インボイス制度が再改正! 令和8年税制改正の内容と今すぐ始めたい準備
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2023年(令和5年)10月にインボイス制度が導入されてから、3年ほどが経過しようとしています。制度導入にあたっては、スムーズな制度移行と税負担の急激な増加への対応が課題とされていました。
その課題を解決するために、制度開始から数年間を限定として納税者の負担を緩和する特例がいくつか設けられました。この特例を「経過措置」といいます。
当初は令和8年9月30日を境に経過措置の縮小や廃止が予定されていましたが、令和8年度税制改正によって内容を見直したうえで延長されることが決定しています。
そこで今回は、改正の内容とこれから行うべき対応を解説していきます。
免税事業者等からの仕入れに係る経過措置(8割控除)の改正
経過措置が設けられた背景
消費税は、事業者が売上時に受け取った消費税額から、仕入時に支払った消費税額を控除した残額を国に納付する仕組みです。この「仕入時に支払った消費税額を控除」することを「仕入税額控除」といいます。
インボイス制度開始前は免税事業者※1からの仕入れであっても全額を「仕入税額控除」の対象にすることができました。
しかし制度導入後は、免税事業者からの仕入れについては原則として仕入税額控除ができなくなっています。
そのため、インボイス制度の導入に伴い免税事業者を取引先から排除する動きが懸念されていました。
これに対応するため、インボイス制度開始後3年間は、免税事業者からの仕入であっても消費税に相当する額の80%の仕入税額控除を認める経過措置が設けられました※2。
※1 免税事業者の典型としては、前々期の課税売上高が1,000万円以下の小規模な法人や個人事業主などが該当します。
※2 これは、インボイス制度開始後の期間を使った価格交渉やインボイス発行事業者(≒課税事業者)としての登録検討ができるようにすることが目的とされています。
改正の概要
仕入税額控除が認められる80%という割合は、2026年10月1日以降は50%に引き下げ、2029年10月1日以降は仕入税額控除ができなくなる予定でした。
しかし、令和8年度税制改正では、小規模な事業者への配慮として更なる激変緩和を図る観点から、この控除割合の縮小をなだらかにしつつ、2031年9月30日まで延長されることとなりました。
| 期間 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 2023.10.1~2026.9.30 | 80%控除 | 80%控除 |
| 2026.10.1~2027.9.30 | 50%控除 | 70%控除 |
| 2027.10.1~2028.9.30 | ||
| 2028.10.1~2029.9.30 | 50%控除 | |
| 2029.10.1~2030.9.30 | 控除不可 | |
| 2030.10.1~2031.9.30 | 30%控除 | |
| 2031.10.1~ | 控除不可 |
なお、この経過措置の適用を受けるには帳簿への記載と一定の書類の保存が要件とされています。
2026年10月までにするべきこと2点
経過措置の改正に対応するため、2026年10月1日までに次の対応をしましょう。
会計システム等の更新
多くの会計システムでは取引ごとに「100%控除」・「80%控除」・「50%控除」を選択できるようになっていますが、会計システムを更新して「70%控除」・「30%控除」も選択できるようにする必要があります。
また、会計システムと連携している経費精算システムなども忘れずに更新するようにしましょう。
控除割合変更の社内周知
2026年10月1日以降の取引からは、今まで「80%控除」として計上していたものを「70%控除」として計上することになります。あらかじめ社内の関係部署に注意喚起をしましょう。
とくに、過去の仕訳をコピーして新規の仕訳を作成する場合に「80%控除」としたまま更新を忘れてしまう誤りが想定されますので、十分に注意しましょう。
小規模事業者の2割特例の改正

imtmphoto / PIXTA
経過措置が設けられた背景
インボイス制度の導入にあたっては、これまで免税事業者であった者が課税事業者になる事によって急激に税負担が増加することが見込まれていました。
また、税負担の増加が障壁となってインボイス制度の定着が妨げられることが懸念されていました。
これに対応するため、インボイス制度の開始に伴い課税事業者になる選択をした者※については、納付すべき消費税額を売上げに係る税額の2割とすることができる特例が設けられました。
この特例は一般的に「2割特例」と呼ばれています。
※インボイス制度に関係なく課税事業者となる者は除かれます。
改正の概要 ~個人事業者は3割特例へ変更のうえ令和10年まで延長、法人は延長なし~
2割特例は令和8年に終了する予定でしたが、令和8年度税制改正により、個人事業者に限っては割合を3割に変更したうえで、令和10年までの2年間延長されることになりました。
この改正は、事務負担への配慮がより必要と考えられる個人事業者を対象に、インボイス制度の定着をより確実なものとする趣旨で行われます。
まとめると、個人事業者については、一定の条件の下で次のように特例の適用を受けることができます。
- 令和8年(2026年)まで:納付税額を売上税額の2割とする特例(2割特例)
- 令和9年(2027年)・令和10年(2028年):納付税額を売上税額の3割とする特例(3割特例)
なお、法人は当初の予定通り令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間が2割特例の対象期間であり、その後の延長はされません。
個人事業者がこれからするべきことは?
3割特例を受けようとする場合
3割特例の適用には税務署への届出などの事前手続きは必要ありません。
しかしながら、自社が3割特例の適用を受けられるかどうかを確認する必要があります。
おもに以下のチェックポイントがありますので、税理士に相談することを推奨します。
- 前々年の課税売上高が1,000万円以下であるか
- 前年の1月から6月の課税売上高または給与等支払額が1,000万円以下であるか
- 前々年の課税売上高が1,000万円を超える被相続人の事業を承継していないか
- 高額な資産の取得により免税事業者になることが制限されていないか
簡易課税制度との比較
中小事業者向けの制度に「簡易課税制度」というものがあります。
これは、仕入税額を考慮せずに、売上げに係る税額に一定の割合を乗じて消費税額を計算する恒久的な制度です。
「簡易課税制度」で使用する割合は業種ごとに異なりますが、卸売業では1割、小売業・農業・林業・漁業では2割を使用するため、これらの業種では3割特例を利用するよりも税金が安くなります。
なお、簡易課税の適用を受けようとする場合には税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
「消費税簡易課税制度選択届出書」は、通常はその適用を受けようとする課税期間が始まる前に提出する必要があります。なお、2割特例または3割特例を受けた事業者に限っては、簡易課税の適用を受けようとする年の確定申告期限まで※に提出すればよいこととなっています。
これからどの方法で計算するのが良いのかを検討し、必要に応じて期限までに届出書を提出しましょう。
※令和8年9月30日以前に終了する課税期間の場合は、その課税期間中まで
おわりに
今回取り上げたインボイス制度の令和8年度税制改正により、経理実務や申告実務が大きく変わります。正しく申告・納税するためにも、いま一度自社の状況を見直し、改正に備えていくようにしましょう。
辻・本郷税理士法人では、経理実務のアドバイスや各種特例の選択に関するコンサルティングを承っています。ぜひ一度ご相談ください。
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