執筆担当: 秋田事務所 今野 真理子

参考サイト・参考文献

サービスに関するお問い合わせ

サービスに関するお問い合わせ、税務業務のご依頼などをお受けしております。

※内容によってはお返事にお時間をいただく場合がございます。あらかじめご了承ください。

お電話でのお問い合わせ

0120-730-706

受付時間:9:00~17:30(土日祝・年末年始除く)

原則折り返し対応となります。
自動音声ガイダンスにしたがって、
お問い合わせ内容に沿った番号を選択してください。